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第十五章

アーテミスの誘拐組織

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 《海龍》に戻った僕は、ロボットスーツを脱着して発令所に入った。

 そこでは、三体のアンドロイドから送られてくる映像が、メインモニターに表示されている。

「ただいま」

 映像を見ていたミールとPちゃんが振り返る。

「お帰りなさい、カイトさん」「お帰りなさいませ、ご主人様」
「アンドロイドたちの様子は?」

 僕の質問にPちゃんが答える。

「ご主人様。今のところ、どのアンドロイドにも手を出す者はいません」
「そうか」
「ただ、声をかける人がいました」
「ナンパか?」
「いえ。どうも、町の自警団の人たちらしくて、早々の帰宅をうながしていました。アンドロイドには『ここで親と待ち合わせをしている』と言わせておきましたが」
「帰宅を促す? まだ、明るいのに? アーテミスの町は、そんなに治安が悪いのか?」
「子供の誘拐が、相次いでいるようです。どうやら、人身売買の組織がいるらしいのですよ」

 Pちゃんはそう言って、一枚の紙を差し出した。

「これは?」
「自警団の人たちが、アンドロイドに手渡したプリントです。アンドロイドのカメラで撮ったデータを、こちらでプリントアウトしました」
「どれどれ」

 プリントには、ナーモ語と帝国語の文章が並んで書かれていた。

 翻訳ディバイスで日本語に翻訳してみると……

『近頃、アーテミスの町では、子供の誘拐が相次いでおりますのでお気をつけ下さい。誘拐は組織的に行われており、一人でいる子供を大勢で取り囲んで連れ去るという手口が主に使われています。くれぐれも、お子様を一人で行動させないで下さい』

 ちょっと待て。これって本物のミクも、危ないのでは?

 さらに続きがあった。

『また、お子様が服店の試着室から拉致される事も……』

 ブッ!

「Pちゃん! すぐにキラに連絡を。ミーチャを試着室に入れるなと」
「ご主人様。すでに手遅れです」
「なに!? もうミーチャは、拉致されたのか?」
「はい。ご主人様が戻ってくる前に、事件は起きていました」
「なんだって!? なぜ、それを先に言わない?」
「すでに解決していますので」
「解決? どういう事だ?」
「キラさんもミーチャさんも、ニミPちゃんを持たせてありますので、そういう事があればすぐに分かります。キラさんとミーチャさんは、ご主人様と分かれた後、別の店に行きました。そこでミーチャさんが、試着室から落とし穴に落とされたのです。しかし、すぐにキラさんが察知して分身体を発動させ、誘拐犯たちを殲滅せんめつしました」
「殲滅って……皆殺しにしたのか?」
「いえ。皆半殺しです。その後は、自警団に引き渡しました。キラさんは自警団から、感謝状をいただいたようです」
「それはよかった。キラとミーチャは、今どうしている?」
「自警団の待機所に保護されています。自警団の話では、捕まえた誘拐犯がボスの名前を白状したようです」
「何者だ?」
「名前はダニーロヴィッチ・ボドリャギン。以前からアーテミスを荒らしている盗賊だそうです」

 また、長ったらしい名前だな。

 とにかく、ミーチャは無事だったのでよかった。

「ミクは、大丈夫だろうか?」
「カイトさん。ミクちゃんの場合、ボドリャギンという人の方が心配なのではないかと」
「なんで?」
「ボラーゾフの二の舞ですよ。ただの盗賊ごときが、ミクちゃんをうっかり誘拐しようなんてしようものなら、アジトに到着した時点で、アクロを召還されてズタボロにされるだけです」

 それもそうか。

 通信機のコール音が鳴ったのはその時……

 通信相手は、ミク?

「ミク。どうした?」
『お……お兄ちゃん。助け……て』

 え?

「おい! ミク! 何があった?」 

 それっ切り、通信機からミクの声は途絶えた。

 ただ、電波は途切れてはいない。

「ミクに何かあったようだ。アーテミスへ行ってくる」
「待って下さい。カイトさん」
 
 ミールに呼び止められた。

「あたしも連れて行って下さい。役に立つと思います」
「分かった」

 僕はロボットスーツを装着すると、ミールをお姫様だっこしてアーテミスへ向かった。

 電波を辿たどって行き、程なくして発信源に到着。

 だが、そこにあったのは、石畳の上に放置されているミクの通信機だった。
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