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第十三章

ハイド島 3

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 ドローン三号機はハイド島の砂浜に上陸。

 ドローン七号機はその沖合約百メートルにある、小さな中州に上陸して、そのカメラをハイド島に向けた。

 三号機……三カメから送られてくる映像と、七号機……七カメから送られてくる映像を横に並べて表示して待つこと五分。

 ハイド島の森から、潜水服に身を包んだミールとキラの分身体が現れた。

「ミール、キラ。三カメの映像から外れないように、分身体を砂浜の上で歩かせてくれ」
「はーい」「了解」

 ミールとキラの分身体は三カメに背中を向けて、砂浜の上を歩いていく。

 七カメの映像で見ていると、二人が三カメから三十メートルほど離れた時、草むらが揺れてフーファイターが姿を現した。

 さて、どう動くかな?

『ゲヒヒヒヒヒヒ』

 ん? なんだ? 今の下品な笑い声は……矢納課長の声のようだが

 声の発生源はフーファイターの外部スピーカー。

 まさか、スピーカーを切り忘れていた?

 それとも、そう思わせた罠?

 いや、これからミールとキラに話しかけるつもりでスピーカーのスイッチを入れたと考えるのが妥当だな。

『よお! ねえちゃん達!』

 ミールとキラの分身体はキョロキョロと周囲を見回す。もちろん、二人ともフーファイターが声を出したのは分かっているのだが、演技でこういう事をやっているのだ。

『ここだ、ここだ』

 フーファイターは、そこで高度を上げた。

『師匠。あれは』『フーファイターだわ』

 ミールとキラは互いに抱き合い、ぶるぶると震える。もちろん、これも演技。

『そう怯えるなよ。ねえちゃん達。北村は死んだのだろう?』
『そうだ。カイト殿は死んだ』『あなたがカイトさんを殺したんじゃないの!』

 まあ、本当は死んでいないけどね。

『北村が死んだのなら、もうあんたらをどうこうする気はない。それより、困っているのだろう? なんなら俺が面倒見てやってもいいぜ』

 面倒見るとか言いながら、どうせろくでもない事を企んでいるのだろうな。

『面倒を見る? 大きなお世話です。お皿に面倒見てもらうほど落ちぶれてはいません。ねえ。キラ』『ええ、師匠。あんな人語を喋る謎の物体の世話になんかなりたくありません』
『おいおい、ねえちゃん達。この円盤は俺が操っているドローンだ。操っている俺はいい男だぜ』
『いい男? 聞きましたか? キラ。いい男ですって』『聞きました。師匠。厚かましいにもほどがありますね。不細工のくせにいい男だなんて』
『ぶ……不細工だと! 俺と会った事もないくせに』
『映像ならカイト殿に見せてもらった。だから、おまえが不細工だという事は知っている』
『なんだとう!』
『日本の言葉ではブサメンというそうですね。イケメンのカイトさんに嫉妬する気持ちは分かりますが、いくら嫉妬しても、貴方の顔は良くなりませんよ』

 だから、僕はイケメンじゃないって……

『うるせえ! 男は顔じゃねえ! 心だ!』
『まるで心ならカイトさんより魅力があるみたいな言い方ですね』
『そう言っている』
『二百年もカイトさんに逆恨みをしているようなネチッこくって、キモい男に魅力など微塵もありません』
『師匠のおっしゃる通り。ウザ過ぎて、今すぐ死んでほしいレベルの男に魅力などない』
『言わせておけば……このアマども!』
『キャー! 怒った! 逃げるのよ! キラ』『はい。師匠』

 二人は川に飛び込んだ。
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