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第十五章

廃工場1

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 廃工場があるのは、アーテミスの町外れから三キロほど北へ行ったところ。

 大河マオ川と、アーテミス川の合流する辺りにある中州に建てられていた。かつては、この辺りで採集した砂鉄を、ここで製鉄していたらしい。

 建物はほとんど石造りで、その中に屋根から巨大な煙突が突き出た一際大きい建物がある。

 あそこで鉄を溶かしていたのだろうか?

 その周辺にある、小さな建物群は宿舎かな?

 それにしても……

「壊れている建物が多いな。戦争の時に壊れたのかな?」

 何気なく言った僕の言葉に、分身体ではない本物のオレークが答える。

「戦争で壊れた建物もあるけど、ほとんどは洪水で壊れたんだ」
「洪水?」
「俺が生まれる前、アーテミスの町はここにあったんだ。それが洪水で流されて、町を今の場所に移したって母さんに聞いている」
「なるほど。で、盗賊団がいるのは、あの一番大きな建物か?」

 オレークは無言で頷いた。

『ご主人様』

 通信機から、Pちゃんの声が流れる。

『ドローンが上空に達しました。これよりデータを送ります』

 中州上空のドローンから、航空写真が送られてくる。

 横から見たときは、壊れかけとは言え頑丈な石造りの建物に見えたが、上から見ると屋根がほとんど抜け落ちている。

 周囲を石壁に囲まれている場所に、テントを張って雨露をしのいでいるようだ。

 瓦礫に偽装して、大砲を隠しているのも上からだと丸見えだった。

 この調子なら、下にいる人間の動きも赤外線で丸見えだな。

 さっそく、ドローンから赤外線で観測。

 そのデータを航空写真と重ねた結果、中州にいる熱源体の数は三百。

 そのうち五十は馬のようだ。

 人間は二百五十。

 やはり、五百人というのは、誇張していたようだな。

『ご主人様。蛇型ドローンを投下します』

 今回使う蛇型ドローンには光学迷彩カメレオン機能を持たせてあった。これで、敵に気付かれることなく建物内部を偵察できる。

 しばらくしてドローンからの情報が集まり、内部の状況が分かってきた。

 どうやら廃工場内部には、アーテミスの町から拉致された人たちもいるようだ。それも、子供が多い。

 残念だが、ミクの姿はまだ見つからない。

「カイトさん」

 ん? ミールの方を振り向く。

「みんなを、ここに呼びましょう」

 そうだな。みんなもミクが心配だろうし、本物のミクが拉致された以上、もう囮作戦も意味がないか……
 
 さっそく、アーテミスに散らばっているみんなに緊急召集をかけた。

 その前に、ベジドラゴンたちを呼んで、アンドロイドの回収を頼むのは忘れていない。

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