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第十五章

親切な曲者

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 死体を川に放り込み、僕は橋を渡りだす。

 橋の向こうにも見張り小屋がある。ドローンから確認した小屋内部の熱源体は四つ。

 銃声もしたことだし、こっちで何が起きたか、もう気が付いているだろう。

 だが、小屋からは誰も出てこない。

 さては、僕が近づいてくるのを待って、一斉に小屋の中から飛び出してくる気か?

 まあ、そんな事をしても無駄な事だが……

 小屋の一メートル手前で、僕は立ち止まった。

 さあ、出てこい!

 一分ほど待ったが、誰も出てこない。

 おかしいな? 銃声までしたのに、異変に気が付いていないわけないよな?

「ストレート!」

 突然小屋の中から、叫び声が聞こえた。

 中で、殴り合いでもやっているのか?

 しかし、喧嘩で相手を殴るのに、一々『ストレート』とは言わないよな。

 僕の場合は、ロボットスーツが音声入力になっているので、一々『ブースト』と言わなければならないのだが……

「なんの! フルハウス!」

 ん?

「甘いな。俺はフォーカードだぜ」

 こいつら……

 小屋の中をのぞき込むと、四人の男たちがテーブルを囲んでポーカーをやっていた。

「甘いのはおまえさ。俺はロイヤル・ストレート・フラッシュだぜ」
「てめえ! いかさまやったな!」
「どこにそんな証拠がある!」

 本当に殴り合いになってしまったようだが……

 喧嘩が終わるのを、待っているわけにはいかないな。

「おまえら! 何をさぼっている! 曲者くせものが忍び込んでいるぞ!」

 その時になって、男たちはようやく小屋をのぞき込んでいる僕に気が付く。

「やべ! やっぱり、さっきの銃声そうだったのか」
「すんません! さぼっていたわけでは」

 四人の男たちは銃や険など武器を取り、小屋からかけだして来た。

「曲者はどこだ!?」
「どこだあ!?」

 男たちは一通り周囲を見回してから、僕の方に視線を戻す。

「曲者なんていないじゃないか」
「いるだろう。ここに」
「え?」

 侵入した事を自分から教えてくれる親切な曲者なんて、そうそういないだろけど……

「ブースト」

 男の一人が、ブーストパンチを食らって川に落ちた。

 残りの三人は、ようやく僕が敵だと気が付いたようだ。

「てめえ! 何者だ!?」
「だから、言っているじゃないか。曲者だと」
「ふざけるな!」

 男は銃撃してきたが、そんなものが九九式の装甲に通じるわけがない。

 僕は男から銃を取り上げると、真っ二つにへし折った。

「ひいい!」「逃げろ!」

 戦意を喪失した男たちは、廃工場の方へと逃げていく。

 さて、奴らが仲間を呼んで来るのをここで待つとしよう。



    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

ミール「今回のカイトさん。ミクちゃんを拉致されてかなり怒っていますね。ちょっと怖いです」
Pちゃん「そうですか、ミールさん。そんな怖いご主人様から、逃げ出したくなりましたか」
ミール「いいえ。怖いカイトさんも素敵です」
Pちゃん「しぶといですね」
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