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第十六章

フライング・トラクターを撃破せよ2

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 作戦中は電波通信を止めているので、《海龍》の戦闘状況が分からないのが辛い。

 ドローンが全滅して《海龍》本体が攻撃されていないか? フライング・トラクターがさっきの位置に、今でもいるかどうか?

 いろんな不安が脳裏を過ぎる。

「北村さん。まもなくです」

 芽依ちゃんの声で我に返った。

 目の前に岸壁がある。

 さっきまで、その向こうの湖から誘導波が発信されていた。

 今も発信されているか、《水龍》から情報が送られてこない今では確認のしようがない。

 はたして岸壁の向こうに、フライング・トラクターは……

 いた!

 湖面上、数メートルにトラクターが浮遊している。
  
 あの中で矢納さんがフーファイターを操っているのか。

「北村さん! レーダー波です!」

 当然だ。こっちが敵を見つけたという事は、むこうもこっちを見つけたはず。

 早く攻撃しないと、奇襲効果を生かせない。

 僕と芽依ちゃんはロケットランチャーを構えた。

ー!」

 ランチャーから放たれた91式地対空誘導弾は、まっすぐトラクターへ向かっていく。

 フライング・トラクターはそれに対して、急上昇して避けようとするがミサイルもそれを追って上昇する。

 だが、逃げ切れなかった。

 トラクターは爆炎に包まれ、無数の破片を湖面にまき散らす。

 もう、通信をしても平気だな。

「こちら海斗。《水龍》応答せよ」

 レイホーの声で返事が返ってくる。

『こちら《水龍》。どうぞ』
「フライング・トラクターを撃破した。フーファイターの動きは?」
『《海龍》からの情報伝えるね。フーファイターは活動を停止。自立モードで、ベイス島に戻っていったね』
「《海龍》の被害状況は?」
『飛行船二機が撃墜されただけね。後はみんな無事』
「了解。これより、帰還する」
『待っているね』

 通信機を切ったその時、芽依ちゃんが叫ぶ。

「北村さん! あれを!」

 ん?

 芽依ちゃんの指さす先に視線を向けた。

 湖面上をモーターボートが航行している。

 フライング・トラクターにばかりに気を取られて気がつかなかったけど……

「芽依ちゃん。臨検しよう。どう見ても怪しい」
「はい」

 一応、《水龍》の方には怪しい船を発見した旨を伝えてから、僕たちはモーターボートへと向かった。
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