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第五章
命乞いする者
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僕は兵士たちに、さっきの女から奪った自動小銃を向けた。
もはや、なんの感情も沸いてこない。
ただ、汚らしい害虫をつぶすのような気分で、僕は引き金を引いた。
一人の兵士が吹っ飛ぶ。
「おのれ!」
もう一人の兵士が、抜刀して切りかかってきた。
数歩も行かないうちに、兵士は銃撃でズタズタになる。
「うわわわ!」
最後の一人は、腰を抜かして地面にへたり込んでいた。
「た……助けてくれ」
今更、命乞い?
「お願いだ! 殺さないでくれ」
「ナーモ族も、そう言っていたはずだ」
「……」
「君は、命乞いをするナーモ族に何をした?」
「こ……殺した」
「命乞いする者を冷酷に殺しておいて、自分の命乞いは聞いてもらえるとでも思っているのか?」
「命令だったんだ。仕方なかったんだ。頼む。俺は……死にたくない……」
見苦しい……
「だめだ。僕はナーモ族を助けたい。君らが虐殺をやめて、今すぐ国へ帰って、ここへは二度と来ないならいいけど、できないだろ? だったら、君たちを皆殺しにするしかないじゃないか」
「許してくれ」
「許されると思っているのか? 平和に暮らしているナーモ族の土地に、一方的に攻め込んだのはお前たちだ。そんな事をした以上、逆襲されて殺される覚悟はしていただろ?」
「逆襲されるなんて、思ってなかった」
「それは、お前がバカなだけだ」
「悪かった。ナーモ族は、もう殺さない」
「それを僕に信じろと? それに虐殺は、軍の命令だろ? 逆らえないだろ?」
「今から、軍隊を脱走する」
「神に逆らう事に、なるんじゃないのかい?」
「神など知るか! あんたは知らないだろうけどな、嘘でも神を信仰しているふりをしないと、帝国では生きていけないんだよ」
なんだ。みんなが、みんな狂信者というわけじゃなかったのか……
「だから、お願いだ。助けてくれ」
「ふん」
僕は銃を道端に捨てた。
そのまま、兵士に背を向けて歩き出す。
十歩も行かないうちに、背後でカチャリという音がした。
やはり、やったか。
やらなければ、見逃そうかとも思ったのに……
振り向くと、兵士は僕の捨てた自動小銃を構えていた。
引き金は、完全に引いている。
「弾の残っている銃を、捨てるとでも思っていたのか?」
「うわわ!」
兵士は銃を捨て、剣を抜いて向かってきた。
「ブースト」
僕の放ったパンチは、兜ごと兵士の頭を打ち砕いた。
殺しへの抵抗が無くなってきたと思ったけど、いざやってみると、やはり嫌なものだ。
ドローンで狙撃していた時は、まだどこかゲームのような感覚でいた。
だが、今度は違う。
自分の手で、生きてる人間の頭を砕いたのだ。
ドローン越しにやった事とは、まるで感覚が違う。
帝国兵が神にすがりたくなる気持ちも、少しは分かるような気がしてきた。
神のためにやった事と思えば、どれほど気が楽になるか。
『ご主人様。聞こえますか?』
通信機から響くPちゃんの声で我に返った。
「聞こえる。どうした?」
『どうしたじゃないですよ。敵を倒してから、一分近く何もしないで立ち止まっていたのですよ。戦場で茫然としていたら命取りになります』
「そ……そうか」
『大丈夫ですか? これ以上、戦えないようなら引き返してください』
「大丈夫だよ。祈っていただけだ」
『祈り?』
「五人も人を殺したんだ。供養してやらないと」
『そういう事でしたか』
いや、嘘だけど……
でも、供養はしておいた方がいいな。
五人を殺したのは僕の判断。
その責任を、神に押し付ける気はない。
それでも、魂の救済を祈れば少しは気が楽になるかもしれない。
本来なら、穴を掘って埋めてやるべきだが、今はそんな時間がない。
とりあえず、死体を一列に並べて、手を合わせた。
もはや、なんの感情も沸いてこない。
ただ、汚らしい害虫をつぶすのような気分で、僕は引き金を引いた。
一人の兵士が吹っ飛ぶ。
「おのれ!」
もう一人の兵士が、抜刀して切りかかってきた。
数歩も行かないうちに、兵士は銃撃でズタズタになる。
「うわわわ!」
最後の一人は、腰を抜かして地面にへたり込んでいた。
「た……助けてくれ」
今更、命乞い?
「お願いだ! 殺さないでくれ」
「ナーモ族も、そう言っていたはずだ」
「……」
「君は、命乞いをするナーモ族に何をした?」
「こ……殺した」
「命乞いする者を冷酷に殺しておいて、自分の命乞いは聞いてもらえるとでも思っているのか?」
「命令だったんだ。仕方なかったんだ。頼む。俺は……死にたくない……」
見苦しい……
「だめだ。僕はナーモ族を助けたい。君らが虐殺をやめて、今すぐ国へ帰って、ここへは二度と来ないならいいけど、できないだろ? だったら、君たちを皆殺しにするしかないじゃないか」
「許してくれ」
「許されると思っているのか? 平和に暮らしているナーモ族の土地に、一方的に攻め込んだのはお前たちだ。そんな事をした以上、逆襲されて殺される覚悟はしていただろ?」
「逆襲されるなんて、思ってなかった」
「それは、お前がバカなだけだ」
「悪かった。ナーモ族は、もう殺さない」
「それを僕に信じろと? それに虐殺は、軍の命令だろ? 逆らえないだろ?」
「今から、軍隊を脱走する」
「神に逆らう事に、なるんじゃないのかい?」
「神など知るか! あんたは知らないだろうけどな、嘘でも神を信仰しているふりをしないと、帝国では生きていけないんだよ」
なんだ。みんなが、みんな狂信者というわけじゃなかったのか……
「だから、お願いだ。助けてくれ」
「ふん」
僕は銃を道端に捨てた。
そのまま、兵士に背を向けて歩き出す。
十歩も行かないうちに、背後でカチャリという音がした。
やはり、やったか。
やらなければ、見逃そうかとも思ったのに……
振り向くと、兵士は僕の捨てた自動小銃を構えていた。
引き金は、完全に引いている。
「弾の残っている銃を、捨てるとでも思っていたのか?」
「うわわ!」
兵士は銃を捨て、剣を抜いて向かってきた。
「ブースト」
僕の放ったパンチは、兜ごと兵士の頭を打ち砕いた。
殺しへの抵抗が無くなってきたと思ったけど、いざやってみると、やはり嫌なものだ。
ドローンで狙撃していた時は、まだどこかゲームのような感覚でいた。
だが、今度は違う。
自分の手で、生きてる人間の頭を砕いたのだ。
ドローン越しにやった事とは、まるで感覚が違う。
帝国兵が神にすがりたくなる気持ちも、少しは分かるような気がしてきた。
神のためにやった事と思えば、どれほど気が楽になるか。
『ご主人様。聞こえますか?』
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「聞こえる。どうした?」
『どうしたじゃないですよ。敵を倒してから、一分近く何もしないで立ち止まっていたのですよ。戦場で茫然としていたら命取りになります』
「そ……そうか」
『大丈夫ですか? これ以上、戦えないようなら引き返してください』
「大丈夫だよ。祈っていただけだ」
『祈り?』
「五人も人を殺したんだ。供養してやらないと」
『そういう事でしたか』
いや、嘘だけど……
でも、供養はしておいた方がいいな。
五人を殺したのは僕の判断。
その責任を、神に押し付ける気はない。
それでも、魂の救済を祈れば少しは気が楽になるかもしれない。
本来なら、穴を掘って埋めてやるべきだが、今はそんな時間がない。
とりあえず、死体を一列に並べて、手を合わせた。
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