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第十五章
身代わりアンドロイド
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プリンターの中から、十二歳ぐらいの少女が歩いて出てきた。
セーラー服を纏ったおかっぱ頭の少女の外見は、どう見てもミク。
だが、中身はロボットだ。
ミクそっくりのアンドロイドを、ミールはしげしげと眺める。
「ミクちゃんと、そっくりですね」
当然だ。そっくりでなければ、レムを騙せない。
最初に、このアンドロイドの三次元データを作ったとき、『もっと胸を大きくして』とミクが言っていたが、リアリティー重視なので却下した。
「しかし、ご主人様。今このアンドロイドを使ってもいいのですか?」
「いいんだ。僕たちがミクのアンドロイドを作る事は、もう敵には知られている」
「でも、カイトさん。今、これを使ったら、あたしたちがスパイに気が付いた事もばれてしまうかもしれませんよ」
「分かっている。だから、これが敵の手に落ちたら、アンドロイドだとばれる前に回収する」
今回、これをどう使うかというと、アーテミスに三体のアンドロイドを配置して、エラとカミラのグループを除く各グループそれぞれに、その居場所をさりげなく伝えるのだ。
グループごとに違う場所を……
どの場所に配置したアンドロイドが襲われるかによって、スパイを見抜くというのが今回の作戦。
不意にPちゃんのアンテナがピコピコと動いた。
「ご主人様。飛行物体が接近しています。ベジドラゴンと推測されます」
来たか。さっき、ミールが竜笛を吹いて呼んでおいたのだ。
アンドロイドをアーテミスへ運んでもらうために……
甲板に出ると、エシャー、ロッド、ルッコラ、レタスが待っていた。
「じゃあ、エシャー。頼んだよ」
「マカセテ、カイト」
背中にアンドロイドを乗せたベジドラゴンたちは、アーテミスの方へと飛び去っていく。
アンドロイドたちはすでに自立モードになっていて、ベジドラゴンがアーテミスに降りると、後は自分で行動して所定の場所で待機する事になっていた。
程なくして、各アンドロイドから『所定の位置に着いた』という連絡が入る。
後は、各グループにその位置を教えるだけ。
ただし、無線はだめだ。
もし、敵に傍受されたら、各グループに別の場所を伝えた事を知られてしまう。
かといって、暗号通信を使うと、あまり重要でもない通信に暗号を使った事を怪しまれる。
だから、僕が直接行って伝えるしかない。
「装着」
ロボットスーツを装着して、僕は甲板に上がった。
「ミール。Pちゃん。行ってくるよ」
甲板上で手を振るミールとPちゃんを残して、僕は《海龍》から飛び立った。
二分ほどで、アーテミス上空に着く。
アーテミスは、ロータスと同じく運河に四方を囲まれた町だった。
建物は石造りが多いが、壊れている建物も目立つ。
三年前の帝国軍侵攻の爪痕だろうか?
町の各所から、激しく煙が立ち上っているのは製鉄所だろう。
さて、みんなはどこにいるかな?
お! レイホーと芽依ちゃんを見つけた。
二人は、クレープの様な物を食べながら街路を歩いている。
「おーい! 芽依ちゃん、レイホー」
呼びかけながら降り立つと、二人は驚いたような視線を僕に向けた。
「北村さん!?」「おにいさん、どうしたね? ロボットスーツなんかで」
「いや、ちょっとミクに用事があって出てきたのだが、スーツのメモリにアーテミスのマップデータを入れ忘れた。地図を見せてくれないか」
「地図ですね」
芽依ちゃんがポシェットを探って、クリアファイルに入った地図を取り出す。
「オカカ広場という場所で、ミクと待ち合わせる事になっているんだ」
とりあえず、これで目的の一つは達成。
「オカカ広場ですね。あ! ここです」
芽依ちゃんが地図の一カ所を指し示してくれたが、実はそんな事をしなくてもオカカ広場がどこにあるかは知っている。
この二人のどちらかが接続されているなら、今頃レムは……
レム「小娘は、オカカ広場にいることが分かった。者共行け!」
部下「はは! レム様。必ずや小娘をひっ捕らえてまいります」
……という事に、なっているはずだ。
しかし、そこにいるのはアンドロイド。
アンドロイドに手を出す奴がいたら、直ちに僕に警報が伝わる手はず……
「お兄さん。ちょっとマズいね」
ん? レイホー、どうしたのだ。
うわ!
周囲を見回すと、僕たちに注目が集まっていた。
やはり、ロボットスーツで降りたのは目立ちすぎたか?
「北村さん。上陸してから分かったのですが、私と北村さんは、この町で英雄に祭り上げられています」
なに? 言われてみれば、僕たちを囲んでいるナーモ族やプシダー族、亡命帝国人たちが口々に「カイト」と言っている声が聞こえる。
僕を知っているのか?
「なんで?」
「当然ね。この町は、三年前に帝国軍に攻め込まれて大勢の人死んだね。だから、この町の人たちの反帝国感情はすごいね。そんなところへ、帝国軍をコテンパンにやっつけたお兄さんが、金色のロボットスーツで降りて来たら、そりゃ人が集まってくるね」
マジか?
セーラー服を纏ったおかっぱ頭の少女の外見は、どう見てもミク。
だが、中身はロボットだ。
ミクそっくりのアンドロイドを、ミールはしげしげと眺める。
「ミクちゃんと、そっくりですね」
当然だ。そっくりでなければ、レムを騙せない。
最初に、このアンドロイドの三次元データを作ったとき、『もっと胸を大きくして』とミクが言っていたが、リアリティー重視なので却下した。
「しかし、ご主人様。今このアンドロイドを使ってもいいのですか?」
「いいんだ。僕たちがミクのアンドロイドを作る事は、もう敵には知られている」
「でも、カイトさん。今、これを使ったら、あたしたちがスパイに気が付いた事もばれてしまうかもしれませんよ」
「分かっている。だから、これが敵の手に落ちたら、アンドロイドだとばれる前に回収する」
今回、これをどう使うかというと、アーテミスに三体のアンドロイドを配置して、エラとカミラのグループを除く各グループそれぞれに、その居場所をさりげなく伝えるのだ。
グループごとに違う場所を……
どの場所に配置したアンドロイドが襲われるかによって、スパイを見抜くというのが今回の作戦。
不意にPちゃんのアンテナがピコピコと動いた。
「ご主人様。飛行物体が接近しています。ベジドラゴンと推測されます」
来たか。さっき、ミールが竜笛を吹いて呼んでおいたのだ。
アンドロイドをアーテミスへ運んでもらうために……
甲板に出ると、エシャー、ロッド、ルッコラ、レタスが待っていた。
「じゃあ、エシャー。頼んだよ」
「マカセテ、カイト」
背中にアンドロイドを乗せたベジドラゴンたちは、アーテミスの方へと飛び去っていく。
アンドロイドたちはすでに自立モードになっていて、ベジドラゴンがアーテミスに降りると、後は自分で行動して所定の場所で待機する事になっていた。
程なくして、各アンドロイドから『所定の位置に着いた』という連絡が入る。
後は、各グループにその位置を教えるだけ。
ただし、無線はだめだ。
もし、敵に傍受されたら、各グループに別の場所を伝えた事を知られてしまう。
かといって、暗号通信を使うと、あまり重要でもない通信に暗号を使った事を怪しまれる。
だから、僕が直接行って伝えるしかない。
「装着」
ロボットスーツを装着して、僕は甲板に上がった。
「ミール。Pちゃん。行ってくるよ」
甲板上で手を振るミールとPちゃんを残して、僕は《海龍》から飛び立った。
二分ほどで、アーテミス上空に着く。
アーテミスは、ロータスと同じく運河に四方を囲まれた町だった。
建物は石造りが多いが、壊れている建物も目立つ。
三年前の帝国軍侵攻の爪痕だろうか?
町の各所から、激しく煙が立ち上っているのは製鉄所だろう。
さて、みんなはどこにいるかな?
お! レイホーと芽依ちゃんを見つけた。
二人は、クレープの様な物を食べながら街路を歩いている。
「おーい! 芽依ちゃん、レイホー」
呼びかけながら降り立つと、二人は驚いたような視線を僕に向けた。
「北村さん!?」「おにいさん、どうしたね? ロボットスーツなんかで」
「いや、ちょっとミクに用事があって出てきたのだが、スーツのメモリにアーテミスのマップデータを入れ忘れた。地図を見せてくれないか」
「地図ですね」
芽依ちゃんがポシェットを探って、クリアファイルに入った地図を取り出す。
「オカカ広場という場所で、ミクと待ち合わせる事になっているんだ」
とりあえず、これで目的の一つは達成。
「オカカ広場ですね。あ! ここです」
芽依ちゃんが地図の一カ所を指し示してくれたが、実はそんな事をしなくてもオカカ広場がどこにあるかは知っている。
この二人のどちらかが接続されているなら、今頃レムは……
レム「小娘は、オカカ広場にいることが分かった。者共行け!」
部下「はは! レム様。必ずや小娘をひっ捕らえてまいります」
……という事に、なっているはずだ。
しかし、そこにいるのはアンドロイド。
アンドロイドに手を出す奴がいたら、直ちに僕に警報が伝わる手はず……
「お兄さん。ちょっとマズいね」
ん? レイホー、どうしたのだ。
うわ!
周囲を見回すと、僕たちに注目が集まっていた。
やはり、ロボットスーツで降りたのは目立ちすぎたか?
「北村さん。上陸してから分かったのですが、私と北村さんは、この町で英雄に祭り上げられています」
なに? 言われてみれば、僕たちを囲んでいるナーモ族やプシダー族、亡命帝国人たちが口々に「カイト」と言っている声が聞こえる。
僕を知っているのか?
「なんで?」
「当然ね。この町は、三年前に帝国軍に攻め込まれて大勢の人死んだね。だから、この町の人たちの反帝国感情はすごいね。そんなところへ、帝国軍をコテンパンにやっつけたお兄さんが、金色のロボットスーツで降りて来たら、そりゃ人が集まってくるね」
マジか?
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