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第十五章

子供の顔に落書きして喜ぶような奴は対象外

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「助けてえ!」

 二十歳はたちぐらいの女が、悲鳴を上げて廃工場から駆け出してきたのは、ダニを縛り上げた時だった。

 その直後、女が出てきた出入り口が、轟音ごうおんを立てて砕け散る。

 立ちこめる粉塵の中から、ミクを肩に乗せたアクロが出てきた。

 どこで見つけたのか、目と口の辺りに穴を空けた皮袋をミクはかぶっている。

「待てえ! よくもあたしの可愛い顔に、落書きしたわね! 絶対に、許さないんだから!」

 女は僕たちを見つけると、こっちへ向かって駆けてきた。

「ボス! 助けてください!」

 ダニは、疲れたような顔を女に向ける。

「すまんが、見ての通り助けてほしいのは俺の方だ」
「そんな……」
「それに、俺は散々言ったよな。子供の顔に落書きすんなと……言いつけを守らないから、そんな目にうんだ」

 女は、僕の方に視線を変える。

「じゃあ、そっちの金色の旦那。助けて下さい。勇者カイトって、女には優しいんでしょ?」

 戯言たわごとを言っている女の胸ぐらを僕は掴む。

「え? あたいをどうすんの? あたいは女よ。女は、殴らないのでしょ?」
「あいにくだな。僕が優しくする女は、可愛くて若くて、性格の……良い女だ」

 ミールやPちゃん、芽依ちゃん、ミクの性格が良いのか疑問はあるが……

「少なくとも、子供の顔に落書きして喜ぶような奴は対象外」
「そんな」

 とりあえず、僕は女を縛り上げてミクに引き渡した。

「ところでキラ。ミーチャはどこにいる?」
「自警団の待機所に残してきた。こいつを」

 キラはダニを指さす。

「捕まえたら、ミーチャの通信機に連絡する事になっていてな」
「なに? じゃあ、自警団と連絡が取れるのか?」
「ああ。というか、今私の本体が連絡したところだ。もうすぐ、自警団のメンバーが数人来ることになっている」
「もう一度連絡してくれ」
「どうして?」
「廃工場の中に、誘拐された子供たちがいるんだ。子供たちを乗せる乗り物と、それとできれば医者を呼んで欲しいと」
「分かった。伝えておく」
「頼んだぞ。僕はちょっと廃工場の中を見てくるから、ミクと一緒にミールのいるところまで戻ってくれ」
「分かった」

 僕はダニに案内させて、廃工場内へと入っていく。
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