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第十六章
橋頭保
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僕は海面すれすれを飛行していた。その僕の後には、桜色の九九式、その後にはすみれ色の九九式が飛行している。
僕らのはるか前方では、Pちゃんのコントロールする五機の菊花が先行していた。
そして、僕らの遙か後方からは、ミール達を乗せたヘリが……
僕らが飛んでいるのは、ある直線の上。
背後から上ってくる朝日と、ベイス湾に停泊中の《アクラ》とを結ぶ直線……
ベイス島のレーダードームはすでに潰してあるが、まだ《アクラ》のレーダーが残っていた。
そのレーダーに発見されないように近づくには、北ベイス島の山陰から近づけばいいが、恐らくそちらにはロケット砲を持った兵士たちが配備されているだろう。
昨日確認できたのはRPG7だけだが、スティンガーミサイルなど誘導弾の類もないとは言い切れない。
もっとも安全にベイス島に近づくには、太陽を背にして行くのが一番。
程なくして、先行していた菊花が、《アクラ》に攻撃を仕掛けた。
『ご主人様。《アクラ》のレーダー破壊に成功しました』
レーダーさえ破壊してしまえば、もうこれ以上 《アクラ》を攻撃する必要はない。
菊花隊は偵察任務に向かわせた。
『ご主人様。海岸線付近に塹壕があるのを確認しました』
昨日までは、そんな塹壕はなかった。
こっちがボートで来ると聞いたので、昨夜の内に掘ったのだろう。
だが、まったく無駄の事……
しかし、これで向こうも、こっちがミーチャを使って反間計 (敵のスパイを利用する計略)を仕掛けている事に気がつくだろうな。
当初、ミーチャの前で行った作戦会議ではドローンとロボットスーツで海岸付近に橋頭堡を築き、そこにボートに乗ったミール達が上陸する事になっていた。
だが、実際に橋頭堡が築く場所はそこではない。
『ご主人様。山頂付近に敵兵の姿を確認しました』
まずいな。こっちの目論見に気がついたか?
「人数と武器は?」
『六人です。武器は自動小銃。他にナーモ族の奴隷十名が工事を行っています』
ドローンから送られてきた映像によると、どうやら破壊されたレーダードームを、奴隷たちに修理させているらしい。
山頂に橋頭堡を築こうとしている事に気がついたわけではないようだ。
できれば、ナーモ族は巻き込みたくないな。
となると一瞬でケリをつけるしかない。
映像を見ていると、兵士たちは奴隷の働きを監視しているようだ。
少しでも休もうものなら、ムチで叩き、銃で脅しつけて働かせている。
よし! これで、敵兵に対する同情の余地は微塵もなくなったな。
こいつらは瞬殺する。
僕の決定を二人に伝えると、橋本晶が意見具申をして来た。
「こいつらを瞬殺する事には賛成ですが、可能なら一人ぐらいは生け捕りにした方がよろしいかと思います」
もっともな話だ。
「隊長と森田さんは手加減せずに瞬殺して結構です。私は状況を見て、一人か二人を生け捕りにします。無理な時は殺します」
「分かった。君に任せよう」
僕たちは、太陽を背に山頂の工事現場を急襲した。
「死になさい! 消えなさい! くたばりなさい!」
手始めに芽依ちゃんが、AA12を乱射して二人の兵士を肉塊に変えた。
ちなみにその二人はナーモ族奴隷たちから離れていたところにいたので銃が使えたが、他の兵士は銃を使うとナーモ族を巻き込む恐れがある位置にいる。
「でえええい!」
僕は一人の兵士に体当たりをかけた。
兵士はそのまま吹っ飛び、崖下へ転落していく。
「うわ! カイト・キタムラ! なぜここに?」
もう一人の兵士が、僕に自動小銃を向けてきた。
撃たれても僕は平気だが、流れ弾がナーモ族に当たる恐れがある。
トリガーを引く前に奴の懐に……だめだ、もう撃ってきた。
銃弾が九九式の装甲にガンガン当たってくるが……
数発撃っただけで銃は弾切れに……
「しまった! 奴隷相手に無駄撃ちすんじゃなかった」
そう言えば、こいつらさっきから、奴隷に向かって威嚇射撃をしていたな。肝心な時に弾が無くなるとは間抜けな……
まあ、弾切れにならなくても、こいつの運命に変わりはないけどね、これでナーモ族を巻き添えにする心配はなくなった。
「ブースト!」
ブーストパンチを食らい、奴も崖下へ転落していった。
残りの兵士は?
「でやああ!」
声の方を向くと、すみれ色の九九式の横で二人の帝国軍兵士が崩れるように地面に倒れるところだった。
兵士たちが倒れるのを確認すると、橋本晶は手にしていた日本刀を鞘に納める。
「安心せえ。峰打ちよ」
彼女、ひょっとしてこのセリフが言いたかったのか?
僕らのはるか前方では、Pちゃんのコントロールする五機の菊花が先行していた。
そして、僕らの遙か後方からは、ミール達を乗せたヘリが……
僕らが飛んでいるのは、ある直線の上。
背後から上ってくる朝日と、ベイス湾に停泊中の《アクラ》とを結ぶ直線……
ベイス島のレーダードームはすでに潰してあるが、まだ《アクラ》のレーダーが残っていた。
そのレーダーに発見されないように近づくには、北ベイス島の山陰から近づけばいいが、恐らくそちらにはロケット砲を持った兵士たちが配備されているだろう。
昨日確認できたのはRPG7だけだが、スティンガーミサイルなど誘導弾の類もないとは言い切れない。
もっとも安全にベイス島に近づくには、太陽を背にして行くのが一番。
程なくして、先行していた菊花が、《アクラ》に攻撃を仕掛けた。
『ご主人様。《アクラ》のレーダー破壊に成功しました』
レーダーさえ破壊してしまえば、もうこれ以上 《アクラ》を攻撃する必要はない。
菊花隊は偵察任務に向かわせた。
『ご主人様。海岸線付近に塹壕があるのを確認しました』
昨日までは、そんな塹壕はなかった。
こっちがボートで来ると聞いたので、昨夜の内に掘ったのだろう。
だが、まったく無駄の事……
しかし、これで向こうも、こっちがミーチャを使って反間計 (敵のスパイを利用する計略)を仕掛けている事に気がつくだろうな。
当初、ミーチャの前で行った作戦会議ではドローンとロボットスーツで海岸付近に橋頭堡を築き、そこにボートに乗ったミール達が上陸する事になっていた。
だが、実際に橋頭堡が築く場所はそこではない。
『ご主人様。山頂付近に敵兵の姿を確認しました』
まずいな。こっちの目論見に気がついたか?
「人数と武器は?」
『六人です。武器は自動小銃。他にナーモ族の奴隷十名が工事を行っています』
ドローンから送られてきた映像によると、どうやら破壊されたレーダードームを、奴隷たちに修理させているらしい。
山頂に橋頭堡を築こうとしている事に気がついたわけではないようだ。
できれば、ナーモ族は巻き込みたくないな。
となると一瞬でケリをつけるしかない。
映像を見ていると、兵士たちは奴隷の働きを監視しているようだ。
少しでも休もうものなら、ムチで叩き、銃で脅しつけて働かせている。
よし! これで、敵兵に対する同情の余地は微塵もなくなったな。
こいつらは瞬殺する。
僕の決定を二人に伝えると、橋本晶が意見具申をして来た。
「こいつらを瞬殺する事には賛成ですが、可能なら一人ぐらいは生け捕りにした方がよろしいかと思います」
もっともな話だ。
「隊長と森田さんは手加減せずに瞬殺して結構です。私は状況を見て、一人か二人を生け捕りにします。無理な時は殺します」
「分かった。君に任せよう」
僕たちは、太陽を背に山頂の工事現場を急襲した。
「死になさい! 消えなさい! くたばりなさい!」
手始めに芽依ちゃんが、AA12を乱射して二人の兵士を肉塊に変えた。
ちなみにその二人はナーモ族奴隷たちから離れていたところにいたので銃が使えたが、他の兵士は銃を使うとナーモ族を巻き込む恐れがある位置にいる。
「でえええい!」
僕は一人の兵士に体当たりをかけた。
兵士はそのまま吹っ飛び、崖下へ転落していく。
「うわ! カイト・キタムラ! なぜここに?」
もう一人の兵士が、僕に自動小銃を向けてきた。
撃たれても僕は平気だが、流れ弾がナーモ族に当たる恐れがある。
トリガーを引く前に奴の懐に……だめだ、もう撃ってきた。
銃弾が九九式の装甲にガンガン当たってくるが……
数発撃っただけで銃は弾切れに……
「しまった! 奴隷相手に無駄撃ちすんじゃなかった」
そう言えば、こいつらさっきから、奴隷に向かって威嚇射撃をしていたな。肝心な時に弾が無くなるとは間抜けな……
まあ、弾切れにならなくても、こいつの運命に変わりはないけどね、これでナーモ族を巻き添えにする心配はなくなった。
「ブースト!」
ブーストパンチを食らい、奴も崖下へ転落していった。
残りの兵士は?
「でやああ!」
声の方を向くと、すみれ色の九九式の横で二人の帝国軍兵士が崩れるように地面に倒れるところだった。
兵士たちが倒れるのを確認すると、橋本晶は手にしていた日本刀を鞘に納める。
「安心せえ。峰打ちよ」
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