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第六章
監禁部屋
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夫人に案内された部屋は、所謂牢屋だった。
元々は、関所破りとかを留置するために作られた施設のようだ。
この母子は、最初はここに閉じ込められていたらしい。
「私達が、最初にここへ閉じ込められた時は、本当にひどい部屋だったわ。でもね、ネクラーソフさんが『丁重に扱うように』と言ってくれたおかげで、掃除もしてくれてカーペットや壁紙やテーブルやソファを持ち込んでくれたの」
なるほど。
中に入ってみると、牢屋とは思えないような内装だ。
豪華とはいえないが、普通のリビングルーム。
「でも、本当は私たち、この部屋から出ちゃいけないの。だけどね、料理があまりにも酷かったのよね。てっきり、私達が囚人だからかしら? とか思っていたら、兵隊さん達も同じ物を食べていると言うじゃない。だから、『逃げないから、厨房を使わせて』とお願いしたの。隊長さんも最初は渋っていたけど、根負けして使わせてくれたのよね。それ以来、兵隊さん達も分も私が作っているのよ。それから、兵隊さんたちは、だんだん私たちに優しくしてくれるようになったの」
ダモン夫人は、茶の用意を始めた。
「やっぱり、人って不味い物ばかり食べていると心が荒んでくるのよね」
夫人に促されて、僕たちはソファに腰かける。
その前にあるテーブルの上に、夫人が茶碗を並べた。
「さてと」
夫人はアンダーを指差した。
「本当に、綺麗にできているわね。目を凝らさないと、分身だなんて分からないわ」
やっぱり、分かっていたのか。てか、目を凝らしたら分かるような物なのか?
夫人は僕とミールを見比べた。
「あなた達は分身じゃないわね。どっちが、ミールちゃんかしら? ああ、もしかしたら誰かに見られているかもしれないから、変装は解いちゃダメよ。どんな魔法を使っているのか知らないけど」
「奥様。あたしがミールです」
夫人は、にっこりと微笑んだ。
「私達を、連れ出しにきてくれたのね?」
「当然です。奥様を、こんなところに入れておくわけにはいけません。お望みでしたら、人死は出さないように、やりますから……」
「ありがとう。でも、私達は、ここから出るわけにはいかないの」
「どうしてですか? 奥様がここから出たら、ダモン様だってこっちへ戻って……」
夫人は、ゆっくりと首を横に振った。
「私もね。人質を取られているの。私達がここから出たら、ダモンが死んでしまうのよ」
「そんなバカな? ダモン様が死んだらネクラーソフだって困るはず……」
「ネクラーソフさんが殺すのではないの。あの人が、自分から死のうとしているのよ。城の帝国兵を、巻き添えにしてね」
「え?」
「もう知っているかもしれないけど、あの人は、私達を人質に取られて、大切な情報を帝国に渡してしまったの。その事を、とても悔いていたわ」
「そんな……あたし、そんな事恨んでいません。奥様を人質に取られたのだから、仕方なかったのだと思います」
「ミールちゃんは、そう言ってくれると思っていたわ。でも、あの人は自分で自分が許せないの。でも、今それをやらないのは、私達がここにいるから」
「どういう事です?」
「私たちが無事にここを逃げ出せたら、決行するつもりなのよ」
「そんな……」
だから、あの時逃げるのを拒否したのか。
「分かるでしょ。私たちをここから出したら、あの人を取り戻せるどころか、手の届かないところ行ってしまうの。だから私たちは、ここから出られない」
ミールは、がっくりとうな垂れた。
「ダモン様。そんなの酷すぎます……」
「あの……ダモンさんはどうやって、城の帝国兵を道連れにするつもりなんですか?」
夫人は、僕の方を見た。
「そう言えば、あなたのお名前を聞いてなかったわね」
「失礼しました。僕は、北村海斗と申します。日本人です」
「日本の方だったのね。なら、分かるでしょ。なんて言ったからしら? あの空を飛ぶ機械……ヘリ……ヘリ……」
「ヘリコプターですか?」
「そう! それそれ。それに使う燃料が、城の地下に大量にあるの。この辺りで取れる燃える空気から作ったと聞いていたわ。えるえぬ何とかというのを……」
液化天然ガスだ! それでヘリコプターを飛ばしていたのか。
「あの人は、私たちの安全を確認したら、あれに火をつけるつもりなのよ」
ヤバイ! そんな物騒な物がある事を知らないで、弾薬庫を爆破していたら引火していたかも……
元々は、関所破りとかを留置するために作られた施設のようだ。
この母子は、最初はここに閉じ込められていたらしい。
「私達が、最初にここへ閉じ込められた時は、本当にひどい部屋だったわ。でもね、ネクラーソフさんが『丁重に扱うように』と言ってくれたおかげで、掃除もしてくれてカーペットや壁紙やテーブルやソファを持ち込んでくれたの」
なるほど。
中に入ってみると、牢屋とは思えないような内装だ。
豪華とはいえないが、普通のリビングルーム。
「でも、本当は私たち、この部屋から出ちゃいけないの。だけどね、料理があまりにも酷かったのよね。てっきり、私達が囚人だからかしら? とか思っていたら、兵隊さん達も同じ物を食べていると言うじゃない。だから、『逃げないから、厨房を使わせて』とお願いしたの。隊長さんも最初は渋っていたけど、根負けして使わせてくれたのよね。それ以来、兵隊さん達も分も私が作っているのよ。それから、兵隊さんたちは、だんだん私たちに優しくしてくれるようになったの」
ダモン夫人は、茶の用意を始めた。
「やっぱり、人って不味い物ばかり食べていると心が荒んでくるのよね」
夫人に促されて、僕たちはソファに腰かける。
その前にあるテーブルの上に、夫人が茶碗を並べた。
「さてと」
夫人はアンダーを指差した。
「本当に、綺麗にできているわね。目を凝らさないと、分身だなんて分からないわ」
やっぱり、分かっていたのか。てか、目を凝らしたら分かるような物なのか?
夫人は僕とミールを見比べた。
「あなた達は分身じゃないわね。どっちが、ミールちゃんかしら? ああ、もしかしたら誰かに見られているかもしれないから、変装は解いちゃダメよ。どんな魔法を使っているのか知らないけど」
「奥様。あたしがミールです」
夫人は、にっこりと微笑んだ。
「私達を、連れ出しにきてくれたのね?」
「当然です。奥様を、こんなところに入れておくわけにはいけません。お望みでしたら、人死は出さないように、やりますから……」
「ありがとう。でも、私達は、ここから出るわけにはいかないの」
「どうしてですか? 奥様がここから出たら、ダモン様だってこっちへ戻って……」
夫人は、ゆっくりと首を横に振った。
「私もね。人質を取られているの。私達がここから出たら、ダモンが死んでしまうのよ」
「そんなバカな? ダモン様が死んだらネクラーソフだって困るはず……」
「ネクラーソフさんが殺すのではないの。あの人が、自分から死のうとしているのよ。城の帝国兵を、巻き添えにしてね」
「え?」
「もう知っているかもしれないけど、あの人は、私達を人質に取られて、大切な情報を帝国に渡してしまったの。その事を、とても悔いていたわ」
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「ミールちゃんは、そう言ってくれると思っていたわ。でも、あの人は自分で自分が許せないの。でも、今それをやらないのは、私達がここにいるから」
「どういう事です?」
「私たちが無事にここを逃げ出せたら、決行するつもりなのよ」
「そんな……」
だから、あの時逃げるのを拒否したのか。
「分かるでしょ。私たちをここから出したら、あの人を取り戻せるどころか、手の届かないところ行ってしまうの。だから私たちは、ここから出られない」
ミールは、がっくりとうな垂れた。
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