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第十五章

発令所パニック1

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 《海龍》の発令所に、みんなが作戦会議のために集まってきたのは、僕とミールが島から戻って数時間後の事。

 今回 《水龍》メンバーのレイホー、カミラ、エラはリモート参加ではなく、直接来てもらっている。

 キラもファーストエラは別人ということを何とか納得したようなので、参加してもらった。

 ただ、ミーチャだけはエラと入れ替わりに《水龍》に移した。理屈では分かっていても、トラウマは克服できないだろうから……

 ただ、ミーチャを《水龍》へ行かせたのは、エラと引き離す目的もあるが、《水龍》に閉じこめてあるジジイの見張りをしてもらうためでもあった。

 女の子のような可愛い顔をしているが、ミーチャは男だしジジイに変な事をされる心配もないし……

 だが、ミクだけが不安そうな顔をしている。

「ミーチャ大丈夫かなあ? お爺さんに、変な事されていないかなあ?」

 そんな事を呟いているミクの方を、芽依ちゃんが振り向く。

「大丈夫よ、ミクちゃん。ミーチャ君は、あれでも男の子だし……」
「あのねえ芽依ちゃん。世の中には、両刀使いもいるんだよ」
「両刀使い!?」
「芽依ちゃんに散々エッチな事をしていた矢部も、実は両刀使いだよ」

 なに?

「芽依ちゃん。男性隊員も、矢部の被害に遭っていたのか?」

 芽依ちゃんは首を横にふる。

「いいえ、そのような事はありませんでした。ミクちゃん。矢部さんが両刀使いって本当なの?」
「本当だよ。ただし、矢部は両刀使いだけど、ショタコンなのよ」

 ショタコン?

 不意に何人かの視線が、ある人物に集中する。

「な……なんで、みんなそこで私を見るのですか!?」

 みんなに見られてキラは狼狽うろたえた。

「わ……私はただ、ミーチャを弟のように可愛いと思っているだけで……変な事は……」

 いかん、いかん。話が脱線した。

「しかし、ミク。なぜ、矢部の性癖を知っているんだ?」
「あのねえ、二百年前に矢部のオリジナル体が、痴漢で逮捕されたのだけど、その時にあたしのオリジナル体も式神を使って協力したの。その時に知ったのだけど、あいつ小さな男の子にも悪戯していたのよ」

 マジか!? もう死んでしまったが、もし矢部を生け捕りにしていたらミーチャが危なかったな。

 それはともかく……

「ジジイに関しては大丈夫だ。ナージャに聞いたが、ジジイが子供に悪戯したという事はないらしい。ジジイの興味は、あくまでも胸の大きな大人の女性だ。だから、ミーチャは安全だよ」

 ミクも安全だ……と、言うのはやめておこう。

 発令所の中で、式神を召還して暴れられたらかなわんし……
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