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第十六章

実はいるんだな

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 実はいるんだな。これが……

 残念なことに、ドローンからの情報は、リアルタイムでは伝わってこないが……

 ベイス島に残してきたナージャが、ドローンを使って集めてくれた情報は、定期的に《海龍》に送られてきていた。

 ほとんどは、無駄な情報だったが、今回はたまたまドローンが兵士たちの愚痴ぐちを拾ってしまったわけだ。

 おかげで矢納さんの状況が掴めた。

 さっそく、衛星写真を拡大して兵士たちと遭遇した辺りを拡大。

 ほどなくして、森の中の広場に着陸しているフライング・トラクターを発見した。

 ただし、その映像は十二時間前のもの。

 偵察衛星がもう一度北ベイス島上空を通った時には、フライング・トラクターはすでに移動した後だった。

 まあいいさ。

 フライング・トラクターが、北ベイス島の森に潜んでいる事は確認できた。

 後は最初の予定通り、ナージャにフーファイターの誘導波を探知してもらえばいい。

「おにいさん。《水龍》所定の位置に着いたね」
「了解。レイホー」

 今、僕は九九式を装着したまま《水龍》の中にいた。

 僕の他に《水龍》にいるのは、やはり九九式を装着した芽依ちゃんと、《水龍》艦長レイホー。

 そしてキラとミーチャ。

 入れ替わりに、エラとカミラには《海龍》へ移ってもらった。

 表向きの理由は、《海龍》での作戦にエラの能力が必要になるという事。そして、エラと同じ船にいるのは、ミーチャとキラが可哀想という理由で《水龍》に移した。
 
 本当の理由は《海龍》でやっている事を、ミーチャを通じてレムに知られないため。

 では、《水龍》内部の動きを、レムに知られることはどうなのか? というと、こっちの方は問題ない。

 レムは、矢納さんを粛正するつもりでいる。

 ただし、僕との戦闘で死ぬという状況を作りたがっていた。

 だから、矢納さんと戦うならその状況をレムに分かるようにしておいた方が、都合がいい。

 僕は有線でつながっている《海龍》を呼び出した。

 アーニャが通信に出る。

「アーニャさん。作戦を開始する前に若干の修正をお願いします」
『何を修正するの?』
「フーファイターには、なるべく多くのレーザーを撃たせて下さい。重力制御を使わせるのもいい。フーファイターは反物質を燃料にしています。これが満タンのまま爆発したら大災害になる。撃墜する前に、反物質を少しでも多く消費させて欲しいのです」
『難しい注文ね。分かったわ。努力する』

 ちなみに今言ったことは『若干の修正』でもなんでもなく、最初から予定していた事。

 それをなぜワザワザここで言ったかというと、ミーチャを通じてレムに聞かせるのが目的。

 これを聞いたレムは……

レム「うむ。確かにこのままフーファイターが爆発しては、ベイス島にも被害が出てしまう。矢納には、なるべく無駄に動き回るように指示しろ」
部下「ははあ。レム様。仰せの通りに……」

 という事に、なっているだろう。

 そうこうしている間に《水龍》は内海の海底に着底した。

 レイホーが、みんなの方を振り向く。

「じゃあ、みんな、作戦開始まで大きな音は立てないようにね」

 そこでレイホーはニヤリとして……

「ああ、でもオナラぐらいなら……」
「おトイレでやりましょうね」

 すかさず芽依ちゃんはレイホーのセリフを遮る。

「芽依ちゃん。耐性できたね」
「レイホーさん。私だって成長します」

 だが……

「馬鹿な事を言うな! こんな可愛いミーチャが、そんな下品な事をするわけないだろう」

 あかん! キラにはまだ耐性がついてなかった。

 おっと! それどころじゃないな。《海龍》の方で戦いが始まったぞ。
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