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第四章

猫耳娘ふんじゃった

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「すみません! 大丈夫ですか?」
 声をかけたが、ピクリとも動かない。
 ひょっとして、仏さん?
 いや、仏さんなら赤外線なんか出すはずない。
 背中に耳を当ててみた。

 トクン トクン トクン

 よかった。心臓は動いている。
 気を失っているだけだな。
 んじゃ、ほっといて水浴びを……いやいや、それは人としてダメだろう。
 身体を揺さぶってみた。
「うーん」 
 気が付いたかな。
「☆▽◆Х!」
 あれ? この人なにを言ってるんだ?
 いや……そもそも、ここは地球じゃないのだから、日本語が通じる方が異常。
 現地人なんだろう。
 とりあえず、気が付いたみたいなので起き上がるのを手伝った。
 フードが、はらりと落ちる。
 中から現れたのは、ショートボブに切り揃えた栗色の髪と、そこからニョッキリ伸びた猫耳。
 ナーモ族!?
 顔を覗きこむ。
 
 か……かわいい!

 猫耳を除けば、顔は地球人と変わらない。ていうか、広瀬すずに似た美少女!
 
 猫耳少女は、実在したんだ!
 
 いかん! 落ち着け。
 
 このままではPちゃんの言うとおり、変態ケモナーになってしまう。

 まずは、意思の疎通を……

 ポーチの中に、そのための装備を入れておいたはず。
 あった!
「翻訳コンニャ……じゃなくて、翻訳ディバイス!」 
 一見、スマホのような機械だが、翻訳機だ。
 ナーモ族の言葉も入っているとPちゃんが言っていた。
 ディバイスの言語選択を 日本語⇔ナーモ語 にセット。
「君、大丈夫かい?」
 ディバイスに話しかけると、意味不明の言葉に翻訳された。
 それに対して、ナーモ族も何か答える。
 ほどなくしてディバイスが翻訳した。
「お腹、空きました」


 この細い体のどこに、こんなに入るんだ? と思うぐらい、彼女は食べまくった。
 エシャーからもらった大判クッキー十枚を瞬く間に平らげ、それでも足りずにレッドドラゴンの串焼きと、昨日、川で捕まえたヒメマスに似た魚の塩焼きに齧り付いてる。
 こうしている今も、串に刺した肉を凹面鏡で炙っているが、どう見ても焼きあがるよりも彼女が食べ終わる方が早そうだ。
 ていうか、すでに食べ終わってこっちへやってくるし……
「ダメだよ。これは、まだ焼けてないから。もう少し待って」
 彼女は、ぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございます。おかげで回復できました」
 礼儀正しい子だな。
「もうお腹いっぱいになったかい。じゃあ、これはもういらないかな?」
「いえ。それも下さい」
 彼女は手を差し出した。
 結局、彼女はその後、肉を十枚、魚三匹をペロリと食べてしまった。
「はあ、やっと落ち着きました」
「満腹になったかい?」
「腹八分目というところですね」
 恐るべし、ナーモ族の食欲……

 ん? ポーチの中から振動が!!
 ポーチの中を探ると、ドローンのコントローラーが振動していた。
 また、いきなり後ろに出てこられたらコワいから、新たな赤外線源が入ってきたら警報が出るようにセットしておいたのだ。
「あの……」
 少女はおずおずと言った。
「ん? お代わりかい?」
「いえ……その……すみません。空腹のあまり、つい、こんなに食べてしまって…… これって、あなたにとっても、大切な食糧なんですよね?」
「ああ! 気にしなくていいよ。大したことじゃないから」
 違うぞ。けっして彼女が美少女だから、太っ腹な事を言ってるんじゃないからな。
 まあ、これが野郎だったら『もっと自重しろ』というかもしれないけど……
「あたし、ミールと申します。今は持ち合わせがありませんが、後で食事代はお支払します」
「いいよ。気を遣わなくて。そもそも、金を取れるような大層な料理じゃなし」
「そういうわけには……」
「それより、君。なんで、あんなところに倒れていたの?」
「はい。悪い人に追いかけられ、一晩中逃げ回っていて、あそこで力尽きてしまったのです」
「悪い人!?」
 コントローラーの画面をミールに見せた。
「それは、ひょっとして、こんな人たちかな?」
 武装した十人ほどの集団が、そこに映っていた。
「そうそう。この人たちです。え?」
 面倒なことになりそうだな。
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