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第十二章

一番避けたい事態に……

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「芽依ちゃん。相模原さん。お兄ちゃんを連行してきたよ」
「北村君? 北村君なの?」 

 相模原月菜が駆け寄ってきた。

 一方、芽依ちゃんの方は動かない。というより、僕同様動けないのだろう。

「や……やあ……久しぶり……」

 我ながら、ぎこちない挨拶だな……

「久しぶり? そうか、君は生データから作られたのだったわね」
「君にふられたのが高校三年の時……僕の体感時間では六年ぶりかな」

 別に攻めるつもりで『ふられた』と言ったのではないが、相模原月菜は一瞬顔をしかめた。

「やはり君は生データから作られたのね。電脳空間サイバースペースの君とは、何度もその事について話をしたのにな」

 話をしたのか? まあ、二百年も時間があったのだから……

「話をして、もう一度つきあおうという事になったのだけどな」

 え? そうなの?

「北村さん! 騙されないで下さい! 電脳空間サイバースペースで相模原さんと話をしたのは事実ですが、そんな事にはなっていません」
「ちっ」

 相模原月菜は芽依ちゃんの方を向いて舌打ちをする。という事は嘘か……

「冗談よ、冗談。電脳空間サイバースペースでは『僕は香子が好きだ。もう君とはつき合えない』とはっきりふられたわ。それで私も君の事は諦めた」
「諦めたというのも嘘です! 相模原さんは、度々誘惑しようとしていました」

 相模原月菜は顔をしかめて、芽依ちゃんの方を振り向いた。

「香取さんの腰巾着は黙っていなさい!」
「誰が腰巾着ですか!」
「腰巾着が気に入らないなら、金魚の○○○と言ってあげましょうか?」
「なんてお下品な。北村さん聞きましたか? 相模原さんは男性の前でも、平気で下品な事を言う人ですよ」
「う! 違うのよ! 北村君! 今のは弾みで言っただけ。普段の私は、こんな事は言わないわ」

 頭痛が痛い。ミールとPちゃんの喧嘩だけも大変なのに勘弁してくれ!

「おい、サガミハラ。いつまでも内輪話をしていないで説明してくれないか。私がヤベとコブチだと思って戦っていたこいつらは何者なのだ?」

 エラに説明を求められ、相模原月菜は振り向いた。

「この金のロボットスーツは、北村海斗君。私の彼氏です」
「元彼です!」

 芽依ちゃんが間髪を入れずに訂正する。

「その男とおまえの関係などどうでもいい。とにかく、そいつはヤベではないのだな。では、こっちの女は?」
「彼女は森田芽依さん。リトル東京の元市長で、現在は防衛隊最高司令官である森田 たもつ氏の娘です」
「なに!? それならそうと先に言え!」
 
 突然、エラが芽依ちゃんの前にひざまずいた。あの居丈高なエラにしては信じられない態度だな。

「申し訳ない! モリタ氏の御息女とはつゆ知らず、とんだ無礼を働いた。許してほしい」

 エラに謝られて、芽依ちゃんは狼狽えた。

「え? え? え? なんで謝るのですか?」
「申し訳ない! 申し訳ない! 申し訳ない!」
「ちょ……エラ・アレンスキーさん。そんな一方的に謝られても困るのですけど……」

 いつも一方的に謝って、僕を困らせている君がそれを言うのか。

「では、許してくれるか?」
「ええっと……事情が分からないのですけど……」
「事情なら先ほど話したが、私は帝国に復讐するためにリトル東京に行き、是非その戦力に加わりたいと希望している。しかし、手ぶらでは受け入れてもらえないと思うので、モリタ氏の娘……つまり貴女に狼藉を働いたヤベを討ち取って、その首を手土産にしようと思っていた。ところが間違えで、よりにもよって貴女を攻撃してしまった。許してほしい」

 間違えに便乗して、エラを始末しようとしていたなんて……今更言えんな。

「ああ! その事でしたら、気にしていません。ま……間違えは誰にでもある事ですから……はは……」

 桜色のロボットスーツに隠れている芽依ちゃんの表情は見えないが、きっとひきつりまくっているのだろう。

「そうか。許してくれるのか。メイ殿は心が広い」
「はい。許しますから、とにかく顔を上げて下さい」
「では、ついでに頼みたいのだが、帝国艦隊を追撃する部隊に私も加えてほしい」
「……そ……それは……」

 一番避けたい事態に……どうするか……?
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