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第六章

僕の好きな生き方

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『今から七十年前、帝国人の祖先たちは、この惑星に降りた。最初は俺たちと同じくプリンターで出力されたコピー人間だけ。地表に降りてみると、手付かずの自然ばかり。これなら植民地にしても大丈夫と判断した彼らは、地球から持ち込んだ凍結受精卵から子供を作り人口を増やしていった。ところが、人口が万単位にまで増えたとき、この惑星上には、すでに先住民がいた事に気がついたのだ。だからと言って、今さら住民を地球に送り返すことはできない。ここで生きていくしかなかったんだ』
「それで?」
『それでってな……気の毒だと思わないか? 帝国人が』
「今の話のどこに、同情の余地がある?」
『何?』
「まるで先住民がいることを知らないで、移民を送り込んでしまったかのように聞こえたけど」
『だから、そう言っているのだ』
「そんな馬鹿がどこいる? 先住民がいる事は、きちんと調査していれば分かったはずだ。移民を送り込む前に、現地調査をしない馬鹿がどこにいる?」
『いや……それは……』
「先住民がいる事は、本当は知っていたのじゃないのか? だけど、文明程度は低そう。これなら簡単に征服できる。侵略しよう。そうしよう。とか考えて、移民を送り込んだのじゃないのか?」

 なんて事を言いながら、実は僕は知っていたのだけどね。
 ここに来るまでの間に、この惑星の歴史をミールからかなり聞いていた。
 帝国人のシャトルが降りてきた時の事は、ナーモ族の歴史書にも記載されている。
 そのシャトルから降りてきた人間と、ナーモ族が接触している事も……
 つまり、先住民がいるなんて知らなかった、などという事はありえないわけだ……

『う……俺が言ったのではなく、帝国の学者から聞いた話なんだが……』
「お前が、そんな話を信じるような馬鹿には見えないな。信じたふりをしたのだろう」
『それの何が悪い! 侵略なんてな、される奴が悪いんだよ!』

 開き直りやがった。

『それに、ここは地球じゃない。地球の法律や常識に捕らわれる必要なんかない。そうは思わないか?』
「まあ、ちょっとは思うけど」
『だったら、無理をしないで、自分の好きなように生きようじゃないか』
「自分の好きなように……だと?」
『そうさ。ナーモ族なんて所詮は異種族。遠慮する必要がどこにある? 奴らを蹂躙し、土地を奪い、俺たちの国を作ろうじゃないか』

 こいつ……クズだ!

「やっているさ」
『は?』
「僕は、この惑星に来てからは、誰にも命令される事もなく、自分の好きなように生きてるさ」
『そうなのか?』
「だが、僕の好きな生き方は、お前とは違う。お前の生き方を、押し付けるな!」
『そうかい。では何かい? おまえは、誰も傷つけることなく生きていきたいとか言うのかい? そういうのを、脳内お花畑って言うのだぜ』
「少し違うな」
『どう違う?』
「確かに、僕は人を傷つける事無く生きていきたいと思っているし、人を傷つけても楽しいなんて思わない。でも、僕に敵意を向けてくる奴に無抵抗でいるほど、おめでたくはないぞ。それに、世の中には人を傷つける事が楽しく楽しくて仕方がないという変態野郎が存在する事は知っている」
『ほう。お前から見たら俺は、その変態野郎なわけだが、それでお前はその変態野郎をどうする? 人を傷つけたくはないのだろう』
「そんな変態野郎は、人とは思わない事にした。害虫だと思うことにした。害虫は駆除するしかない」
『ならば、俺を駆除してみろ』
「言われずともやってやる!」
 奴のドローンに狙いを定め、僕はミサイルを発射した。
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