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第三章

タバコは身体によくない

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『言っておくが、それはあくまでも俺の推測だ。だが、生データを再生する理由としては、それが一番考えられる』
 もし、そうだとすると、僕はリトル東京に行ったら、臓器を抜かれて殺される……?
『どうだ? さっきの話、考えてみないか?』
 どうすればいいんだ?
 このまま、カルルに付いて行くか?
 いや、こいつは信用できない。
 仮に臓器移植のためだったとしても、こいつに付いて行くと、ろくなことにならないような気がする。
「それはやめておく。おまえは信用できない」
『そうかい。まあ、気が変わったら、いつでも言ってくれ』
 気は変わらないと思う。
『すまねえ。ちょっと、タバコ吸って良いかい?』
 タバコ? 僕は吸わないから分からないが、喫煙者は吸わないでいるのが、そうとう辛いらしいのは知っている。とは言っても、近くで吸われたら臭くてかなわない。
 まあ、ドローンを通じて匂いが伝わってくるわけじゃないからいいかな。
 と、言おうとしたとき、Pちゃんが先に口を挟んできた。
「だめです。タバコは身体によくありません」
 さっきは、こいつを『ぶっ殺す』と言ってなかったかい?
『おいおい、俺の身体なんだから、おまえに心配される言われはないだろう』
「誰が、あなたの身体の心配なんかしますか。あなたが、肺がんで死のうが、肺炎で死のうが、動脈硬化で死のうが、私の知ったことではありません。ですが、あなたのタバコから排出された、汚らわしい汚染物質がこっちへ飛んできて、ご主人様が吸い込んだら、どうしてくれるのですか。もし、タバコを吸わなきゃ死ぬというなら、今すぐ私が殺してあげます」
 おいおい……二百五十キロも離れていれば、受動喫煙の心配はないだろう……
『おい。海斗……このロボットに、何とか言ってくれよ。友達じゃないか』
「いや、おまえと友達になった覚えは無いが……」
電脳空間サイバースペースの中では、俺と海斗は友達だったんだよ。きっと、おまえとも友達になれるって』
「僕が乗っているシャトルを落としておいて、友達になれるとでも……」
『それはだな……』
「それに、僕は『友達』という言葉を、軽々しく使う奴は信用できない」
『……』
「まあ、いいよ。タバコぐらい吸っても。友達にはなれないが」
『ありがたい』
 カルルは、懐に手を入れた。
「ご主人様。タバコなんかに、消費される酸素がもったいないです」
「少しぐらいいいだろ」
 突然、画面が真っ暗になった。
 何があったんだ?
「ご主人様。ドローンとの通信が切れました」
「なんだって?」
「ジャミングされています。カルルは、ジャマーを使用したと推測されます」
 さっき懐に手を突っ込んだ時か。

 ドローンとの通信が回復したのは、それから五分後。
 その時には、カルルの姿はどこにもなかった。

(第三章 終了)
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