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第十四章

地下道

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 どうやら、ドローンのレーダー波を逆探で見つけたようだ。

「しょうがないね」

 アーリャさんは電話を切ると、部屋の真ん中へ行ってフローリングの床に手を伸ばした。

 トンと床を叩く。

 床の一部がスライドして、地下へ続く階段が現れた。

 こんな仕掛けもあったんか。

「さあ、あんたたち。一緒に来ておくれ」

 アーリャさんに促されて、階段を降りていく。

 五メートルほど下ると、平らな地下道があった。

 地下道は、壁も床の天井もコンクリートで塗り固められている。

 ただ、少々狭い。

 横幅も高さも二メートルはない。

 ひょっとすると、僕の身長よりも低いのでは?

 ゴチ!

「痛たた!」

 頭がぶつかった。やっぱり低いんだ。

「カイトさん、大丈夫ですか?」「ご主人様、大丈夫ですか?」

 ミールとPちゃんが、心配そうに僕を見つめる。

「大丈夫。ちょっと、頭をぶつけただけだから」

 アーリャさんが、こっちを振り向いた。

「このトンネル、天井低いから気をつけてね」

 そういう事は、先に言ってほしい。

「アーリャさん。このトンネルは、いつ作られたのですか?」
「ロボット達が、この村の建物を作った時に、いっしょに作ったんだ。外が放射性物質で汚染されても、家々を行き来できるようにね」
「ということは、三十年前に掘られたのですよね。大丈夫ですか? 崩れたりしませんか?」
「ああ大丈夫、大丈夫。このトンネルは、三十年間一度も崩れたことなんてないから」

 三十年間一度もなかったからといって、最初の崩落が今起きないという保証がどこにあるんだ?

 これ以上、ここにいると閉所恐怖症になりそうだな。と思った時、アーリャさんは一つの階段を登り始めた。

 地上に出るようだ。

 地下道から上がったら、そこはさっき地下に降りる前いた部屋と似た造りの部屋。村の建物は、すべて同じ造りなのかな?

「アーリャさん。地下から来たのですか?」

 声の方に目を向けると、パソコンディスクの前で栗色の髪をショートカットに切りそろえたボーイッシュな少女が、驚いたような表情でこっちを見ていた。

「地下から来ちゃ悪いかい? ライサ」

 この女の子、ライサと言うのか。

「いえ、悪くはないですが、地上からくるものと思っていました」
「私だけならいいのだけどね」

 アーリャさんは僕たちを指さした。

「こちらのお兄さんたちが、ドローンに見つかるとまずい事になりそうだと思ってね。そうなんだろ?」

 そこまで考えてくれていたのか。いや、確かに僕とミールの姿がドローンに映ったら非常にまずい。

「その通りです。僕らはかなり、帝国軍の恨みを買っているので」

 アーリャさんは、ライサの方へ向き直る。

「それで、ドローンの数は?」
「確認できているのは一機だけです。レーダー使ってもいいですか?」
「だめだ」
「しかし、三日前に新しいレーダーを、村からかなり離れたところに設置しました。使っても、村の位置は特定されません」
「敵は今ところ、私たちの存在にすら気がついていない可能性がある。レーダーを使えば、気づかれる」
「そうですか。でも、わざわざ南島にドローンを送って来たと言うことは、もう気づかれているのでは……」

 ライサはパソコンの方に向き直った。

「あ! 山頂に設置したカメラが、ドローンの姿を捉えました」
「映像を出して」
「はい」

 ライサがパソコンを操作すると、画面に円盤型ドローンの姿が現れる。

「あれは!?」

 ミールが目を丸くして映像を見つめた。

「フーファイターだ! どうやら、僕らを探しているようだ」
「でも、カイトさん。敵は北島に送った囮に騙されたのでは」
「矢納さんならあれで騙せると思うけど、小淵ならあれは囮で、僕らが何らかの手段で南島に上陸した可能性を考えるだろう」
「困りましたね」
「仕方ない。今日一日はこの中に隠れて、北島への偵察は明日に延期しよう」

 アーリャさんがこっちを振り向く。

「それがいいよ。いきなり北島に行くより、私たちが集めた資料に目を通してから行った方がいいだろう」
「ええ。それではお言葉に甘えてそうさせて頂きます」
「ライサ。このお兄さんに、北島の資料を見せて上げて」
「はーい」

 ライサはパソコンディスクから立ち上がると、横にあったロッカーから、分厚いファイルの束を取り出した。

 こんなにあるのか。こりゃ夜までかかりなりそうだな。
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