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第十六章

レムとの出会い

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 男の背後では、カプセルのふたが開いていた。

 あの中から出てきたのだろうか?

 という事は、彼が矢納さんの言っていたキールという男?

 それにしても、どっかで見たような顔だな。

 年の頃は十代後半ぐらい。ベレー帽を被り整った顔立ちをした帝国人の少年。会った覚えはないのだが……誰かに似ているような気がする。

 それより、さっき『情報の安売りはしませんよ』って、日本語で言っていなかったか?

「キールというのは君か?」

 帝国語に翻訳された僕の言葉を聞き、少年は少し困惑気味の表情を浮かべてから返事をした。

「そうです」

 やはり、日本語!

 翻訳ディバイスを確認したが、作動していない。この機械は日本語以外の言葉を感知したら、直ちに日本語に翻訳するようにセットしてあるのだが、それが作動しないという事は、彼は日本語を話しているということになる。

「私はキールです。と、言えなくもないけど、違います」
「どっちなんだ?」
「この肉体の持ち主は確かにキール・ブラギンスキーという少年ですが、今この少年の身体を通して、あなたたちと話をしているのは別人です」
「では、誰なんだ?」
「聞かなくても、大方の予想はつくでしょう。この惑星で、他人の身体を操るような奴なんて、私しかいないのだから」

 なるほど。ジジイの話では、レムは日本に留学経験がある。日本語を知っていてもおかしくない。

「レム神か?」
「その通り」

 そうか!

 この少年、誰かに似ていると思ったら、ミーチャに似ているんだ。

 ミーチャが数年経つと、こんな顔になりそうだな。

 という事は、この少年もミーチャと同じくレムのクローン!

「レム・ベルキナが日本に留学経験がある事は知っている。しかし、そのキールという少年に日本語は話せるのか?」
「キールに日本語は話せませんよ。私が遠隔操作で話をしているのです」
「プシトロンパルスで、そんな事までできるのか?」
「ええ。一応キールの脳に日本語の知識を入力する事は可能ですが、時間がかかりますので」
「そうか。それでは聞くが、なぜ、矢納さんを殺した?」
「やだな。前に、成瀬真須美を通して言ったじゃないですか。私はこの男を粛正したいって」
「だったら、自分の手でやればいいだろう。なぜワザワザ僕にやらせようとする?」
「いや、たった今自分の手で殺しましたよ」
「背後から矢で射抜いたな。矢納さんには誰がやったか、分からない。たぶん、僕がやったと思っているだろうな」
「矢納がそう思ってくれると、私は本当に助かります」
「僕は迷惑なのだが。ますますあの人に恨まれるだろうし」
「だってね。私もあの人から恨まれたくないのですよ。三人目の矢納が、どこかに隠れてしまっているので。私がやったと発覚したら、報復される恐れがありますので」

 やはり、そうか。

「あんたが、そこまでして矢納さんを殺したい理由はなんだ?」
「理由は二つあります」

 二つ?
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