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第十三章

マイクロマシン2(回想)

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 窓から逃げられないように見張られていたと、一瞬思った。だが、すぐに違うと分かる。

 そのドローンには見覚えがあったのだ。

 矢部が女子更衣室を盗撮するために使っていた物。

 確か、没収して小淵が預かっていたはず。

 では、あのドローンを飛ばしているのは矢部と小淵!

「待たせたな」

 声の方を向くと、矢納が銀色に輝く円筒を抱えていた。

「それは、なんですか?」

 とても、麻雀卓には見えない。

「面白いぞ。この円筒がスイッチ一つで麻雀卓に変形するんだ」

 矢納は円筒を床に下ろした。
 
「危ないから二メートルは離れていてくれ」

 そう言って矢納はリモコンを取り出す。

 ガッシャーン!

 窓ガラスの割れる音が鳴り響いたのはその時。

 音の方を見ると、窓ガラスが割れていた。その近くの床に、さっきのドローンが煙を噴いて転がっている。
 どうやら、ドローンが室内に飛び込んできたようだ。

「な……なんだ!? いったい……」

 スイッチを押すのも忘れて、矢納がその様子を見ていたその時、割れた窓の穴からワイヤー付きの弾丸が飛び込んできて天井に突き刺さる。

 誰かが外からワイヤーガンを撃ちこんだようだ。

「ウインチスタート」

 小淵の声が聞こえてきた。

 その直後、割れた窓の穴から小淵が飛び込んでくる。

 ワイヤーガンを使っている事から、ロボットスーツを用意してきたのかと思ったが、小淵は生身だった。しかし、その手にはレーザーガンが握られている。

 小淵は床に転がると、床の上に置いてある円筒に向かって射撃。レーザーを浴びて、円筒は溶け崩れていった。

 そうしている間に、矢部も室内に飛び込んできた。

「くそ!」

 矢納は踵を返して駆けだし、隣室へ逃げ込む。

 小淵は橋本晶の方を振り向いた。

「橋本さん。あまり無茶をしないで下さい」
「すみません」

 このとき、矢部が矢納の逃げ込んだ部屋に駆け込んでいく。

 それに気がついた小淵が慌てて叫ぶ。

「矢部さんも一人で行動しないで……」

 その直後、隣室から矢部の悲鳴が上がった。

「どわわわ! なんだ、これは!?」

 矢部に何かあったようだ。

 小淵がレーザーガンを構えて隣室へ向かう。

 橋本晶も後ろから続いた。

 隣室に入った二人が目にしたのは、虫のようなマイクロマシンに身体中を覆われていく矢部の姿。

「小淵君! 晶ちゃん! 助けてくれ!」

 叫んだ直後、矢部は顔までマイクロマシンに覆い尽くされる。

「やはり、あんた。俺に探りを入れに来ていたのだな」

 矢納の声が聞こえた。

 声の方に目を向けると、矢納が銀色の円筒を床に置いている。

「食らえ!」

 矢納がリモコンのボタンを押すと、円筒から、黒いシミのような物が出てきて床に広がっていった。

 黒いシミは急速に大きくなっていく。やがてシミは動く水たまりのように彼女に近づいていった。

「これは?」

 彼女は水たまりの正体に気がつく。水たまりのように見えるが、これはマイクロマシンの集合体。

 今、矢部の身体を覆い尽くしている物と同じ物だ。

 その集合体が、今にも彼女の身体を覆い尽くそうと迫ってくる。

「い……いやあああ!」

 あまりのおぞましさと恐怖に、彼女は悲鳴を上げた。
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