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第四章

誰かが僕の背後にいる?

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 エシャーがPちゃんを乗せて飛び立っていった後、僕はひたすらキーボードを打ち続けていた。
 残りはいくつだ?
 メインモニターに『残り三十三。頑張って反省して下さいね』と表示された。
 
 イラつく。

 こんなに延々と文章書き続けるのは、卒業研究以来だな。
 辛かったが、あれはあれで楽しかった。
 こんな心にもないことを延々と……いやいや……同じことを百枚も書くなんて苦痛でしかない。
 ようやく、最後の一つを書き込むとメインモニターにメッセージが表示された。
『反省文受理しました。モーター機能以外のロックを解除します。お疲れ様でした』
 ふひー! 疲れた!!
『なお、モーター機能のロックは四時間後まで解除されません。酒醒めたら来い』
 エアコンが動き出した。
 この周辺は地球の亜熱帯気候なので、エアコンがないとかなりきつい。
 反省文を打ってる間に、すっかり汗だくになってしまった。
 水浴びしてこよう。
 車を出て、少し歩いたところに清流が流れている。
 川幅は十メートルほどだが、かなり深い。
 さて、誰も見ていないな?
 いるわけないか。地球じゃないし……
 日本で裸になって川で泳いだりなんかしたら、たちまち警官がやってくるところだが……いや、ここは、ここで気をつけないと。
 映画『猿の惑星』の宇宙飛行士たちは、泳いでいる間に服を盗まれてしまったからな。
 ウエストポーチからドローンのコンローラーを出した。
 警戒のために、昨日から飛行船タイプのドローンを飛ばしていたのだ。
 コントローラーのモニターにドローンカメラの映像を出した。
 鬱蒼とした森が映っているだけ。
 念のため赤外線画像を重ねてみた。
 川の近くに赤外線源が一つ。
 これは僕だな。
 ん? よく見ると赤外線源が二つ?
 あまり近すぎて、一つに見えたんだ。
 映像拡大。
 横へ一歩動いてみる。
 映像の赤外線源が同じ様に動く。
 これが僕だとすると、背後一メートルほどのところにいる赤外線源は誰?
 てか、いつの間にこんな近くに?
 
 これって『わたしメリーさん。あなたの後にいるの』とかいうやつ……?

 いやいやいや……怖すぎるだろ……

 とにかく、背後に誰かがいる。
 今のところ、そいつは僕に察知された事には気が付いていない。
 僕は平静を装って、コンローラーをポーチに戻した。
 代わりにピストルを取り出す。
 前へ向かって大きくジャンプ。
 着地と同時に振り返り、ピストルを構える。
「誰だ!!」
 ん? 誰もいない。
 いや、いた。
 地面に人が倒れている。
 フード付きの白い貫頭衣を着ているが、その背中には僕の物と思われる足型が……
 そ……そういえば、さっき何か柔らかい物を踏んだような……
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