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第十六章

ヘリポート

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「隊長」

 橋本あきらは、地面に倒れている二人の兵士を指さした。

「二名捕らえました。どうします? 口を割らせるのは一名で十分なので、一人は殺しますか?」

 彼女も可愛い顔して、物騒な事を平然と言うなあ……

「いや、せっかくだから、二人とも生かしておこう」

 つーか、戦闘不能になった者まで殺したらあかんやろ。

「隊長なら、そう言うと思いました」

 まあ、それは良いとして……

 僕は工事現場の方を向いた。

 レーダードームの残骸は、すっかり撤去されている。

 これから新しいレーダーを設置するところだったのだろうけど、まだその作業は始まっていない。

 それはそれで、僕たちにとっては都合のいい状況と言えた。

 元々、このレーダードームの跡地に、ヘリを降ろして橋頭堡きょうとうほとする予定だったのだから。

 山頂付近は険しい地形をしているが、レーダードームのあるところだけは、平らに慣らしてコンクリートと石垣で固めてある。

 ヘリポートにするのにちょうどよい場所だ。

 だから、ロボットスーツ隊が先行して、着陸の邪魔になりそうな残骸を撤去してから、ヘリを降ろす予定だったので手間が省けたと言える。

 問題は、その作業をやっていたナーモ族奴隷たち。

 全員作業の手を止め、怯えた視線を僕たちに向けていた。

 無理もないな。

 彼らにしてみれば、突然やってきた僕らが何者だか分からない。

 ただ、監督していた兵士たちが殺害されて、次は自分たちの番だと怯えているようだ。

「ナーモ族の諸君。君たちに危害を加えるつもりはない。だから、安心してくれ」

 とは言ってみたが、安心する様子はない。

 一人のナーモ族が、おずおずと僕の前に進み出る。

「わしらは、これからどうなるのですか?」
「君たちには、何もしない。もう帰っていいよ」
「でも、このまま基地へ帰ったら、わしらムチで叩かれるのですが……」

 え? そうなの……

 かといって、大陸へ移送してそこで自由の身にしても、どうやって食べていけばいいか分からないと言うし……

 結局、彼らは、ヘリで南ベイス島の村へ運んで、しばらくそこで保護することになった。

 程なくして、ヘリが降りてくる。

 ヘリから降りてきたミールに、捕虜の分身体を作ってもらい、情報を聞き出してみた。

 それによると、帝国軍の主力はほとんど海岸線の方に集結しているらしい。
 
 残りは地下施設の中にいるそうだ。

 そして、カルル・エステスも地下施設にいるという。

 しかし、地下にいるのなら、プシトロンパルスは届かないはず。レムはどうやって、カルルをコントロールしているのだ?

 その事を聞いてみたのだが、兵士達には「プシトロンパルス」とか「脳間通信」と言われても、なんの事だか分からないようだ。

 当然だな。末端の兵士がそんな事を知るはずがない。

 まあ、どうせ中継装置のようなものでもあるのだろう。

 それより、この山頂から地下施設に向かう途中に、戦力が配備されているか否かの方が重要だ。

 その事を聞いてみると……

「俺の知る限りでは、地下施設入り口から上には、兵士はいない」
「では、君たちの任務は工事の監督だけか?」
「そうだ」
「ここに、我々が攻めてくるという事は予想していなかったのか?」
「予想はしていたが、我々の任務は瓦礫の撤去だけだ。それが済んだら、直ちに撤収する事になっていた」
「レーダーの設置は?」
「後からやってくる技師が、行うことになっている」

 という事は、技師と一緒に護衛の兵士達も来るのか?

 やっかいだな。

「技師って? まさか!」

 ん? 僕は芽依ちゃんの方を振り向いた。

「芽依ちゃん。どうかしたの?」
「確か、あの人も電子工学の学位を持って、レーダーに詳しかったかと……」

 あの人?

「これは驚きました」

 その声は、突然頭上から聞こえた。
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