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番外編1

モニターに応募したら、異世界に行ってしまった。 前篇

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 この話は、スキャナーで読み取られた主人公のもう一つの話。
 第一章が終わった直後にあったことです。

★           ★          ★          ★        
 おもむろに目を開く。
 あれ? ここは何処だ?
 見覚えのない部屋?
 スキャナーの中で眠りこけて、別室に運ばれたのか?
 直径二メートル、高さ二メートルほどの円筒形の部屋の床に僕は横たわっていた。
 壁は真っ白なプラスチックのようだ。
 振り返るとそこにドアがあった。
 ノブは簡単に回る。鍵はかかっていないようだ。
 そうっと開いてみると……

 パン! パン! パン!

 わ!! なんだ!? 

 ドアの向こうには、クラッカーを持った人たちが待ちかまえていた。
 クラッカーを鳴らしたという事は、僕は歓迎されているようだが……
「ようこそ。新たな仲間よ。あなたを歓迎します」
 そう言って進み出たのは、チャイナドレス姿の若い女。
 顔はサングラスとマスクで隠している。
 しかし、どっかで会ったような……
 誰だったっけ?
 部屋の中を見回すと、さっきのチャイナドレスの女の他に、小学生ぐらいの男の子、中学生ぐらいの女の子、それに若い金髪の男。
 この共通点の見当たらない人たちは?
「あの……あなた達は、何者なんです?」
「もっともな質問ですね。あなたは、ここをどこだと思っていますか?」
「さあ?」
 分からないから、聞いているんだが……
 窓の方に目を向けたが、カーテンがかかっていて外は見えない。
 中学生ぐらいの女の子が、それに気が付いたのかカーテンを開いてくれた。
「な!?」
 窓の外には、西部劇にでも出てきそうな荒野が広がっていた。
 その、荒野を恐竜のような生物がのし歩いている。
 窓に駆け寄ってガラス戸を開いてみたが、映像の類ではない。
 バカな!! ここは東京のど真ん中のはずだぞ!!
「ここは? いったいどこなんだ!?」
「見ての通り異世界です」
 そう言ったのは、カーテンを開いてくれた少女。
「異世界って?」
「異なる世界」
「そんな事は分かる」
「遙か過去の世界、遙か未来の世界、遙か彼方の惑星、パラレルワールド、魔界、霊界、異次元の世界、その他もろもろ。どれが好みですか?」
 いや、異世界の好みなど聞かれても困るんだが……
「この世界は、その中のどれなんだ?」
「さあ? あたしも、いきなり連れてこられただけだし……」
「それにしちゃ、随分落ち着いてるな」
「もう慣れちゃったし。それに結構楽しいよ」
「楽しいのか?」
「だって、ここには学校もないし、毎日遊んでいても怒られないし」 
 背後から肩を掴まれた。
 振り返るとチャイナドレスの女だ。
「詮索するだけ無駄よ。どうせここから出られないのだから……」
「なぜだ?」  
「私たちが、いつからここにいると思っているの? ここから出ていく方法なんて、思いつく方法はすべて試したわ」
「だからって……」
「諦めなさい。諦めてここに順応した方が楽よ。それに元の世界に戻る価値なんかあるの?」
「それは……」
 『ある』とは、とても言えなかった。仕事は失い、再就職の当てもない。
 友達も彼女もいない。
 でも……誰か、会いたい人がいたような……
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