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第四章

損害賠償?

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 残時間 200秒

 ミールから離れすぎたな。
 騎兵の足を掴んだまま、僕は元来た方向へ全速で引き返していた。
「@.!!?-~ぎゃー!!!」
 地面を引きずっている騎兵が意味不明の言葉を叫んでいるが、今は気にしている暇はない。いや、翻訳ディバイスを使えば何を言ってるかわかるのだけど、聞くと精神衛生上よろしくない事が聞こえそうなので 日本語⇔ナーモ語 に設定を切り替えてある。
 なあに、死にはしないよ。たぶん……
 しばらく走っているうちに、騎兵は静かになった。
 気を失ったかな?
 ようやく、車を止めてある広場に戻った。
「ミール! 大丈夫……か……?」
 その光景を見て、僕は唖然とした。
 倒れていた騎兵達の、ほとんどが半裸になっているのだ。
 何があったんだ?
 奴らが着けていた鎧兜はどこだ?
 あった。
 トレーラーの上に、積み上げてある。
 トレーラーの前では、ミールが騎兵から鎧兜を引っ剥がしている最中だった。
「ミール」
 僕に声をかけられて、ミールはビクッと猫耳を震わせた。
「お早いお帰りで」
 ぎこちない笑顔を浮かべる。
「何を……しているんだ?」
「なにって……身ぐるみを、剥いでいるところですが……ああ! 大丈夫です。全員ちゃんと、魔法で眠らせてありますから……」
 ううむ……なんとリアクションすべきか……
「あああ! あたしの事、追い剥ぎか何かのように思っているでしょ!」
 うん。思ってる。
「ち……違いますよ。これは、損害賠償の取り立てですからね」
「損害賠償?」
「そうですよ。こいつらのせいで、あたしも、あたしの仲間たちも、大きな被害を受けたんです。人だって、大勢殺されたんですよ。正直こんなガラクタじゃ、全然足りません」
 なるほど。
 しかし、そういう事は本来、裁判を経てやるべきだが……
「ミール」
「なんですか?」
 僕は引きずってきた騎兵を、ミールの方に投げた。
「一人追加」
 まあ、ここは地球じゃなし、いいか。
「そうこなくっちゃ!」
 ミールは、嬉々として騎兵から金目の物を物色し始めた。
「こいつらを眠らせたって言ったけど、そんな魔法持っているのかい?」
 ファンタジー小説ではありがちな魔法だけど……
「ええ。わりと基本的な魔法ですよ」
「そんな魔法あるなら、言っておいてほしかったな。そうしたら、心配して慌てて戻ってくる事もなかったのに」
「え? 心配してたんですか?」
「そりゃあするだろう。普通」
 ん? ミールどうしたんだろう? 作業の手を止めてしまったけど……
「;@*+~=!」
 ん? 背後から声が……
 振り向くと帝国軍!
 いけね。河原にいた奴らを忘れていた。
 翻訳ディバイスを 日本語⇔帝国語 に。
「こんなところにいたか。ミール」
 十人ほどか。
 しゃーない。こいつらも片付け……

 残時間 20秒

 ヤバ! 充電を忘れてた!
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