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第十四章

北島の資料

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 その日、僕たちは空き部屋を借りて資料の分析をする事になった。

 と言っても、膨大な書類にすべて目を通している時間はない。

 そこでファイルから取り出した書類を床に並べて、十分の一スケールPちゃんの予備機十二体総動員で書類を精査してもらった。

 三百枚近い書類の中から、今回の計画に必要な物と不要な物に分けられていく。その作業をPちゃんは一時間たらずでやりこなした。

 やはり、ミニPちゃんは連れてきてよかったな。

「ご主人様。書類の分類作業終了いたしました」
「ありがとうPちゃん。交代で充電しておいて」
「はい。そういたします」

 十二体のPちゃんは、部屋の隅にあるコンセントから充電を始めた。

「しかし、気になっていたのだけど、この村の電気はどこから引いているのですか? 水力発電とか太陽光発電とか使っていると、帝国軍のドローンに発見されそうだけど」

 僕の質問にアーリャさんが答える。

「大丈夫。発電機は地下五十メートルにあってね。空からは見つけられないよ」
「地下に? 地熱発電でもしているのですか? いや、それだって結構目立つはずだし」

 アーリャさんは首を横にふる。

「知らない方が幸せだよ」
「そういう言い方されたら、よけいに気になるのですけど」
「原子力電池さ」
「は?」

 今、『げんしりょくでんち』と聞こえたような?

 いや、翻訳ディバイスのディスプレーにも、きっちりと『原子力電池』と表示されている。

 これってボイジャーとかパイオニアとかの外惑星探査機が使っていた、臨界に達していないプルトニウムからゼーベック効果を利用して電力を取り出すというあの……

「大丈夫だよ。原子炉と違って、炉心崩壊《メルトダウン》の心配はないから」
「いや、でもプルトニウムが漏れる心配が……」
「大丈夫、大丈夫。三十年使っていたけど、一度も放射線漏れなんてなかったから」

 三十年間なかった放射線漏れが、今起きないという保証がどこにある。

 とにかく、この村にはあまり長居しない方が良さそうだな。

 Pちゃんが分類してくれた書類に、さっさと目を通して出発するか……

 まあ、それでも明日の朝以降になるけど。それまでは放射線漏れなんて起きないでくれよ。

 資料によると、帝国軍の軍船は装甲艦《アクラ》の他に木造帆船二十二隻。北島と南島、それを繋ぐ砂州に囲まれたベイス湾に停泊している。

 海岸付近に二十棟の兵舎が立ち並んでいて、推定五百人ほどの兵士が収容できる。

 現在も新しい兵舎を建設中。

 兵舎に入り切れない兵士は船内に寝泊まりしているらしい。

 続いて武器だけど、ほとんどフリントロック銃や青銅砲だが、自動小銃やロケット砲なども用意している。

 他に対空機銃の銃座が基地周辺二十カ所にあるのを確認。

 九九式や菊花で攻め込むとしたら、この銃座を先に破壊する必要があるな。

 海岸基地から奥へ一キロほど入った山の中腹に、地下施設への入り口がある。そこにも小規模な基地があった。
 
 その周囲にも、六門の対空砲が設置されている。

 山の山頂にはレーダードーム。

 対空砲より、こっちを先に潰す必要があるな。

 まあ、北島の帝国軍の布陣はだいたい分かったが、地下施設の内部の様子も知りたいな。

 ナージャの用意してくれた資料で構造は分かるのだが……

 内部の様子は僕らが調べるしかないな。

「なかなか精が出るのう」
「ええ……」

 ん? 今の声誰?


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