714 / 848
第十六章
エレベーター
しおりを挟む
芽依ちゃんは、さらに話を続けた。
「ルスラン・クラスノフ博士の言う中継機ですが、そのほとんどは第六層にあると思うのです」
「芽依ちゃん。そう思う根拠は?」
「簡単です。中継機とは、外部にいるクローン人間がプシトロンパルスを受け取った後、それをBMIで電気信号に変換してから、地下施設内にいるクローン人間にケーブルを通して送っている装置だと思われます。そうなると、ケーブルを通す穴が必要になります」
なるほど。第六層には、外部へ通じている地下通路がある。あれを通すのが一番楽だな。
「地下通路出入り口に、第三層から逃げてきた帝国軍が布陣しているのは、中継機を守るためではないかと思います。そうなると、中継機はその辺りにあるものと……」
それを聞いて、橋本晶が日本刀を抜いて掲げた。
アブねえなあ……
「なるほど。では、今から帝国軍を強襲して、中継機を破壊するというのですね。では、さっそく……」
君はどうして、そうせっかちなんだ……
「橋本さん。中継機は確かにそこにあると思われますが、今から私たちが攻撃すべきなのは、そこではありません」
「え? では、どこを攻撃するのです?」
「ここにいる帝国軍の武器は、フリントロック銃とか刀剣ではありません。自動小銃の他に、九九式の装甲をも貫く対物ライフルやロケット砲も持っています。第二層では催涙剤を使った奇襲で勝利しましたが、先ほどの偵察で帝国兵がガスマスクを用意しているのが分かりました。同じ手は通用しません」
「しかし……」
「加えて私たちは今、補給を断たれています。中継機を守っている帝国軍を攻撃に行っても、すぐに弾薬が足りなくなります。そんなところへ、背後からカルル・エステス隊の攻撃を受けたら、ひとたまりもありません」
「では……どうするというのです?」
「第五層へ攻撃をかけるのです」
「え? 第五層への攻撃はやめるのでは?」
「私は、動物を殺す必要はないというつもりで言ったのです。いいですか。第五層と第六層の間でも、プシトロンパルスが遮断されます。だから、第五層と第六層の間にも中継機があると思われます。攻撃するなら、守りの手薄な第五層の中継機です。それさえ切断すれば、もうレム神は第五層の動物たちを操れなくなります」
「なるほど。しかし、それには第五層と第六層の間にケーブルを通す必要があるのでしょう。それはどこに……は! まさか、この傾斜路内に……」
橋本晶は周囲をキョロキョロと見回したが、それらしき物は見つからない。
まあ、こんな分かりやすいところには無いだろう。
となると……
「点検用トンネルか?」
だが、芽依ちゃんは首を横に振った。
「中継機を運用するには、四時間おきにクローン人間を交代する必要があるのですよね?」
ジジイは無言で頷いた。
「それなら、中継機の近くに交代要員がいるはずです。しかし、ドローンでくまなく探しましたが、人間の姿はありませんでした」
ヒツジとヤギしかいなかったからな……まさか!?
「おい、ジジイ。ヒツジとかヤギを中継機に使う事はできるのか?」
ジジイは首を横にふった。
「そんな事できたら、とっくにやっとるわい。レム神が生きている人間を使うと言い出したとき、わしは動物を使ってみてはどうじゃと助言した。しかし、動物実験はことごとく失敗。結局レム君のクローンが、一番相性がいいという事になったのじゃ」
「だとすると第五層には、やはり交代要員がいるのか? しかし、人間はどこにもいなかったぞ」
「北村さん。一カ所だけ私たちから隠れる事ができて、しかも第六層へケーブルを通せる場所があります」
「どこに?」
「エレベーターシャフトです」
あ! 機能を停止していると聞いていたから、確かにノーマークだったが……
「ジジイ。この施設のエレベーターは、どういう仕組みの物だ?」
「重力制御で、ゴンドラが上下する仕組みだと聞いていたが」
「そのゴンドラは、今どうなっている?」
「わしが三十年前に調べた時から、第五層と第六層の間で止まっているぞ。そこから全く動いていな……あ!」
そこだ!
ドローンをエレベーターシャフトへ行かせると、中継機はあっさりと見つかった。
長い間停止しているゴンドラの屋根の上に置かれたベッドの上に、BMIに接続されたクローン人間が三人寝ていたのだ。
「ルスラン・クラスノフ博士の言う中継機ですが、そのほとんどは第六層にあると思うのです」
「芽依ちゃん。そう思う根拠は?」
「簡単です。中継機とは、外部にいるクローン人間がプシトロンパルスを受け取った後、それをBMIで電気信号に変換してから、地下施設内にいるクローン人間にケーブルを通して送っている装置だと思われます。そうなると、ケーブルを通す穴が必要になります」
なるほど。第六層には、外部へ通じている地下通路がある。あれを通すのが一番楽だな。
「地下通路出入り口に、第三層から逃げてきた帝国軍が布陣しているのは、中継機を守るためではないかと思います。そうなると、中継機はその辺りにあるものと……」
それを聞いて、橋本晶が日本刀を抜いて掲げた。
アブねえなあ……
「なるほど。では、今から帝国軍を強襲して、中継機を破壊するというのですね。では、さっそく……」
君はどうして、そうせっかちなんだ……
「橋本さん。中継機は確かにそこにあると思われますが、今から私たちが攻撃すべきなのは、そこではありません」
「え? では、どこを攻撃するのです?」
「ここにいる帝国軍の武器は、フリントロック銃とか刀剣ではありません。自動小銃の他に、九九式の装甲をも貫く対物ライフルやロケット砲も持っています。第二層では催涙剤を使った奇襲で勝利しましたが、先ほどの偵察で帝国兵がガスマスクを用意しているのが分かりました。同じ手は通用しません」
「しかし……」
「加えて私たちは今、補給を断たれています。中継機を守っている帝国軍を攻撃に行っても、すぐに弾薬が足りなくなります。そんなところへ、背後からカルル・エステス隊の攻撃を受けたら、ひとたまりもありません」
「では……どうするというのです?」
「第五層へ攻撃をかけるのです」
「え? 第五層への攻撃はやめるのでは?」
「私は、動物を殺す必要はないというつもりで言ったのです。いいですか。第五層と第六層の間でも、プシトロンパルスが遮断されます。だから、第五層と第六層の間にも中継機があると思われます。攻撃するなら、守りの手薄な第五層の中継機です。それさえ切断すれば、もうレム神は第五層の動物たちを操れなくなります」
「なるほど。しかし、それには第五層と第六層の間にケーブルを通す必要があるのでしょう。それはどこに……は! まさか、この傾斜路内に……」
橋本晶は周囲をキョロキョロと見回したが、それらしき物は見つからない。
まあ、こんな分かりやすいところには無いだろう。
となると……
「点検用トンネルか?」
だが、芽依ちゃんは首を横に振った。
「中継機を運用するには、四時間おきにクローン人間を交代する必要があるのですよね?」
ジジイは無言で頷いた。
「それなら、中継機の近くに交代要員がいるはずです。しかし、ドローンでくまなく探しましたが、人間の姿はありませんでした」
ヒツジとヤギしかいなかったからな……まさか!?
「おい、ジジイ。ヒツジとかヤギを中継機に使う事はできるのか?」
ジジイは首を横にふった。
「そんな事できたら、とっくにやっとるわい。レム神が生きている人間を使うと言い出したとき、わしは動物を使ってみてはどうじゃと助言した。しかし、動物実験はことごとく失敗。結局レム君のクローンが、一番相性がいいという事になったのじゃ」
「だとすると第五層には、やはり交代要員がいるのか? しかし、人間はどこにもいなかったぞ」
「北村さん。一カ所だけ私たちから隠れる事ができて、しかも第六層へケーブルを通せる場所があります」
「どこに?」
「エレベーターシャフトです」
あ! 機能を停止していると聞いていたから、確かにノーマークだったが……
「ジジイ。この施設のエレベーターは、どういう仕組みの物だ?」
「重力制御で、ゴンドラが上下する仕組みだと聞いていたが」
「そのゴンドラは、今どうなっている?」
「わしが三十年前に調べた時から、第五層と第六層の間で止まっているぞ。そこから全く動いていな……あ!」
そこだ!
ドローンをエレベーターシャフトへ行かせると、中継機はあっさりと見つかった。
長い間停止しているゴンドラの屋根の上に置かれたベッドの上に、BMIに接続されたクローン人間が三人寝ていたのだ。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

アシュターからの伝言
あーす。
SF
プレアデス星人アシュターに依頼を受けたアースルーリンドの面々が、地球に降り立つお話。
なんだけど、まだ出せない情報が含まれてるためと、パーラーにこっそり、メモ投稿してたのにパーラーが使えないので、それまで現実レベルで、聞いたり見たりした事のメモを書いています。
テレパシー、ビジョン等、現実に即した事柄を書き留め、どこまで合ってるかの検証となります。
その他、王様の耳はロバの耳。
そこらで言えない事をこっそりと。
あくまで小説枠なのに、検閲が入るとか理解不能。
なので届くべき人に届けばそれでいいお話。
にして置きます。
分かる人には分かる。
響く人には響く。
何かの気づきになれば幸いです。
銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児
潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。
その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。
日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。
主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。
史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。
大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑)
※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。
筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開!
謎の人
SF
元気いっぱい恋する乙女の小学5年生 安部まりあ。
ある日突然彼女の前に現れたのは、願いを叶える魔獣『かがみん』だった。
まりあは、幼馴染である秋月灯夜との恋の成就を願い、魔力を授かり魔法少女となる決意を固める。
しかし、その願いは聞き届けられなかった。
彼への恋心は偽りのものだと看破され、失意の底に沈んだまりあは、ふとある日のことを思い出す。
夏休み初日、プールで溺れたまりあを助けてくれた、灯夜の優しさと逞しい筋肉。
そして気付いた。
抱いた気持ちは恋慕ではなく、筋肉への純粋な憧れであることに。
己の願いに気付いたまりあは覚醒し、魔法少女へと変身を遂げる。
いつの日か雄々しく美しい肉体を手に入れるため、日夜筋トレに励む少女の魔法に満ち溢れた日常が、今幕を開ける―――。
*小説家になろうでも投稿しています。
https://ncode.syosetu.com/n0925ff/

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

【完結】イマジン 準備号〜仲間が強すぎるので、俺は強くならなくて良いらしい〜
夜須 香夜(やす かや)
ファンタジー
――忘れないでください、星々の瞬きとその罪を
仲間たちが強いから、俺は強くならなくても良いし、強くなる気もない!
普通の男子高校生、田仲伊吹。
下校中の彼を襲ったのは不運な出来事!?
助けてくれたらしい少女ノジャと、強すぎる仲間たちと異世界で大冒険!最初から、強くてニューゲームしてる仲間たちの心配はしなくて良いみたい。
「どうやったら、元の世界に帰れるんだよ! 家に返してくれ!」
この作品は、「イマジン〜私たちが共存するための100の方法〜」の準備号です。本編とは違う所もあるので、本編を読む予定がある方は頭がごちゃごちゃする可能性があります。
「イマジン」本編から30人以上のキャラが登場!?キャラがわちゃわちゃしてる小説が好きな方向けです。短期連載。
※イマジン本編の内容とは関係ありません。
※本編とキャラの設定が違う場合があります。
※本編開始までの肩慣らしです。
「イマジン」本編は、田舎者ファンタジーで、異種族恋愛モノです。たまにBL表現があります。
本編はバトル要素、グロ表現がありますが、準備号にグロ表現はありません。たぶん。
〜イマジン本編の予定のあらすじ〜
1 杏奈編
山の近くにある村に住む猫耳族の少女、杏奈。
弟の皐月、父の友人のチィランと暮らしていたが、とある出来事により、皐月と共に村を出ることになる。その時に出会った少年、アキラに着いてこられつつも、生活をするために旅をすることになる。
2 リチャイナ編
火星のとある国のとある村に住むリチャイナ。幼なじみと穏やかな日々を過ごしていたが、ある日、旅に出ていた父親から助けて欲しいという手紙が届き、父親の元へ行くことになる。幼なじみや、途中で出会った仲間たちと、旅をする中で、世界を救うために奮闘する。
3 カルメ編
とある世界のとある村に住むカルメは行方不明になった父親を探すために一人で旅に出る。その途中で出会ったみゆうと、リンと共に、頼れる仲間を集めて、世界を揺るがす敵と対峙することになる。
「イマジン」本編には、他にも主人公はいますが、主要の主人公はこの3人です。
※キャッチコピーは友人に依頼して考えてもらいました。
カクヨム、小説家になろうでも連載中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる