637 / 848
第十六章
レムとの出会い
しおりを挟む
男の背後では、カプセルの蓋が開いていた。
あの中から出てきたのだろうか?
という事は、彼が矢納さんの言っていたキールという男?
それにしても、どっかで見たような顔だな。
年の頃は十代後半ぐらい。ベレー帽を被り整った顔立ちをした帝国人の少年。会った覚えはないのだが……誰かに似ているような気がする。
それより、さっき『情報の安売りはしませんよ』って、日本語で言っていなかったか?
「キールというのは君か?」
帝国語に翻訳された僕の言葉を聞き、少年は少し困惑気味の表情を浮かべてから返事をした。
「そうです」
やはり、日本語!
翻訳ディバイスを確認したが、作動していない。この機械は日本語以外の言葉を感知したら、直ちに日本語に翻訳するようにセットしてあるのだが、それが作動しないという事は、彼は日本語を話しているということになる。
「私はキールです。と、言えなくもないけど、違います」
「どっちなんだ?」
「この肉体の持ち主は確かにキール・ブラギンスキーという少年ですが、今この少年の身体を通して、あなたたちと話をしているのは別人です」
「では、誰なんだ?」
「聞かなくても、大方の予想はつくでしょう。この惑星で、他人の身体を操るような奴なんて、私しかいないのだから」
なるほど。ジジイの話では、レムは日本に留学経験がある。日本語を知っていてもおかしくない。
「レム神か?」
「その通り」
そうか!
この少年、誰かに似ていると思ったら、ミーチャに似ているんだ。
ミーチャが数年経つと、こんな顔になりそうだな。
という事は、この少年もミーチャと同じくレムのクローン!
「レム・ベルキナが日本に留学経験がある事は知っている。しかし、そのキールという少年に日本語は話せるのか?」
「キールに日本語は話せませんよ。私が遠隔操作で話をしているのです」
「プシトロンパルスで、そんな事までできるのか?」
「ええ。一応キールの脳に日本語の知識を入力する事は可能ですが、時間がかかりますので」
「そうか。それでは聞くが、なぜ、矢納さんを殺した?」
「やだな。前に、成瀬真須美を通して言ったじゃないですか。私はこの男を粛正したいって」
「だったら、自分の手でやればいいだろう。なぜワザワザ僕にやらせようとする?」
「いや、たった今自分の手で殺しましたよ」
「背後から矢で射抜いたな。矢納さんには誰がやったか、分からない。たぶん、僕がやったと思っているだろうな」
「矢納がそう思ってくれると、私は本当に助かります」
「僕は迷惑なのだが。ますますあの人に恨まれるだろうし」
「だってね。私もあの人から恨まれたくないのですよ。三人目の矢納が、どこかに隠れてしまっているので。私がやったと発覚したら、報復される恐れがありますので」
やはり、そうか。
「あんたが、そこまでして矢納さんを殺したい理由はなんだ?」
「理由は二つあります」
二つ?
あの中から出てきたのだろうか?
という事は、彼が矢納さんの言っていたキールという男?
それにしても、どっかで見たような顔だな。
年の頃は十代後半ぐらい。ベレー帽を被り整った顔立ちをした帝国人の少年。会った覚えはないのだが……誰かに似ているような気がする。
それより、さっき『情報の安売りはしませんよ』って、日本語で言っていなかったか?
「キールというのは君か?」
帝国語に翻訳された僕の言葉を聞き、少年は少し困惑気味の表情を浮かべてから返事をした。
「そうです」
やはり、日本語!
翻訳ディバイスを確認したが、作動していない。この機械は日本語以外の言葉を感知したら、直ちに日本語に翻訳するようにセットしてあるのだが、それが作動しないという事は、彼は日本語を話しているということになる。
「私はキールです。と、言えなくもないけど、違います」
「どっちなんだ?」
「この肉体の持ち主は確かにキール・ブラギンスキーという少年ですが、今この少年の身体を通して、あなたたちと話をしているのは別人です」
「では、誰なんだ?」
「聞かなくても、大方の予想はつくでしょう。この惑星で、他人の身体を操るような奴なんて、私しかいないのだから」
なるほど。ジジイの話では、レムは日本に留学経験がある。日本語を知っていてもおかしくない。
「レム神か?」
「その通り」
そうか!
この少年、誰かに似ていると思ったら、ミーチャに似ているんだ。
ミーチャが数年経つと、こんな顔になりそうだな。
という事は、この少年もミーチャと同じくレムのクローン!
「レム・ベルキナが日本に留学経験がある事は知っている。しかし、そのキールという少年に日本語は話せるのか?」
「キールに日本語は話せませんよ。私が遠隔操作で話をしているのです」
「プシトロンパルスで、そんな事までできるのか?」
「ええ。一応キールの脳に日本語の知識を入力する事は可能ですが、時間がかかりますので」
「そうか。それでは聞くが、なぜ、矢納さんを殺した?」
「やだな。前に、成瀬真須美を通して言ったじゃないですか。私はこの男を粛正したいって」
「だったら、自分の手でやればいいだろう。なぜワザワザ僕にやらせようとする?」
「いや、たった今自分の手で殺しましたよ」
「背後から矢で射抜いたな。矢納さんには誰がやったか、分からない。たぶん、僕がやったと思っているだろうな」
「矢納がそう思ってくれると、私は本当に助かります」
「僕は迷惑なのだが。ますますあの人に恨まれるだろうし」
「だってね。私もあの人から恨まれたくないのですよ。三人目の矢納が、どこかに隠れてしまっているので。私がやったと発覚したら、報復される恐れがありますので」
やはり、そうか。
「あんたが、そこまでして矢納さんを殺したい理由はなんだ?」
「理由は二つあります」
二つ?
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
マスターブルー~完全版~
しんたろう
SF
この作品はエースコンバットシリーズをベースに作った作品です。
お試し小説投稿で人気のあった作品のリメイク版です。
ウスティオ内戦を時代背景に弟はジャーナリストと教育者として、
兄は軍人として、政府軍で父を墜とした黄色の13を追う兄。そしてウスティオ
の内戦を機にウスティオの独立とベルカ侵攻軍とジャーナリストとして、
反政府軍として戦う事を誓う弟。内戦により国境を分けた兄弟の生き方と
空の戦闘機乗り達の人間模様を描く。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

宮様だって戦国時代に爪痕残すでおじゃるーー嘘です、おじゃるなんて恥ずかしくて言えませんーー
羊の皮を被った仔羊
SF
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
時は1521年正月。
後奈良天皇の正室の第二皇子として逆行転生した主人公。
お荷物と化した朝廷を血統を武器に、自立した朝廷へと再建を目指す物語です。
逆行転生・戦国時代物のテンプレを踏襲しますが、知識チートの知識内容についてはいちいちせつめいはしません。
ごくごく浅い知識で書いてるので、この作品に致命的な間違いがありましたらご指摘下さい。
また、平均すると1話が1000文字程度です。何話かまとめて読んで頂くのも良いかと思います。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

平和国家異世界へ―日本の受難―
あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。
それから数年後の2035年、8月。
日本は異世界に転移した。
帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。
総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる――
何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。
質問などは感想に書いていただけると、返信します。
毎日投稿します。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる