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第三章

コミ症は認めるが、彼女いない歴=年齢は違うぞ!

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「変態趣味はさて置き、ナーモ族の村へ行ったとして、ご主人様はちゃんと交渉できますか?」
「う……」
「そもそも、ご主人様はなぜ会社を辞める羽目になったか、お忘れですか?」
「ぐ……」
 確かに……工場から営業に配置転換された後、上司と一緒に得意先へ行ったとき、緊張のあまり挨拶一つできないでいた。その後、怖くて会社に出てこられなくなり、退職届を出す事になったのだ。
「だ……大丈夫だよ。たぶん……」
「本当に、大丈夫ですか? お得意先で挨拶一つできないコミ症のご主人様に、未開種族との交渉なんてできますかね?」
 確かに……自信がない……しかし……
「しかし、食糧の調達は……」
「ご安心下さい。食糧の調達が必要な事は、分かっております。ですから、村の近くまで行ってください。村人との交渉は、この可愛くて優秀で有能な超高性能アンドロイドのP0371が引き受けます」
 こらこら、誰が超高性能アンドロイドだ。このボロットが……
「だから、コミ症で、彼女いない歴=年齢のご主人様は、車の中で震えて待っていて下さいね」
「まて! コミ症は認めるが、彼女いない歴=年齢は違うぞ! 訂正しろ」
「そうですか。では、鹿取香子さんは、彼女と認めるのですね?」
「え?」
「え? じゃありません。幼稚園から中学生まで仲良くしていた鹿取香子さんを、ご主人様はお友達と認識していたのですか? 彼女と認識していたのですか?」
「なぜそんな事を聞く。僕の記憶は、データ化されて読めるんだろ。勝手に読めばいいじゃないか」
「読んだから、質問しているのですよ。人間の記憶というのは曖昧なものが多いのです。ご主人様の場合、鹿取香子さんに対する評価が曖昧なのです。もし、鹿取香子さんを彼女と認識していたのなら、彼女いない歴は中学卒業からカウントされますが」
「ええっと……鹿取香子は、幼馴染……」
「幼馴染は分かっています。私が聞いているのは、彼女なのか、お友達なのかです」
「ええっと……どっちなんだろう?」
「はっきりしてください。してくれないと、彼女いない歴=年齢は訂正しません」
「いや、それは違う。だって、高校生の時は彼女いたし……彼女いない歴は、そこからカウントしてくれ」
「え? そうなのですか? ちょっと検索してみますね。ああ!! 高校一年の時に、同級生から告白されて、しばらく付き合っていましたね。しかも、キスまで! この浮気者!」
「な……なんで、お前が怒るんだ?」
「え? いや、鹿取香子さんが聞いていたら怒るのじゃないかな……と思って……」
「は……?」
「いいでしょう。彼女いない歴は、二百七年とカウントします。それで、ナーモ族の……」
 不意にPちゃんが押し黙った。
 頭のアンテナが、ピコピコ動いている。
「どうしたんだ?」
「ご主人様、緊急事態です」
「緊急事態?」
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