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第四章

分身が見破られた

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「う!」
 突然、ミールが胸を押さえて呻いた。
 同時に、ディスプレイの映像が乱れる。
「どうした?」
「分身が撃たれました。奴ら『偽物だ』と言っています」
「気づかれた?」
「そのようです。でも、どうして?」
 タブレットのディスプレイを見ると、河原の石が映っているだけ。
 分身が倒れて、その頭に設置してあったデジカメが落ちたようだ。
 映像を、ドローンカメラに切り替えてみた。
 上空からの映像が現れる。
 河原付近を拡大。
 これは!? 
 河原に横たわっている少女を、数人の兵士が取り囲んでいる。
 問題は、その少女。
 もちろん、これはミールの分身だが……
「これは!?」
 当の本人も驚いている。
 ミールの分身体が消えたり、現れたりしているのだ。
「分身が、消えかけているのかい?」
「いいえ。分身が消えるには、まだ時間がかかりますし、消えるにしてもあんな消え方はしません。今、倒れているのも、実は死んだふりをしているだけで、今でも動かすことはできます」
「それじゃあ、どうして……?」
 まてよ。これと同じものを見たことがある。
 LED電球を、デジカメで見たときだ。
 本来、LED電球は短い間隔で点滅しているのだが、人間の目には残像が見えるので点滅している事に気が付かない。
 ところが、品質の悪いLED電球を、デジカメを通して見ると点滅しているのが見えてしまう。
 もちろん高品質のLED電球はデジカメで見ても点滅は見えない。
 だから、家電製品売り場でLED電球を買うときは、買う前に携帯のカメラを通して見るといい。
 まあ、僕にはもうその機会はないけど……

「ひょっとして、君の分身は、短時間に出現消滅を繰り返しているのではないのかい?」
「なぜ、分かったのですか?」
「やはりね。人間の目には分からないけど、デジカメを通すとそれが見えてしまうんだよ」
「よくわかりませんが、そのデジカメという物で通して見ると、分身がこのように見えるわけですね」
 という事は、奴らの中にデジカメを持っている奴がいる。
 どいつだ?
 ドローンカメラの映像をさらに拡大。
 兵士の手元を一人ずつチェックしていく。
 いた!
 一人、スマホの様なを持っている奴がいる。
 いや、様なじゃなくてスマホなんだろう。
 どこで手に入れたんだろう?
 考えるのは後だ。
「君の魔法で、攻撃はできないの?」
「できないわけではありません。ただ、あの軍団と戦えるだけの力を出すには、魔力の源が必要なのです」
「魔力の源?」
「もう少しで手に入りそうだったのですが、その前に襲撃されまして」
「それじゃあ、しかたないな」
 分身とは言え、女の子にいきなり鉄砲を撃つような輩と話が通じるとは思えない。

「装着」
 ロボットスーツを纏った僕を見て、ミールは目を丸くした。
「変わった鎧ですね」
「鎧とは、ちょっと違うんだけどね」
「まさか、あなた一人であいつらを……? 無茶です。あいつらは恐ろしい武器を持っているのですよ。鉄の筒の先から、火の玉を飛ばして離れた相手を殺す武器です。あれは、盾でも、鎧でも防げません」
「知ってる。僕も持っているから」
 ショットガンを彼女に見せた。
「でも……あなたをこれ以上巻き込むわけには」
「もう、巻き込まれている」
 どのみち、あの連中との遭遇は避けられそうにない。
 ドローンカメラには映っていなかったが、川にいた奴らの他に森の中を移動している赤外線源が多数いる。
 別働隊だろう。
 その中の一つが、真っ直ぐこっちへ向ってきている。
 というか、もう来てしまった。
「ひっ!」
 木々の間から現れた騎兵の姿を見て、ミールの顔は恐怖に歪んだ。
 ん? 騎兵? この惑星に馬なんかいたのか?
 騎兵は、僕らを見ると懐から何かを取り出した。
 スマホ!
 騎兵はスマホでこっちを見ると、何かを叫んだ。
 ロボットスーツ付属の翻訳ディバイスが反応する。
『言語選択を 日本語⇔帝国語 に変更しますか?』
 帝国語? そんな言葉あるのか?
 とりあえず、変更してみた。
「魔法使いがいたぞ!」
 さっき、奴が叫んだ言葉を翻訳するとこうだった。
 ドローンからの映像を見ると、森の中を動き回っていた赤外線源が一斉にこっちへ向ってきている。
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