上 下
446 / 848
第十二章

元カノ

しおりを挟む
「さ……相模原さん!? なぜ、ここに……」

 芽依ちゃんもかなり驚いている。

「私はリトル東京軍事顧問と同行してきたのよ。通訳としてね」

 軍事顧問? では、やはりナンモ解放戦線はリトル東京の指示で動いていたのか?

「いろいろと誤解があったみたいだけど、リトル東京では帝国軍がカルカに向かっている事を知って救援を出すことにしたのよ。だけど、戦力が足りない。だから、ナンモ解 放戦線を支援してカルカ救援に向かうはずだったのよ」

 だった?

「ところが、カルカが撃退に成功したのか、帝国軍がロータスに敗走してきているじゃない。こっちもせっかく戦力を集めたのだし、敗走してくる帝国軍にとどめを刺してやろうとロータスに向かったわけ。まさか、一足先に逃げられて、私たちがカルカ軍と戦っていたなんて思わなかったわよ。てっきり、ロボットスーツは裏切り者の矢部と古淵だと思っていたわ」
「で……でも、私たちの動きは、母船に逐一知らせていたはずですよ」

 それを聞いた相模原月菜は渋そうな顔をしてエラを指さす。

「母船との通信が途絶えたのはこの人のせいよ」

 エラのせい?

「一台しかない、衛星通信機をこの人が壊すから……」
「私が悪いのではない! 私が近づいただけで壊れるポンコツが悪い」

 なるほど。何かの事情でエラが高周波磁場を発生させてしまい、その範囲内に通信機があったという事か。

「ところで森田さん。地下でアーニャ・マレンコフさんに聞いたのだけど、北村君が来ているそうね。再生されたの?」
「再生しましたけど」
「どこにいるの?」

 実は相模原月菜の姿を見た瞬間、僕は条件反射で庭木の陰に隠れてしまったのだ。

 それでさっきから庭木の陰から様子を伺っているのだが……

 え? なんで出ていかないかって……

 だってなあ……元カノの前に出るなんて気まずいじゃん。

 今更どんな顔して会えばいいか分からんし……

「さあ? さっきまでここにいましたが……」
「会わせて」
「今更会って、どうするというのですか?」

 なんか……芽依ちゃんの口調がいつになく辛辣だな……

「どうするって……私が北村君に会っちゃいけないの?」
「相模原さん。高校時代に北村さんをふったのですよね。今更会ってどうするというのですか?」
「そ……そんな昔のこと……」
「昔じゃありません。今回再生された北村さんは、生データから再生された人なのです」
「え? どういう事?」
「つまり、北村さんが二十三歳の時に取られたデータそのものから再生されたのです。だから、電脳空間サイバースペースで相模原さんと再会した記憶がありません」
「でも、二十三歳なら高校時代に私とつきあった記憶はあるのよね?」
「ありますよ。でも、相模原さんの記憶では、それは電脳空間サイバースペースを含めて二百年前ですよね。北村さんに取っては数年前の事です。昔じゃありません」
「だ……だけど……」
「それに、北村さんが今の相模原さんに会ったら、ショックを受けると思うのです」

 え? いや、会っても別にショックは受けないが……気まずいけれど……

「なんで私と会うとショックなのよ?」
「私の口からそれを言うのはちょっと……ご自分で考えて下さい」
「はあ?」
「だって、北村さんが知っている相模原さんって、女子高生の頃ですよね」
「何が言いたいのよ?」
「私は別に……相模原さんがデータを取られた歳が二十五だとか、惑星上で再生されてから何年経つかとか……そんな失礼な事を言うつもりはありませんが……」

 いや、言っているだろ! 思い切り……

「ああ! そう! ようするに、北村君にとってファーストキスの相手が、こんなオバさんになったのを見たらショックを受ける。そう言いたいのね」
「オバさんだなんて、そんな失礼な事を思ってもいませんし……」
「いや、思っているでしょ。だいたい何よ。あんただって、再生されて五年は経つはずよ」
「はい。私、十七の時にデータを取りましたから、五年経過して北村さんのちょうど一つ下ですね」
「ぐぬぬ……は! そういう事ね」
「どうかしました?」
「森田さん。あなた、香取さんの腰巾着のように振る舞っていたけど、あなたこそ香取さんから北村君を奪おうと狙っていたのでしょう」
「そ……そんな事ありません」

 いかん! やめさせないと……しかし、どうやって……

 ミールとPちゃんだけでも大変なのに……

 あれ? 足が動かない。

 しまった! 両足の増力機構ブーストシステムだけでなく補助機構アシストシステムまで死んでいる。肝心な時に……

 
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめる予定ですー!

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

ゲームで第二の人生を!~最強?チート?ユニークスキル無双で【最強の相棒】と一緒にのんびりまったりハチャメチャライフ!?~

俊郎
SF
『カスタムパートナーオンライン』。それは、唯一無二の相棒を自分好みにカスタマイズしていく、発表時点で大いに期待が寄せられた最新VRMMOだった。 が、リリース直前に運営会社は倒産。ゲームは秘密裏に、とある研究機関へ譲渡された。 現実世界に嫌気がさした松永雅夫はこのゲームを利用した実験へ誘われ、第二の人生を歩むべく参加を決めた。 しかし、雅夫の相棒は予期しないものになった。 相棒になった謎の物体にタマと名付け、第二の人生を開始した雅夫を待っていたのは、怒涛のようなユニークスキル無双。 チートとしか言えないような相乗効果を生み出すユニークスキルのお陰でステータスは異常な数値を突破して、スキルの倍率もおかしなことに。 強くなれば将来は安泰だと、困惑しながらも楽しくまったり暮らしていくお話。 この作品は小説家になろう様、ツギクル様、ノベルアップ様でも公開しています。 大体1話2000~3000字くらいでぼちぼち更新していきます。 初めてのVRMMOものなので応援よろしくお願いします。 基本コメディです。 あまり難しく考えずお読みください。 Twitterです。 更新情報等呟くと思います。良ければフォロー等宜しくお願いします。 https://twitter.com/shiroutotoshiro?s=09

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」 ────何言ってんのコイツ? あれ? 私に言ってるんじゃないの? ていうか、ここはどこ? ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ! 推しに会いに行かねばならんのだよ!!

処理中です...