50 / 848
第四章
ちょっと一杯
しおりを挟む
「おおお! これは?」
エシャーの籠に入っていたのは、見たこともない果物や野菜、クッキーのような焼菓子。クッキーのような、と言ったが、普通のクッキーよりかなり大きい。
高尾山のお土産物屋で見かけた、大判せんべいぐらいある。
それと、徳利のような形状の壺があった。
壺にはコルクのような栓がしてある。
中に入っていたのは、琥珀色の透き通った液体。
Pちゃんに成分分析してもらったところ、主成分はエタノール……つまり酒だった。
度数は十五。日本酒やワインと同じくらい。
という事は、蒸留酒ではないな。
栓を抜くと、芳醇な香りが漂ってくる。
ちょっと、味見。
うん! いける!
ちょっと一杯……いや、昼間から酒なんて……
でも、仕事があるわけじゃなし、車の運転もしばらくはする必要がないし……
シャトルの不時着地を出発してから、ずっと運転し通しだった。
当初は三百キロ走ったら、二日休むペースのはずだったのだが、出発前にシャトルに予備の水素燃料が残っているのをPちゃんが見つけていた。
それでも、最初はそれには手を付けないつもりだったが、カルルと出会ってから状況が変わった。
僕の命を狙っている奴がいる。ならば、少しでも早く遠くへ逃げた方がいいということになり、予備の水素燃料が無くなるまで、夜通し走り続けたのだ。
塩湖を出て、荒野をしばらく走り続け、ようやく隠れるのによさそうな森が見えてきたのは昨日の事。その時には、水素はほとんど残っていなかった。
ドローンを飛ばしてみたところ、すぐ近くに小さな川があるのが見つかり、そこで水素を補給することにした。
そんなわけで、昨日からずっとここにいる。
ここで、川の水を電気分解して水素を取り出しているわけだが、タンクが満タンになるのは明日の昼ごろになる。
それまでは、ゆっくりできる。
というわけで、もう一杯。
「ご主人様」
ん?
「お野菜、冷蔵庫にしまっておきました。今夜は、御馳走作ってあげますね」
「そ……そうか。楽しみだなあ……」
「ご主人様。私の料理の腕を、疑っていませんか?」
ギク! だってなあ、カロリーメイトにドームカバーを被せて出すような奴の料理に、どう期待しろと……いかん! こいつには、感情があったんだ。傷つけないようにしないと……
「そ……そんな事はないぞ……」
「いいです。料理の腕は、実戦で証明してみせますから。海原○山も、満足する料理を作ってあげますわ」
いや……それはハードル高すぎだろ……
「それとですね。エシャーさんから聞いたのですが、ナーモ族の人がレッドドラゴンの肝臓を欲しがっていたそうですけど、まだ残っていますか?」
「肝臓?」
そういえば、レッドドラゴンの身体を解体した時、肝臓らしき臓器と、心臓らしき臓器を切り取ってフリーザーバッグに小分けして冷凍庫にしまっておいたな。
まだ食べてないけど……
「まだ、手を付けてなかったよ」
「その人は、すぐに持ってきてくれたら高く買い取ると言っているそうですけど、どうします?」
「高くって? ナーモ族は、貨幣を持ってるの?」
「金貨や銀貨、銅貨が流通しています」
だとすると、もっと酒が買える。
「ナーモ族の村って近いの?」
「ここから、十キロぐらいだそうです」
「よし行こう」
充電は、一度中断することにした。
荷物を片付けて、出発準備が整ったのは三十分後。
エシャーが、道案内してくれると言って車の前に待機している。
さっき、少し酒を飲んだが、まあこのぐらいなら大丈夫だろ。
ここは地球じゃないし、道路交通法はない。
僕は運転席に着いてスタートボタンを押した。
メインモニターに『システム起動中』と表示される。
突然、車内に警報が鳴り響いた。
どうしたんだ?
エシャーの籠に入っていたのは、見たこともない果物や野菜、クッキーのような焼菓子。クッキーのような、と言ったが、普通のクッキーよりかなり大きい。
高尾山のお土産物屋で見かけた、大判せんべいぐらいある。
それと、徳利のような形状の壺があった。
壺にはコルクのような栓がしてある。
中に入っていたのは、琥珀色の透き通った液体。
Pちゃんに成分分析してもらったところ、主成分はエタノール……つまり酒だった。
度数は十五。日本酒やワインと同じくらい。
という事は、蒸留酒ではないな。
栓を抜くと、芳醇な香りが漂ってくる。
ちょっと、味見。
うん! いける!
ちょっと一杯……いや、昼間から酒なんて……
でも、仕事があるわけじゃなし、車の運転もしばらくはする必要がないし……
シャトルの不時着地を出発してから、ずっと運転し通しだった。
当初は三百キロ走ったら、二日休むペースのはずだったのだが、出発前にシャトルに予備の水素燃料が残っているのをPちゃんが見つけていた。
それでも、最初はそれには手を付けないつもりだったが、カルルと出会ってから状況が変わった。
僕の命を狙っている奴がいる。ならば、少しでも早く遠くへ逃げた方がいいということになり、予備の水素燃料が無くなるまで、夜通し走り続けたのだ。
塩湖を出て、荒野をしばらく走り続け、ようやく隠れるのによさそうな森が見えてきたのは昨日の事。その時には、水素はほとんど残っていなかった。
ドローンを飛ばしてみたところ、すぐ近くに小さな川があるのが見つかり、そこで水素を補給することにした。
そんなわけで、昨日からずっとここにいる。
ここで、川の水を電気分解して水素を取り出しているわけだが、タンクが満タンになるのは明日の昼ごろになる。
それまでは、ゆっくりできる。
というわけで、もう一杯。
「ご主人様」
ん?
「お野菜、冷蔵庫にしまっておきました。今夜は、御馳走作ってあげますね」
「そ……そうか。楽しみだなあ……」
「ご主人様。私の料理の腕を、疑っていませんか?」
ギク! だってなあ、カロリーメイトにドームカバーを被せて出すような奴の料理に、どう期待しろと……いかん! こいつには、感情があったんだ。傷つけないようにしないと……
「そ……そんな事はないぞ……」
「いいです。料理の腕は、実戦で証明してみせますから。海原○山も、満足する料理を作ってあげますわ」
いや……それはハードル高すぎだろ……
「それとですね。エシャーさんから聞いたのですが、ナーモ族の人がレッドドラゴンの肝臓を欲しがっていたそうですけど、まだ残っていますか?」
「肝臓?」
そういえば、レッドドラゴンの身体を解体した時、肝臓らしき臓器と、心臓らしき臓器を切り取ってフリーザーバッグに小分けして冷凍庫にしまっておいたな。
まだ食べてないけど……
「まだ、手を付けてなかったよ」
「その人は、すぐに持ってきてくれたら高く買い取ると言っているそうですけど、どうします?」
「高くって? ナーモ族は、貨幣を持ってるの?」
「金貨や銀貨、銅貨が流通しています」
だとすると、もっと酒が買える。
「ナーモ族の村って近いの?」
「ここから、十キロぐらいだそうです」
「よし行こう」
充電は、一度中断することにした。
荷物を片付けて、出発準備が整ったのは三十分後。
エシャーが、道案内してくれると言って車の前に待機している。
さっき、少し酒を飲んだが、まあこのぐらいなら大丈夫だろ。
ここは地球じゃないし、道路交通法はない。
僕は運転席に着いてスタートボタンを押した。
メインモニターに『システム起動中』と表示される。
突然、車内に警報が鳴り響いた。
どうしたんだ?
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

Night Sky
九十九光
SF
20XX年、世界人口の96%が超能力ユニゾンを持っている世界。この物語は、一人の少年が、笑顔、幸せを追求する物語。すべてのボカロPに感謝。モバスペBOOKとの二重投稿。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

電子世界のフォルトゥーナ
有永 ナギサ
SF
人工知能を搭載した量子コンピュータセフィロトが自身の電子ネットワークと、その中にあるすべてのデータを物質化して創りだした電子による世界。通称、エデン。2075年の現在この場所はある事件をきっかけに、企業や国が管理されているデータを奪い合う戦場に成り果てていた。
そんな中かつて狩猟兵団に属していた十六歳の少年久遠レイジは、エデンの治安維持を任されている組織エデン協会アイギスで、パートナーと共に仕事に明け暮れる日々を過ごしていた。しかし新しく加入してきた少女をきっかけに、世界の命運を決める戦いへと巻き込まれていく。
かつての仲間たちの襲来、世界の裏側で暗躍する様々な組織の思惑、エデンの神になれるという鍵の存在。そして世界はレイジにある選択をせまる。彼が選ぶ答えは秩序か混沌か、それとも……。これは女神に愛された少年の物語。
<注意>①この物語は学園モノですが、実際に学園に通う学園編は中盤からになります。②世界観を強化するため、設定や世界観説明に少し修正が入る場合があります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
マスターブルー~完全版~
しんたろう
SF
この作品はエースコンバットシリーズをベースに作った作品です。
お試し小説投稿で人気のあった作品のリメイク版です。
ウスティオ内戦を時代背景に弟はジャーナリストと教育者として、
兄は軍人として、政府軍で父を墜とした黄色の13を追う兄。そしてウスティオ
の内戦を機にウスティオの独立とベルカ侵攻軍とジャーナリストとして、
反政府軍として戦う事を誓う弟。内戦により国境を分けた兄弟の生き方と
空の戦闘機乗り達の人間模様を描く。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる