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第一章

アンケートに答えるだけで、報酬がもらえる簡単なお仕事でぇす!

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『どうせ、暇なんでしょ。モニターでもやってみない?』
 僕のパソコンに久しぶりに届いたメルマガ以外のメールには、そんな事が書いてあった。
 送り主は小中学校で同級生だった鹿取かとり香子きょうこ。まあ、幼なじみみたいなモノだが、別々の高校に行ってからは、SNSでのやりとりしかしていなかった。
 就職してから僕は海外のSNSに乗り換えてしまい、香子と使っていた国産SNSは滅多に使わなくなってしまい、香子ともすっかり疎遠になっていた。
 この国産SNSで久しぶりに呟いたのは、家族、親族に知られたくない情けない事情があったから。
 一ヶ月前、僕は会社を辞めた。それも自己都合で……
 せっかく就職したのに、バカな奴だと思われるかもしれない。
 だが、しかたない。
 コミュ障の僕に、営業なんてできるわけない。
 そんな適材適所も考えないで、製造現場にいた僕を、営業に配置転換した人事が悪い。
 そんな状況を、長年使っていなかったSNSに呟いたところ、香子からメールが届いたのだ。
『モニターってなに?』
 しばらく考えてから、僕は返事を書いた。
『アンケートに答えるだけで、報酬がもらえる簡単なお仕事でぇす!』
 はや!! 間髪を入れず返事が戻ってきた。
 パソコンの前に張り付いていたのか?
 しかし、僕が聞きたいのはそういう事じゃない。
 『モニター』という言葉に、僕は嫌な思い出があるのだ。
 大学在学中に『単位をやる』という教授の甘い言葉に乗せられて、ロボットスーツのモニター(テストパイロットとも言っていた)をやらされた事がある。元々、うちの大学では介護用ロボットスーツが開発されていたが、僕がモニターをしたのは軍事用だった。
 あの時の事は、思い出したくもない。
 そのせいで、何度も死にかけたのだ。
 とにかく、単位さえもらってしまえば、二度とあんなものに関わりたくない。
 就職活動中に、ロボットスーツを共同開発していた企業から『うちに就職してテストパイロットやらないか』という話があったが、当然断った。
 まあそれはさて置き、香子の言うモニターとやらはどんなことするんだ?
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