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第十六章

変装

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 僕と芽依ちゃんを収容すると、《水龍》は潜行を開始して《海龍》との合流ポイントに向かった。

 レムから聞いたあの話……オリジナル体の芽依ちゃんと夫婦だったという話は、当分の間は秘密にしようと《水龍》に戻る前に芽依ちゃんと打ち合わせておいてある。

 しかし、後ろめたいな。

 その前に、次の作戦の仕込みをしておかないと……
 
 発令所に入ると、僕はレイホーに向かって親指を立てて合図した。

 ミーチャの視線に入らないようにして……

 レイホーは僕の合図を見て、あらかじめ打ち合わせておいた話を始める。

「ところで、おにいさん。地下施設には、雷神女がやはり待っているんだよね?」

 棒読みにならないかと心配していたが、レイホーはよどみなく台詞せりふを言い切った。

 上手うまいものだな。これならレイホーは、声優だってできるんじゃないかな。

 むしろ、僕の方が棒読みにならないか心配だ。

「ああ。レムはNo.3だと言っていた」
「やはりミクちゃんに、地下施設に行ってもらうしかないね。ミクちゃんを守る方法は、考えてあるの?」
「もちろん、考えてある。身代わりアンドロイドだけでは不安なので、ミク本人はミーチャに変装させる事にした」

 もちろん、ここでこの話をしたのは、ミーチャを通じてレムに聞かせるのが目的。ちなみに芽依ちゃんは『私なら絶対に棒読みになります』と言って、この場では黙り通すことにしていたのだ。

「なるほど。ミーチャなら、ミクちゃんと背丈も同じだし、カツラをかぶってカラコンで目の色変えればだませるね」

 ちらっと、ミーチャの方に目を走らせた。

 ミーチャは興味深げに聞いているが、自分がレムのスパイをさせられているなんて気が付いていないのだろうな。

 実際には、ミクに変装なんかさせない。

 この前アーテミスで作ったミクのアンドロイドをミーチャに変装させて、それでレムを騙すのだ。 

「あのう、カイトさん」

 ミーチャがオズオズと発言する。

「どうした? ミーチャ」
「ミクさんが、僕に変装するなんて無理ですよ」
「なんで?」
「ミクさんは女の子ですよ。胸のふくらみで、女だとばれます」
「え? 胸の膨らみ? そんなのあったっけ?」
「ありますよ! そんなこと聞いたら、ミクさん怒りますよ」
「いや、まったく無いとは言わないが、ミクの胸なら誤差の範囲内だろ」
「それはカイトさんが、巨乳好きだからです。僕が見たら、一発で女だと分かります」

 ううむ、実際のところ胸の膨らみを隠そうと思えば、体形のバレない服を着るとかサラシを巻くとかいくらでも方法はあるのだが、ミク本人に変装はさせないし、ミクのアンドロイドを変装させてレムに拉致させるのが目的だったのだから、見破られても問題は無い。

 むしろ、変装を見破ってもらわないと困るのだ。

 まあ、見破るも何も、ミーチャを通じて情報を流すのだから、それは問題ないのだが……

「大丈夫だよ。ミーチャ。そんなのいくらでも誤魔化ごまかしがきくから」
「そうでしょうか? もっと安全な方法はないのでしょうか?」
「安全な方法って、どんな?」
「ええっと、例えば装甲車のような乗り物にミクさんを乗せて、それで地下へ入っていくというのはどうでしょうか?」

 ギク! 実はそれに近い方法を考えていたのだ。

 ミクを変装させるというのは、本来の作戦をレムにさとらせないためのフェイク。

 しかし、本来やろうとしていた作戦をミーチャが提案してしまった。
 
 その情報は、プシトロンパルスによってレムに知られてしまったはずだ。

 ここでミーチャを納得させられないまま、その提案を却下したら、レムから怪しまれる。

 仕方ない。

「実際の上陸作戦は明日になるだろうから、もう少しプランを練り直す事にしよう」

 とりあえず、問題は後回し。

 《海龍》と合流したのは、それからしばらく経ってからの事だった。 
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