上 下
60 / 842
第四章

Pちゃんのアンテナ?

しおりを挟む
 兜を被っていた時は顔がよく見えなかったが、こうしてよく見ると帝国軍兵士ってやはり地球人だな。人種は欧米人ばかりのようだが……
 だとすると、コピー人間?
 じゃあなんで、こんな骨董品みたいな武器ばかり持っていたんだろう?
 倒れている兵士の一人の傍に落ちているスマホのような物を拾ってみた。
 やはりスマホだ。
 こんな物を持っているのに、なぜ武器がこんな骨董品ばかりなんだ?
 武器なんて、いくらでもプリンターで……!?
 そういえばPちゃんは、マテリアルカートリッジは貴重品だと言っていた。
 軍隊に支給する武器なんか作っていたら、たちまちなくなってしまう。 
 だから、武器は現地で作ってたってことかな?
「あの、それも、もらっていいですか?」
 ミールの分身が手を出していた。
「ああ、いいよ」
 彼女にスマホを渡した。
 この惑星の人に、スマホを上げても猫に小判だけどね。

「参考までに、聞いておきたいんだが」
 僕はトレーラーの屋根に上って本物のミールに話しかけた。
「いったい、同時にいくつ分身を出せるんだい?」
「最大で十二です」
 トレーラーの下では八人のミールズが、せっせと身ぐるみ剥がし作業をやっていた。
 あ! 下着に縫いこんであった金貨まで剥がしている。
 容赦ないなあ……
 下着一枚になった兵士は、一人ずつ木に縛りつけられていた。 
「それで、損害分の取り立てはできそうかい?」
「全然足りませんね」
 ミールは鎧や兜を丹念に調べながら言った。
「ところで、あなたのお名前を、まだ聞いていなかったのですが」
「ああ! そうだったね。僕は北村海斗。カイトと呼んでくれ」
「カイト!?」
 突然、ミールは作業を中断して振り返った。
「それじゃあ、ベジドラゴン達が噂している、塩湖に降りてきた地球人て、あなたですか?」
「え? 僕の事、噂になってたの?」
「ベジドラゴン達は、あなたを英雄だと言っています」
「え? そうなの? 照れるな」
「何でも、レッドドラゴン数千頭を瞬殺したとか」
「それは嘘だ」
 こらこら、ベジドラゴン達よ。フェイクニュースを流すんじゃない。
「嘘だったのですか? 変だと思いました。最近、レッドドラゴンて、数が減っているし、そんなに沢山いるはずはないとは思っていたのですが……」
「数が、減ってたの?」
 やべ、ひょっとして、絶滅危惧種を殺しちゃったのかな?
「僕が殺したのは、一頭だけだよ」
「一頭でも、殺したのは事実ですね? じゃあ魔力の源は持っていますか?」
「魔力の源? いやそんなものは知らないけど……」
「レッドドラゴンの肝臓です。持っていませんか?」
 あ! ひょっとして。
「ベジドラゴンの子供に聞いたんだけど、レッドドラゴンの肝臓を買い取りたいと言ってるナーモ族って君の事?」
「ああ! それたぶん、あたしです。さっきも言った通り、隠し場所にお金があります。それを取ってきて支払いますので、売ってもらえませんか?」
「まいったなあ。入れ違いになっちゃったよ」
「入れ違い?」
「ああ。その話を聞いて、ベジドラゴンの子供に、僕の仲間と一緒に肝臓を持って村へ行ってもらったんだ」
「え? 村へ……行っちゃった?」
 あれ? ミールの顔が蒼白になっていく。
「何か、まずかったかな?」
「あわわわ……ど……ど……どうしましょう? 大変な事に」
「ん?」
 バサバサバサ。
 頭上から羽音が聞こえてきた。
 見上げるとロットが降りてくるところだった。
「ロット。どうしたんだ? エシャーはどうした?」
 ロットは僕の足もとに降りて、何か白い棒状の物体を吐き出した。
「ピー!」
 ロットは、かん高い鳴き声を上げて僕を見上げる。
 棒を拾い上げてみた。
 リレーのバトンぐらいの大きさだが……これは!?
 Pちゃんの頭に着いてたアンテナ!
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

終末の運命に抗う者達

ブレイブ
SF
人類のほとんどは突然現れた地球外生命体アースによって、消滅し、地球の人口は数百人になってしまった、だが、希望はあり、地球外生命体に抗う為に、最終兵器。ドゥームズギアを扱う少年少女が居た

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

アンチ・ラプラス

朝田勝
SF
確率を操る力「アンチ・ラプラス」に目覚めた青年・反町蒼佑。普段は平凡な気象観測士として働く彼だが、ある日、極端に低い確率の奇跡や偶然を意図的に引き起こす力を得る。しかし、その力の代償は大きく、現実に「歪み」を生じさせる危険なものだった。暴走する力、迫る脅威、巻き込まれる仲間たち――。自分の力の重さに苦悩しながらも、蒼佑は「確率の奇跡」を操り、己の道を切り開こうとする。日常と非日常が交錯する、確率操作サスペンス・アクション開幕!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...