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第十三章
アクラ2
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成瀬真須美が口が開いたのは戦闘が終了した時……
「古淵君。カルカからの追撃部隊とナンモ解放戦線を同士討ちさせる事には成功したけど、これでどのくらいの時間を稼げたかしら?」
「三日ですね。カルカ艦隊を足止めできるのは。計算では僕たちが今の速度で逃げ続けても、内海に出る前に追いつかれます」
「そう。それに対する対策は?」
「簡単な事です。帝国艦隊を切り離して《アクラ》だけで逃げる事です」
「帝国艦隊を見捨てるというの?」
「見捨てるわけじゃありません。カルカ艦隊を指揮しているのは北村隊長のようです。こんな事を言ってはなんですが、あの人は甘すぎる。無益な殺生を何よりも嫌う。あの人がただ逃げるだけの帝国軍を殲滅するとは思えない。せいぜい、武装解除させた後、捕虜にするか、逃がすでしょう。兵士たちが殺される事はありません。まあ、それは初代の隊長ならですがね。二人目の隊長もそれほど性格は変わらないでしょう」
「だけど、それならなんで北村君はカルカ艦隊を率いて追いかけてくるのかしら?」
「それですよ。もしカルカ艦隊を率いているのが、北村隊長ではなくカルカ人だったら、その目的は艦隊殲滅が考えられます。しかし、率いているのは隊長。隊長はカルカでは言わばゲストです。そのゲストがわざわざ艦隊を借り受けて追いかけてきたとしたら、その目的は……」
「「目的は?」」
「我々です」
「という事は、北村君は私に一目惚れして追いかけてきたと……」
「そんなわけないでしょう」
「冗談よ、冗談」
「隊長の目的は、おそらく《アクラ》の拿捕と思われます。周囲にいる木造帆船など眼中にもないかと」
そこで矢部は怪訝な表情を浮かべた。
「しかし、何のために《アクラ》を拿捕する必要があるというのだい? まさかと思うが成瀬さんに結婚を申し込みに来たとでも? ないない、一億パーセントあり得ない」
「悪かったわね!」
余計な事を言った矢部に、成瀬真須美はヘッドロックをかける。
「ぐえええ! ごめんなさい! もう言いません」
アホな事をやっている二人をよそに、古淵は冷静に推測を言う。
「おそらく、隊長の目的はマテリアルカートリッジでしょう」
「マテリアルカートリッジ?」
矢部を押さえつけていた手を緩めて、成瀬真須美は古淵の方に顔を向けた。
「隊長はプリンターで何か大切な物を作ろうとした。しかし、レアメタルか何かのカートリッジが足りなくなって、それを持っているかもしれない我々を追いかけてきた。まあ、あくまでも僕の推測ですが」
「でも古淵君の推測が正しいなら、私たちが帝国艦隊と一緒に行動する事はまったく無意味どころか、却って艦隊を危険に晒しているという事になるわね」
「その可能性が高いです」
「では艦隊を切り離して《アクラ》だけ逃げるというのは正しい判断という事ね」
「そういう事です。なにより、ロータスでの戦いぶりを見た判断ですが、我々ではとてもカルカ艦隊に勝てません」
「分かったわ。ではこのことは提督代理に伝えて……」
成瀬真須美が、そこまで言い掛けた時、三人は突然不快感に襲われ頭を押さえた。
脳内にレムの声が響きわたったのだ。
『逃げる事は許さない。君たちはここでカルカ艦隊を迎え撃つのだ』
彼らはレムに逆らう事は出来ない。しかし、質問する自由はあった。
古淵は何とか不快感を押さえつけ、レムに質問を投げかける。
「それは、僕たちに死ねということですか? それともあなたは、我々の戦力で勝てると錯覚しているのですか?」
『それはない。君たちは私にとって大変貴重な存在だ。無駄死させるような事はしないよ。君たちがカルカ艦隊と戦っても勝てないことは分かっている。ただ、戦ってデータを集めてほしい。必要なデータが揃ったら逃げてくれて構わん。その際艦隊に犠牲が出てもいっこうに構わん。ああ! それと応援を送っておいた。まもなく到着する頃だから、甲板に出て出迎えてくれ』
三人は戦闘指揮所を出て甲板に向かう。
その途中でも脳内にレムの声が響いていた。
『応援者は二人だが、そいつらは捨て石にしてくれ。というより、死ぬようにし向けるんだ』
「まさか? その二人って」
成瀬真須美が呟きながら甲板に続く扉を開く。
月明かりに照らされる甲板上に二人の人物がいた。
「やはり。矢納とエラ・アレンスキー」
「古淵君。カルカからの追撃部隊とナンモ解放戦線を同士討ちさせる事には成功したけど、これでどのくらいの時間を稼げたかしら?」
「三日ですね。カルカ艦隊を足止めできるのは。計算では僕たちが今の速度で逃げ続けても、内海に出る前に追いつかれます」
「そう。それに対する対策は?」
「簡単な事です。帝国艦隊を切り離して《アクラ》だけで逃げる事です」
「帝国艦隊を見捨てるというの?」
「見捨てるわけじゃありません。カルカ艦隊を指揮しているのは北村隊長のようです。こんな事を言ってはなんですが、あの人は甘すぎる。無益な殺生を何よりも嫌う。あの人がただ逃げるだけの帝国軍を殲滅するとは思えない。せいぜい、武装解除させた後、捕虜にするか、逃がすでしょう。兵士たちが殺される事はありません。まあ、それは初代の隊長ならですがね。二人目の隊長もそれほど性格は変わらないでしょう」
「だけど、それならなんで北村君はカルカ艦隊を率いて追いかけてくるのかしら?」
「それですよ。もしカルカ艦隊を率いているのが、北村隊長ではなくカルカ人だったら、その目的は艦隊殲滅が考えられます。しかし、率いているのは隊長。隊長はカルカでは言わばゲストです。そのゲストがわざわざ艦隊を借り受けて追いかけてきたとしたら、その目的は……」
「「目的は?」」
「我々です」
「という事は、北村君は私に一目惚れして追いかけてきたと……」
「そんなわけないでしょう」
「冗談よ、冗談」
「隊長の目的は、おそらく《アクラ》の拿捕と思われます。周囲にいる木造帆船など眼中にもないかと」
そこで矢部は怪訝な表情を浮かべた。
「しかし、何のために《アクラ》を拿捕する必要があるというのだい? まさかと思うが成瀬さんに結婚を申し込みに来たとでも? ないない、一億パーセントあり得ない」
「悪かったわね!」
余計な事を言った矢部に、成瀬真須美はヘッドロックをかける。
「ぐえええ! ごめんなさい! もう言いません」
アホな事をやっている二人をよそに、古淵は冷静に推測を言う。
「おそらく、隊長の目的はマテリアルカートリッジでしょう」
「マテリアルカートリッジ?」
矢部を押さえつけていた手を緩めて、成瀬真須美は古淵の方に顔を向けた。
「隊長はプリンターで何か大切な物を作ろうとした。しかし、レアメタルか何かのカートリッジが足りなくなって、それを持っているかもしれない我々を追いかけてきた。まあ、あくまでも僕の推測ですが」
「でも古淵君の推測が正しいなら、私たちが帝国艦隊と一緒に行動する事はまったく無意味どころか、却って艦隊を危険に晒しているという事になるわね」
「その可能性が高いです」
「では艦隊を切り離して《アクラ》だけ逃げるというのは正しい判断という事ね」
「そういう事です。なにより、ロータスでの戦いぶりを見た判断ですが、我々ではとてもカルカ艦隊に勝てません」
「分かったわ。ではこのことは提督代理に伝えて……」
成瀬真須美が、そこまで言い掛けた時、三人は突然不快感に襲われ頭を押さえた。
脳内にレムの声が響きわたったのだ。
『逃げる事は許さない。君たちはここでカルカ艦隊を迎え撃つのだ』
彼らはレムに逆らう事は出来ない。しかし、質問する自由はあった。
古淵は何とか不快感を押さえつけ、レムに質問を投げかける。
「それは、僕たちに死ねということですか? それともあなたは、我々の戦力で勝てると錯覚しているのですか?」
『それはない。君たちは私にとって大変貴重な存在だ。無駄死させるような事はしないよ。君たちがカルカ艦隊と戦っても勝てないことは分かっている。ただ、戦ってデータを集めてほしい。必要なデータが揃ったら逃げてくれて構わん。その際艦隊に犠牲が出てもいっこうに構わん。ああ! それと応援を送っておいた。まもなく到着する頃だから、甲板に出て出迎えてくれ』
三人は戦闘指揮所を出て甲板に向かう。
その途中でも脳内にレムの声が響いていた。
『応援者は二人だが、そいつらは捨て石にしてくれ。というより、死ぬようにし向けるんだ』
「まさか? その二人って」
成瀬真須美が呟きながら甲板に続く扉を開く。
月明かりに照らされる甲板上に二人の人物がいた。
「やはり。矢納とエラ・アレンスキー」
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