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第十四章

レムの呟き2

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 闇の中で思考が飛び交っていた。その思考を言葉にするとこんな感じだ。

「ミク・アヤノコージは期待通りだった。見事に能力をコントロールしている。この技術を、帝国内の能力者に伝授させれば、魔力暴走問題は解決するだろう」
「では、予定通り拉致しよう」
「だが、容易ではないぞ。おそらく、カイト・キタムラは我々の目論見に気がついただろう」
「なぜだ?」
「コブチが余計な情報をカイト・キタムラに流してしまった。エラ・アレンスキーとミク・アヤノコージを戦わせるためにお膳立てをしていたと。カイト・キタムラなら、そこから我々の計画を推測するかもしれない」
「それは不味いな。もし、そうならミク・アヤノコージを潜水艦から出さないかもしれない。そうなると拉致は、ほぼ不可能だ」
「ならば出てこざるを得ない状況を作り出せばよい。奴らはレアメタルカートリッジを欲している。それを手に入れるために、彼女が出てくるしかない状況を作るのだ」
「しかし、なぜコブチはそんな事を?」
「あやつは、今でも我らのコントロールから逃れようとしているようだ」
「我らに接続された状態でも、まだ逆らう意志が残っているのか。信じがたい」
「だが、そのような強靱な精神こそ、我らと融合するのに相応しい」
「ヤベはどうなった?」
「ヤベは接続が切れた。もはや、生きてはいまい」
「それは残念だ。ああいうユニークな精神も融合してみたかったのだが」
「だが、ヤベはそれほど惜しくはない。それよりも章白龍だ。三十年前に接触したが、あれほど美しい精神はなかった。何度となく接続しようと画策していたが、ことごとく失敗してきた。そうしている間に、章白龍は病に倒れてしまった」
「だが、治療の当てはあったようだ。ならばさっさと三つのレアメタルを渡して、治療させてしまえば良かったではないか? 死なれては融合できない」
「そうはいかん。こちらから進んで差し出してしまえば、何か裏があると警戒するだろう。仕方なく渡したという状況を作る必要がある」
「面倒なことだな」
「ところでヤナが生き残ってしまったが、どうする?」
「まず、カイト・キタムラの手の内を見るためにぶつけてみる。その戦いの中で死んでもらおう」

 この会話は瞬きする間に交わされていた。
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