上 下
679 / 848
第十六章

去勢して宦官にしちゃおうかしら?

しおりを挟む
 今まで《海龍》艦内で起きていた怪現象? の数々は、すべてジジイが原因だと分かったのだが……さて、このジジイの処分はどうすべきか?

 今はエラの電撃で気を失っている。

 目覚める前に縛っておいたのだが、このジジイの事。縛っておいても、閉じこめておいても、いつの間にか抜け出してしまいそうだ。

 気を失っている間にヘリに乗せて、南ベイス島に強制送還するのが無難かな?

「その前に、去勢して宦官にしちゃおうかしら?」

 そう言ってアーニャが、サバイバルナイフを舌で舐めまわした。
 
 去勢って、まさかメスじゃなくてそれでやる気?

 怖いのですけど……

「アーニャさん。それをやっても無駄です」

 アーニャの胸ポケットから、ミニPちゃんが顔を出す。

「過去に宦官制度のあった国の記録によると、宦官と女官の不義がたびたびあったそうです。宦官になっても、男性の性欲は消えません」
「では、手足を切っちゃうのがいいかしら?」
「いえ。ここは脳だけを取り出して、培養液の中で生かしておくという状態がよろしいかと……」

 怖えええよ! おまえら……

 ジジイが目を開いたのはその時……

 キョロキョロと周囲を見回し、自分が縛られているという状況を理解したようだ。

「ヒドい奴らじゃのう。せっかく良い事を教えてやろうと思って出てきたわしを、こんな目にあわせおって」

 良い事だと……

「ふざけんな! 出てくるそうそう、セクハラしまくっておいて!」
「あれは軽い挨拶じゃ」
「あんな挨拶があるか!」
「そもそも、おまえらがわしを幻覚呼ばわりするからいかんのじゃ。だから、わしはおまえらに現実を分からせてやったまでじゃ」

 このクソジジイ……

「良い事を教えてくれると言ったな? で、どんな内容だ?」
「なぜ、レム神が接続者の人格を残して眠らせているかを知りたいのじゃろう」

 確かに、それは気になるが……

「知っているのか?」
「知っているぞ。知りたいだろう」
「どうせ、なにかろくでもない報酬を要求するのだろう?」 
「当然じゃ」
「では、いらん」
「待て。報酬の内容ぐらい聞け」
「どうせ、エロい事でも要求してくるのだろう」
「エロい事の何が悪い! おまえだって男だろ。エロい妄想の一つや二つ……」
「エロそのものを否定する気はない。相手の合意を得ないエロは禁止」
「ふん! 合意か。ええのう。若くてハンサムな男は。いくらでも、女から合意してもらえて……」
「あんただって、子供がいるのだろう。合意の上で作ったのじゃないのか?」
「う! ……とにかく、今回の要求はエロい事ではない」
「では、酒か? そういえば、アーニャさんの酒を誰かが飲んでいたが、あんたの仕業だったんだな」
「悪いか」
「悪いに決まっているだろ! それと昨夜、僕の紹興酒がなくなっていたが、あれもおまえの仕業か?」
「そんな物は知らん」

 しらばっくれて……酒の恨みは恐ろしいんだぞ!

 昨夜、眠る前に一杯やろうと思ってブリーフケースの二重底を開いたとき、そこに隠してあったはずの紹興酒がなくなっていたときに受けた僕の絶望がどれほどのものか……

「ご主人様。それをやったのは私です」

 そう言ったのは、アーニャの胸ポケットから顔をのぞかせているミニPちゃん。

「なんだって?」
「ご主人様が飲み過ぎないように、私がやりました」
「おい……まさか捨てたんじゃないよな?」
「捨ててはいません。今日の作戦が終わったらお返しします」
「本当に返してくれるのだろうな?」
「ご主人様。ロボットは嘘をつきません」

 いや、おまえは嘘をつけるように作られているんだろう。

「なんじゃい! とんだ濡れ衣じゃのう。おまえの酒を隠したのは、おまえの家来ではないか」
「うっさいなあ! で、結局あんたは、何を要求したいんだ?」
「おまえはこの戦いが終わったら、リトル東京に行くのじゃろ?」

 立ち聞きしていたのか。

「その時に、わしも一緒にリトル東京へ連れて行ってくれ」

 なに?
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

夜空に瞬く星に向かって

松由 実行
SF
 地球人が星間航行を手に入れて数百年。地球は否も応も無く、汎銀河戦争に巻き込まれていた。しかしそれは地球政府とその軍隊の話だ。銀河を股にかけて活躍する民間の船乗り達にはそんなことは関係ない。金を払ってくれるなら、非同盟国にだって荷物を運ぶ。しかし時にはヤバイ仕事が転がり込むこともある。  船を失くした地球人パイロット、マサシに怪しげな依頼が舞い込む。「私たちの星を救って欲しい。」  従軍経験も無ければ、ウデに覚えも無い、誰かから頼られるような英雄的行動をした覚えも無い。そもそも今、自分の船さえ無い。あまりに胡散臭い話だったが、報酬額に釣られてついついその話に乗ってしまった・・・ 第一章 危険に見合った報酬 第二章 インターミッション ~ Dancing with Moonlight 第三章 キュメルニア・ローレライ (Cjumelneer Loreley) 第四章 ベイシティ・ブルース (Bay City Blues) 第五章 インターミッション ~ミスラのだいぼうけん 第六章 泥沼のプリンセス ※本作品は「小説家になろう」にも投稿しております。

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

マスターブルー~完全版~

しんたろう
SF
この作品はエースコンバットシリーズをベースに作った作品です。 お試し小説投稿で人気のあった作品のリメイク版です。 ウスティオ内戦を時代背景に弟はジャーナリストと教育者として、 兄は軍人として、政府軍で父を墜とした黄色の13を追う兄。そしてウスティオ の内戦を機にウスティオの独立とベルカ侵攻軍とジャーナリストとして、 反政府軍として戦う事を誓う弟。内戦により国境を分けた兄弟の生き方と 空の戦闘機乗り達の人間模様を描く。

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...