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第十二章

やっかいな奴?

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「ええっと……それは……」
「頼む。私も連れて行ってくれ。必ず、役に立つ」

 オロオロしている芽依ちゃんに、エラは執拗に懇願する。

「そういう事は……私に言われても困ります。司令官に話してもらわないと……」
「なるほど。もっともな話だな」

 そうだな。そういう事は司令官に……て、僕じゃないか!

「して、指令官殿は、どちらに?」

 エラの質問に、芽依ちゃんは無言で僕を指さして答えた。

 その横でミクも無言で僕を指さす。

 エラは僕の前に来て、ひざまずいた。

「貴殿が指令官か?」
「一応、そういう事になっているが……」……『司令官』なんていう大層な役職ではないが……

「先ほどは、ヤベと間違えて失礼した」
「いや……間違えは誰にでもあるから……」
「改めて貴殿にお願いしたい。貴殿の部隊に加えていただきたい」

 こいつを仲間に加えるのヤダな……待て、ここは毅然とした態度で断るべきじゃないのか。こっちには断るべき正当な理由がある。

 このエラは他のエラとは別人かもしれないが、性格に問題がある事に変わりはない。

 それを理由に不採用という事に……

「エラ・アレンスキー。君を僕らの……」……仲間にする事はできないと言おうとしたその時、横から大声で割り込む者がいた。

「すばらしい話だわ! エラ・アレンスキーさんが戦力に加わるなんて」

 アーニャさん! なぜこのタイミングで口を挟む! てか、あんたいつの間に地下から出てきた!?

 アーニャはさらにエラの両手を握りしめ。

「エラ・アレンスキーさん。先ほどの戦いぶり、感服したわ」
「む? そうか。そう言ってもらえると嬉しいな」
「あなたが私たちの戦力に加わってくれるというなら、心強いわ」
「任せてくれ」

 だあ! 何勝手な事やってくれているんだ! あんたは……

「北村君。エラ・アレンスキーさんさえ加われば、次の作戦はばっちりよ。向こうの船にも九十九式が二機いるというから、正直心配だったけど、彼女さえ味方にできれば心配ないわね。君と森田さんが二人がかりでも勝てなかったのだから……」

 負けたのは、あんたがいきなり『停戦しろ』と言ったからだろう!

 今一歩で、ラ○ンハ○ト艦隊を打ち破るところだったのを、政府からの停戦命令で勝ちを逃したヤ○提督、あるいは今一歩でヤ○トを沈めるところを本国からの通信に邪魔されたド○ル将軍はこんな気分だったのだろうか?
 
「あ! いけない」

 アーニャを黙らせようとしたとき、突然何かを思い出したかのように、相模原月菜が叫んだ。

「大切な事を伝えに来たのに、森田さんとやり合っているうちについ忘れて……北村君! 早く隠れて! ここにいてはいけないわ」
「隠れる? なんで?」
「やっかいな奴が来るのよ」

 やっかいな奴? もうエラというやっかいな奴が出てきているが……これ以上、どんなやっかいな奴が出てくるというのだ?

「その前に、一応確認したいのだけど、ベジドラゴンが噂している勇者カイトとは北村君のことなの?」

 またか……

「まあ……そう呼ばれているらしい。ただし、レッドドラゴン一万頭を殲滅したとか、帝国軍百個師団を殲滅したとかというのはフェイクニュースだからな」
「フェイクニュースなの? それじゃあ、ナーモ族のカ・モ・ミールという女の子を恋人にしているというのは?」

 そんな事まで伝わっていたのか。

「それは……」

 いや、ここは下手に誤魔化さないで、はっきり認めた方が、後々面倒がなくていいだろ。

「ミールと恋人という事は事実だ」
「事実なの? まずい事になったわね」

 まずい? なんで?

「実は、それを聞いて激怒している人がいるのよ」

 誰が?

「ここにいたかあ!」

 え?

 声のした方を振り向くと、役所の出入り口に見知らぬ一人の女が立っていた。
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