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第六章

「今、想像していましたね?」

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 ど……どうすればいいんだ? 服を脱がす? いや……そんな破廉恥な……いや、これはミールを助けるためであって、エッチなつもりでやるのでは……そうだ!
 僕は塩を掴んでミールに差し出した。
「ミール、服の中に塩を入れるんだ」
 これなら、脱がさなくてもなんとかなる。
「違います。カイトさん。服の中に潜り込まれたのは分身の方です」
「え? 分身? なら平気では……」
「それが、分身の感覚を遮断する前に、服に潜り込まれて……服には塩を塗っておいたのに……中は無防備でした」
「え?」
「あああ! そんなところ……いや、やめて」
「感覚を、遮断できないの?」
「やろうとしているのですけど、精神を集中できなくて……六体の分身の、どれに入られたのかが……分からなくて……ああ! いや!」

 ゴクリ! 

「よし、僕が行って直接……」
 分身達のところへ行こうとしたら、ミールに腕を掴まれた。
「あたしから離れないで下さい!」
「え……でも……」
 ミールは僕に抱きついてきた。ロボットスーツごしなので体温は伝わってこないが……
「ああ! 触手が入ってくる」
 
 どこに?
 
 いかん! 想像するな! 想像するな! 想像するなああ!

 しばらくして、ミールは落ち着いてきた。
 分身の感覚を遮断できたようだ。
「カイトさん。もう大丈夫です。感覚を遮断できました」
「そ……そうか……よかったな……」
「今、想像していましたね?」
 ミールにジッと見つめられ、僕は慌てて目を逸らした。
「想像って……何を……」
「もちろん、恥ずかしくて、口には出せないような事をです」
「してない」
「どんな事を想像したのですか?」
「してないよ」
「じゃあ、あたしの目を見て言ってください」
「見ているぞ」
 いや、本当は視線そらしているけど、ヘルメットのバイザーで見えないはず。
 ミールが僕の首に手を伸ばしてきた。

 カチ

 え? カチって? あ! バイザーが開いた。
 バイザーの開閉スイッチを、いつ間に覚えたのだ?
「ほら、視線を逸らしていますね」
「うぐ……」
「さあ、白状して下さい。どんな事を想像しました?」
「し……してない」
「変ですね。健全な殿方はこういう時、エッチな事を想像するのが普通ですけど……カイトさん、まさか同性愛?」
「んなわけあるか! 僕はノーマルだ!」
「じゃあ、想像しましたね?」
「いや、その……」
「さあ、どんな事を、想像したのです?」
『ご主人様、ミールさん』
 突然、通信機からPちゃんの声が響いた。
「なんですか! Pちゃん。いいところなんだから、邪魔しないで下さい」
『いいえ、そうじゃなくて、お二人のいるところに、特大スライムが向かっているのを、ドローンが見つけたのですけど……』
「え?」「え?」
 直後、横穴から触手が伸びてくる。
「きゃあああ!」
 僕とミールは、スライムに液体窒素を浴びせまくった。

 タンクのところにたどり着いた時には、塩の三分の一は使い切っていた。
 ダモンさんが使った入り口は、すぐに見つかる。
 岩の扉を開いてみると、岩の階段が続いていた。
 扉の向こうに、ミールの分身たちを見張りに残して僕とミールは石段を上がって行く。
 石段を登り切った先に木製の扉があった。
 扉を少しだけ開いて、ファイバースコープを差し込んでみる。
 ファイバースコープは、何かにぶつかってしまい映像が見えない。
 思い切って扉を開いた。

 これは?

「本棚のようですね」
 本棚だった。ただし、本棚の後ろ側。

 そうか! これは、本棚を横にずらすと、秘密の抜け穴が出てくるという、よくある仕掛けだ。
 僕らは秘密の抜け穴の方からやって来たから、本棚の後ろに出てしまったのだ。
「確かにダモン様の執務室には、大きな本棚がありましたね。その後ろに出ちゃったのかしら?」
 ミールは本棚に手を触れた。
 その途端、本棚が横にずれていく。

 ヤバイ!

 まだ、本棚の向こうをチェックしていないのに……
 本棚を抑えようとしたがもう遅い、
 本棚は完全にずれてしまい、その向こうに呆気にとられているダモンさんがいた。
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