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第十六章

通信途絶

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 第六層の広さは、第四層、第五層と同じぐらい。

 その中でカルル・エステスが陣取っているのは、第七層への傾斜路付近。その戦力は、多脚戦闘車両が三両いるほか、歩兵が一個小隊ほど。

 これを突破しないと、第七層へは進めないが、相手の戦力も分からずに攻撃するわけにはいかない。

「芽依ちゃん。多脚戦闘車両の映像を、山頂基地に送っておいて」
「はい。《イサナ》のデータベースで照合してもらうのですね?」
「そうそう」

 照合結果が出るまで十分もかからないだろう。

「カイトさん」
「どうした? ミール」
「敵の数が、少なくないですか?」
「確かにそうだな」

 ここに歩兵一個小隊がいる事は、地下施設に入る前から分かっていたが、第三層から逃げてきた兵士たちはどこへ消えたのだろう?

 傾斜路付近には、まったく見あたらない。第七層に行ったのだろうか?

 いや、退路を塞がれるのを恐れて、上官を殺してまで逃げ出した奴らが、再び退路を塞がれる恐れのある第七層へ行くとは思えない。

 外部へ抜ける地下通路へドローンを行かせると、それはほどなくして見つかった。

 地下通路入り口周辺に、百名近い兵士たちが布陣していたのだ。

 退路を常に確保した状態で戦おうという事か? だったら、さっさと外へ出ればいいのに……

 いや、さすがにそれをやると、敵前逃亡で処罰されるか。

「北村さん!」

 不意に芽依ちゃんが叫んだ。

「山頂基地との連絡が途絶えました」
「なんだって!?」
「映像データを送った後、しばらくは繋がっていたのですが、突然……」
「山頂基地が攻撃を受けたのか?」
「いえ。通信が途切れる前に、そのような様子はありませんでした。アーニャさんが『《イサナ》にデータを送ったから、照合結果が出るまで待って』と言ったところで通信が途切れたのです」

 ということは……

「中継機を、やられたのかもしれないな」
「え?」

 考えてみれば十分ありうる事だ。

 今までは傾斜路を降りる度に、中継機をセットして山頂基地との連絡を確保していた。

 第一層から第四層までは、敵を制圧してから入っていたので中継機が破壊される心配はないと思っていたのだが、レム神が動物までコントロール下に置いていたとなるとそうはいかなくなる。

 傾斜路にヤギが入ってきて、一蹴りすれば中継機など簡単に壊れてしまう。

「今頃、アーニャさんもこっちを心配しているでしょうね」
「芽依ちゃん。連絡が途切れる前に、レム神が動物をコントロールしている事を、アーニャさんには伝えてあるよね?」
「ええ。伝えてあります」
「それなら、アーニャさんも中継機が動物に破壊されただけで、僕たちは無事だと推測してくれるさ」

 まあ、それでも安心はできないだろうな。

 だが、他にももっと大きな問題が……

 それを僕が言う前に、橋本晶が口を開いた。

「隊長。バッテリーや弾薬は大丈夫でしょうか? 第五層に戻れないとなると、我々は補給もままなりません」

 それだな。一番の問題は……

 さっきは僕たちが帝国軍の補給を分断していたわけだが、今度は僕たちの方が補給を分断されてしまったわけだ。
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