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第五章

分身体

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 復讐に来たのか?
 それにしても、さっきと雰囲気が違う。
「見・つ・け・た」
 あれ? 彼女、こんな声だったっけ?
 えらく、くぐもった声だな。
「カイト……アレ、ナニ? 怖イ」
 エシャーが怯えている。
「アレ、人ジャナイ」
 まさか!
 ヘルメットのデジカメ画像をバイザーに表示。
 彼女の姿は、出現消滅を繰り返していた。
 これは……分身体だ!
「後・悔・さ・せ・て・や・る」
 彼女の口が、大きく裂ける。
 まるで口裂け女。
『ご主人様。もう奴は、ご主人様から二十メートルのとこにいます』
「ああ知ってる。目の前にいるよ」
『カイトさん。相手は何者でした?』
「ミール。やはり、あれは分身だ」
『どんな、姿です?』
「さっき、僕が遭遇した女兵士」
『では、敵ですね』
 分身が襲いかかって来た。
 避けるか?
 いや、避けたら背後のエシャーが危ない。
「エシャー。隠れていてくれ」
「カイト……」
 分身と正面からぶつかった。
『頚部に大きな圧力がかかってます』
 なんて奴……ロボットスーツと同等の力を出している。
 僕の首を絞めてくる腕を引き剥がせない。
 ならば……
『ブースト』
 物理攻撃は有効なようだ。
 腹にパンチを叩き込むと、吹っ飛んで行って、大木にぶつかった。
 しかし、何事もなかったかのように分身は立ち上がる。
 こいつは不死身か?
 いや、ミールは身体の半分以上を削ると消滅すると言っていた。
 ならば……
 背中に背負っていたショットガンを抜く。
「シャー!」
 奇声を上げながら猛然と突進してくる分身に、ショットガンを撃ち込んだ。
 分身に小さな穴がいくつもあく。
 さらに一発撃ち込み、左腕を吹き飛ばした。
 だが……
「バカな」
 穴は、瞬く間に塞がってしまった。
 吹き飛ばした腕も、再生してしまう。
『カイトさん。少しずつ削っていく戦法はだめです。分身の再生力が追いつかないほど、一気に削らないと……』
「ショットガンじゃ無理だ」
 分身がショットガンに噛みついてきた。
 そのショットガンごと、分身を空中に投げる。
「Pちゃん! ミサイルを」
『了解です』
 ドローンから発射されたミサイルが、分身に真っ直ぐ向かう。
「シャー!」
 分身はショットガンをミサイルに向けて投げる。
 そんなものが、ミサイルに当たるわけ……いや、当てる必要はないんだ。
 ミサイルは途中で爆発してしまった。
 至近距離をショットガンが通り過ぎた時に、VТ信管を作動させてしまったのだ。
 分身は、そこまで分かっててやったのだろうか?
 地上に降りた分身は、真っ直ぐ僕に向かってくる。
「カイトヲ、イジメルナ!」
「エシャー! よせ!」
 横から飛び出したエシャーが、分身に体当たりした。
「シャー!」
 分身はエシャーの体当たりを食らい、地面を転がる。
 しかし、分身はすぐに立ち上がり、今度はエシャーに襲い掛かろうとしていた。
「バッテリーパージ、アクセレレーション」

 残時間 三百秒

 分身がエシャーに襲い掛かる寸前に、僕は体当たりした。
「ブースト」
 分身の顔面にパンチを叩き込む。
 首が吹き飛んで消滅した。
 しかし、首はすぐに再生を始める。
 再生する前に腕を掴み、遠くへ投げ飛ばした。

 残時間 二百八十秒

「エシャー、頼むから隠れていてくれ。僕は君に傷ついてほしくないんだ」
「ゴメンネ、カイト」
 エシャーは泣きながら、バリケードの中へ入って行った。

 振り返ると、分身はもう立ち上がっていた。
 しかし、首は半分しか再生していない。 
 どうやら、首は時間がかかるようだ。
「Pちゃん。ミサイルを」
『すみません。さっきのが最後です』
 くそ!
 ならば首が再生する前に……
「アクセレレーション」
 分身の近くまで移動。
「ブースト」
 再生中の首を殴り飛ばした。
 さらに両腕を手刀で叩き切る。

 残時間 百八十秒

 足を掴んで引きちぎった。

 ダメだ。まだ消えない。

 首以外は、凄い勢いで再生してしまう。

 魔人〇ウかよ?

『ご主人様大変です。ダサエフが痺れを切らして、自分から全部隊を率いてそっちへ向かうと言っています』
 こんな時に……

 残時間 百六十秒

 再生中の分身の首を潰す。
 首がつぶれている間、こいつは動けない。
 その隙に僕は外部電源を再装着した。

『電源に接続、充電しています』 
 ダザエフが来る前に、なんとかしないと……
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