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第三章

ドローンを回収に来た男

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 塩の平原に、それは横たわっていた。
 さっきまで、空に浮かんでいたドローンのなれの果て。
 気嚢に微かに穴が空いて、水素が少しずつ漏れて徐々に高度が下がり、最後にここに落ちたのだ。
 そのドローンに、何かが近づいてくる。
 バイクだ。
 バイクは、ドローンの傍らに停止した。
 バイクから降りた男が、ドローンに手を伸ばす。
「動くな! 背後から、お前を銃で狙っている」

 と言っても、僕が本当にこの男の背後にいるわけじゃないけどね。
 落ちたドローンを、誰かが回収にくると予想して、近くに桜花と菊花を配置しておいたのだ。
 狙い通り、男が……フルフェイスのヘルメットを被っているので男かわからないけど……とにかく、やってきたので、桜花を通じて声をかけた。
 声をかけたというのは正確じゃないな。
 僕は奴から二百五十キロ離れた車の中で、パソコンを操作して合成した音声を、桜花のスピーカーから流しているのだ。
 え? 直接マイクで話した方が早いって?
 いや、そうなんだけど、僕は声に迫力がないというか……ドスの効いた声が出せないので……ようする生声を聞かせると甘く見られそうなので、こういう方法にしてみた。 
 ちなみに合成音声は、渋い声の声優小杉十郎太に調整してある。

 男は、抵抗する様子はなかった。
「よし。両手を上に上げろ」
 男は、言われた通り手を上げる。
 ええっと、次のセリフは……カタカタっとキーボードを打つ。
「質問に、答えてもらおうか」
『何を、聞きたい?』
 答え早いって! キーボード打ってる身にもなれ!
「そのドローンを、操作していたのはお前か?」
『いかにも』
 まったく、悪びれる様子がなかった。
「操作していたのは、お前一人か?」
『いや、他にもいるが、近くにいたのは俺一人だけだったのでな』
「それで、一人で回収に来てたか?」
『いや、お前と話ができると思って来た』
 なに?
『最後のドローンは、わざと破壊しなかったな。しかし、活動は続けられないように、太陽電池は破壊。気嚢も爆発しないように慎重に穴を開けた。それは、落ちたドローンを誰かが回収に来ると思ったからだろう?』
 ばれてた?
『近くに、お前のドローンが待機しているのも分かっていた』
「分かっているなら、なぜ来た?」
『さっきも言った通り、お前と話がしたかったからさ』
 ううん……予定が狂ってしまったな。
 予定では、この男を脅迫して、いろいろと白状させるつもりだったのだが……
 それとも、脅迫する手間が省けたと考えるべきかな?
「ご主人様」
 ヘッドマウンテッドディスプレイの左半分を透過状態にして、Pちゃんの方を向いた。
「あの男の服、防弾服です。ドローンの小口径バルカンでは、貫通できません」
「ドローンに自爆装置は?」
「ついてます」
「よし、いざとなったら、自爆装置を使おう」
 なるべく、使わずに済ませたいが……
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