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第十三章

ハイド島 1

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 島の一つにフーファイターが降りていくのを、木片に偽装した有線水陸両用ドローンが確認したのは、爆雷攻撃を受けてから二十分ほど後のこと。

 僕らが潜んでいる水域から十キロ下流にある島だ。

 実はこれと同じドローンを、フーファイターが来る前からこの辺りの水域にばら蒔いてあった。

 なので、水中に居ながらにして、水上の情報を集める事ができたのだ。

 フーファイターが降りた島は、長さ二百メートル幅三十メートルほどの細長い島。

 マオ川の水量が増えたら水没するような島なのだと思うが、ここ数年は水没した事がないのか島中に大きな樹木が生い茂っている。

 隠れるにはうってつけだ。

「この島の名前は分かるかい?」

 ミールとレイホーに聞いてみたが、二人とも知らなかった。レイホーが言うには、このあたりの島にはほとんど名前などついてないそうだ。

 マオ川の流れによって消えてしまったり、現れたりするような島に一々名前など付けていられないのだろう。

 では、暫定的に名前を付けてみるか。

 エックス島……芸がないな。

 矢納課長のドローンが降りたから矢納島……この名前はスゴくイヤだ。

 ドローンが隠れているから、隠れ島……英語でハイド島。
 
 うん。これでいいな。

 発令所にはすでに、ミクとミーチャを除く全員が揃っていた。

 僕とPちゃんの説明が終わった後、意見を求めてみるとキラがまず手を上げる。

「フーファイターがハイド島に降りた後、この周辺に敵のドローンはいないのだろう。ならば、浮上しても大丈夫ではないのか?」
「確かにそうだが、浮上して何かやりたい事があるのかい?」
「まず、ミクを甲板に出してやろう。外の風に当ててやれば、船酔いも楽になるだろう」

 それは僕も考えていた。

「その後で、私の分身体を偵察に送り込むというのはどうだろう? フーファイターが本当にハイド島にいるのか確認した方がいいと思う」

 確かに、降りたと見せかけて低空飛行で隣の島へ移動していないとは言い切れない。

 しかし……

「偵察はこっちが見つかるというリスクもある。敵にはこっちが死んだと思いこませておきたい」
「分かっている。だから、私の分身体を使うのだ。分身体は姿を隠すことができるから、ドローンを使うより安全だ」

 確かに……だがカタログデータによると、フーファイターは地上レーダーを装備している。

 普通、分身体はレーダーに映らないが……

「キラ。君の分身体は、レーダーに映るのだよ」
「なに?」
「ミールの分身体は憑代に木札を使っている。ミクの憑代は高分子化合物。だが、君の憑代は金属だ。レーダーに映ってしまうのだよ」
「そうだったのか」
「だから、ここはミールの分身体に……」

 と、言い掛けたところへミールが口を挟んできた。

「待って下さい。カイトさん。ここはやっぱりキラに行ってもらいましょう」
「しかし、ミール……」
「もちろん、あたしの分身体も出します」
「ミールも?」
「あたしに良い考えがあるのです」

 何を思いついたのだ?
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