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第五章

噛まれてたまるか!

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「シャー」
 ガルキナの分身(以後、分身は省略)が襲い掛かってきた。
「カイトさん!」
 横から、ミールの声と同時に飛んできた矢がガルキナに刺さる。
 そっちに目を向けると、ミールの分身がボーガンを構えていた。
「うおお!」
 ガルキナが苦しみ始めた。
 銃弾をいくら受けても、平気だったのに……
「苦しいでしょ。それは、暴走する分身を鎮圧するために開発された矢です」
 ガルキナに刺さった矢の矢羽から、光の粒子が吹き出していた。
 どうやら分身を動かしているエネルギーのような何かが、矢を通して流失しているようだ。
 こんな、良い物があるならもっと早く出してくれれば……

 パリン!

 え? 矢が粉々になった。
『うーん……まだまだ、改良の余地がありますね』
「試作品だったのか?」
『魔法ギルドから送られてきた試供品です。使ってみて、レポートを提出したら謝礼がもらえるのですけど……強度が足りなかったと、報告しておきましょう』
 話している間に、ガルキナは立ち上がった。
「お・の・れ・騙・し・た・な」
 なんか、事態が余計こじれたような……
「まて、話せばわかる」
「黙・れ」
 ガルキナが飛び掛かってきた。
「ブースト」
 スカ!
 パンチを躱された。
 そのまま、タックルをかけられ、僕は地面に押し倒される。
 その上に、ガルキナが伸し掛かってきた。
 肩に噛みつかれる。
磁性流体装甲リキット゜アーマー第一層、第二層、貫通されました。最終防衛ラインで食い止めています』 
 最終防衛ラインは、確か単結晶炭素繊維モノクリスタルカーボンファイバー強化プラスチックだったはずだが、持ちこたえられる……よね?
 持ちこたえられなかったら、このままガブリ…… 
 
 くそ! 噛まれてたまるか!

「ブースト」
 ガルキナの脇腹に、パンチを叩き込む。
 ダメだ。離れない。
『最終防衛ライン亀裂発生。間もなく突破されます』

 もうあかん! 噛まれる!

「カイトさんから、離れなさい!」
 ミールの分身が二人飛び掛かってきた。
 それぞれ、左右からガルキナの腕を掴んで強制的に引き離す。
 さらに数人のミールが飛び掛かりガルキナを押さえつけた。
「ありがとう。ミール」
「カイトさん。今です。憑代を!」
「ブースト」
 ガルキナの胸に、パンチを叩き込んだ。
 そのまま、僕の腕はめり込んでいく。
 手ごたえあり!
 短剣を掴み、そのまま引っ張り出した。
「返・せ」
 螺鈿細工を施した宝剣のようだ。
 武器というより、芸術品だな。
 もったいないけど……
「返・せ・返・せ・返・せ」   
 宝剣を地面に叩きつけた。
「ブースト」
 そのまま宝剣を叩き割る。
「うわああああああ!」
 ガルキナの分身は、断末魔の悲鳴を上げ、光の粒子となって消滅した。
 同時に、ミールの分身たちも消えていく。
 周囲には立っている者はいなかった。
 どうやら終わったようだ。
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