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第六章

スライムは最弱だと言ったな。あれは嘘だ。

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 ダンジョンRPG定番モンスターのスライムは、最弱のモンスターと言われている。

 あれは絶対嘘だ。

 こんな設定を考えた奴は、現実のスライムなど見た事が無いに違いない。
 まあ……その手のゲームが作られた昭和後期から平成時代の日本人が……いや、地球人が本物のスライムなんか見た事あるはずないけど……

 とにかく、こいつらが最弱であるはずがない!

「きゃあ! こっちからも来ました」
 ミールの指差した先で、巨大なスライムが地下道を完全に覆っていた。
「クソ!」
 無駄だと分かっていたが、ショットガンを撃つ。
 まったく、効果がなかった。
 スライムの巨体に、小さな穴がいくつか空いただけ。
 それも、あっという間に塞がってしまった。
 豆腐にカスガイ、ヌカに釘とは正にこのこと。
「ミール。松明は?」
「もうありません」
「じゃあ、他に燃えるものは?」
「もう、全部燃やしてしまいました」
 スライムの弱点は火。
 その設定はあっていた。
 しかし、巨大化したスライムは、松明で何とかできるレベルじゃない。
 火のついた松明を突き付けたら、多少は怯んだが、すぐに粘液で火が消されてしまった。
 チャッカマンで火を点けなおしても、すぐに消されてしまう。
 さすがにヤバイと思って出口へ引き返したが、その行く手がスライムの壁に、すっかり塞がれていた。
『ご主人様。大丈夫ですか?』
 通信機から、外で待っているPちゃんの声。
 どうやら、電波の届くところまで、来られたようだ。
「Pちゃん! スライムに行く手を阻まれている。出口も塞がれた」
『ちょっと待って下さい。今、突破口を開きます』
 突破口? どうやって?
『目からビーム!』

 なに!? 

 スライムの壁に、突然丸い穴が開いた。
 その向こうから、眩しい光。
 ただ、その光を浴びても眩しいだけで熱くはないが……とにかく、今は……
「逃げろお!」
 僕はミールの手を引いて、スライムの壁に開いた穴に駆け込んだ。

「データによれば、この惑星に住むスライム状生物、正式名称、洞窟クラゲは光を嫌がるのです。だから、私のサーチライトを、最大出力で照らしてやれば逃げると予想できました」
 洞窟の出口前で、ぜいぜいと荒い息をしている僕とミールに、Pちゃんは解説してくれた。
 
 なんで、こんな事になったのか。
 ミールがダモンさんに会いに行くために、城から脱出する時に使った地下道を使うと言いだしたからだ。
 ただ、今も安全に通れるか分からない。
 とりあえず、偵察して安全だったら使うという事になって、僕とミールは偵察に入って行った。
 安全が確認できたら、僕だけ途中で引き返すことになっていた。
 入る前、地下道内にスライムがいるかもしれないとミールが言っていたが、僕はスライムと聞いて甘く見ていた。
 スライム=雑魚ザコというのが、日本人の一般常識だったから仕方ない。
 しかし、このスライム……正式名称は洞窟クラゲというらしいが……は決して雑魚ではなかった。
 銃も剣も通じない。
 ロボットスーツのブーストパンチも効果なし。
 ミールがスライム対策に用意した松明も、巨大になり過ぎたスライムには、ほとんど効果がなかった。
「しかし……」
 ようやく、息が落ち着いてきたところでミールに尋ねた。
「こんなスライムだらけの地下道を、よく抜けてこれたな」
「あたしが脱出に使った時には、スライムはいなかったのですよ」
「じゃあ、なんで?」
「あたしたちが脱出した後、帝国軍が追ってこられないように、スライムの卵を撒いておくってダモン様が言っていたのですよ。まさか、ここまで巨大化しているとは……」
「普通は、こんなに大きくならないの?」
「なりません。その前に天敵に食べられてしまうのです。この地下道には元々スライムがいなかったので、その捕食者もいなかったからでしょう。だから、あそこまで大きくなったと思います」
 生態系を破壊した結果か。
「とにかく、ミール。こんなところを一人で行くのは危険すぎる。やはり、僕も一緒にいくよ」
「カイトさん。ありがとうございます」
 とは言っても、どうやって突破するか?
 何か、対策を立てないと……
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