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第四章

アンドロイドでも死んだら悲しい

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 小中学生の頃、よく幼馴染の香子の家へ行き、勉強会をやったりした。
 中二の期末試験前にも、いつも通り勉強会をやったのだが、その途中、香子が突然『アニメが見たい』と言い出した。そんなの、録画して後で見ればいいと言ったのだが、香子はどうしても今見たいというのだ。
 なんというアニメだったか覚えていない。ただ、エンディングで元素記号を覚える歌が流れていたような記憶がある。
 アニメが終わった時、香子は号泣した。
 何がそんなに悲しいのか? と聞いてみた。
 アニメの中で、アンドロイドが死んだというのだ。
 アニメやドラマの登場人物が死んで、涙を流す事は僕だってある。
 しかし、アンドロイドなんて所詮ロボットじゃないか。作り物じゃないか。
 なんでそんなに悲しいんだ?
 と、口には出さなかったけど、その時、僕はそう思っていた。

 だけど、今なら分かる。
 アンドロイドでも、死んだら悲しいという事が……

「カイトさん。それは、いったい……」
 ミールは、僕の持っているPちゃんのアンテナを指差した。
「まさか、村へ行ったお仲間さんの……」
 僕は、コクリと頷く。
「えええ!」
 アンテナだけが戻ってきたというだけで、死んだとは限らない。
 でも、ロットがこれを持ってきたという事は、ただ事ではないはずだ。
 エシャーとPちゃんの身に、何かがあったに違いない。
 そして、自分でも驚くほど、僕は動揺していた。
 自分がコピーであると知らされた時でさえ、こんなに動揺はしなかったのに……
 Pちゃんとエシャーを失ったかもしれないと思うだけで、胸が張り裂けそうな気分だ。
 この惑星に来てから、Pちゃんはずっと僕のそばにいてくれた。
 頓珍漢な事をしたり、人の神経逆なでするような事言ったり、役に立たないロボットだななんて思ったこともあるけど、いなくなったらこれほど辛いなんて想像もしていなかった。
 エシャーは翼竜だけど、この惑星でできた唯一の友達。優しくて思いやりがあって頑張り屋で、人間にだってこんないい奴は滅多にいない。
「ミール。教えてくれ。村で何があった?」
「昨夜、帝国軍の夜襲を受けたのです。多くの建物は火をかけられ、人も大勢殺されました。その後、逃げるのに精いっぱいで、村がその後、どうなったかは分からないのです」
「そうか」
 ロットが僕に、すり寄ってきた。
「ピー」
「お前も、お姉ちゃんが心配なんだな」
 僕は、ロットの頭を優しく撫でる。
「ごめんなさい」
 突然、ミールが謝ってきた。
「なんで謝るの?」
「村が襲撃されたのは、あたしのせいなんです」
 それからミールは、事情を話してくれた。
 この近くには、ナーモ族の王国が五つあった。
 その五つの国が連合して、北から攻めてくる帝国軍に立ち向かったのだ。
 しかし、帝国軍の武器は強力で、ナーモ族の城は次々と落とされていった。
 それでも何とか持ちこたえていたのは、ミールたち魔法使いがいたからだ。
 しかし、強力な魔法を使うのに必要な魔力の源が尽き、ついに連合軍は敗れてしまった。
 ミールは故郷の村に落ち延びていたのだが、帝国軍に居場所を突き止められ、昨夜襲撃されたのだ。
「それは、ミールが悪いんじゃない」
「でも……」
「諸悪の根源は、帝国軍だ。自分が悪いなんて思っちゃいけないよ」
 イジメはイジメる奴が悪い。侵略は侵略する奴が悪いに決まっている。
 だから、ミールは何も悪くない。
 それに、今は誰が悪いとか言ってる場合じゃない。
 Pちゃんとエシャーに何かあったのなら、助けに行かないと。
 そのためには、村の情報がほしい。
「あの、カイトさん。村が今どうなっているか、あいつらなら知っているのでは……」
 ミールの指し示す先を見た。
「なるほど」
 そういえば、諸悪の根源どもはここにもいたんだな。
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