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第十二章
ヨーヨー
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プラズマボールがこちら向かってくると同時に、芽依ちゃんは右手の青いヨーヨーを前方に投げる。
ヨーヨーの紐が伸びきった時、プラズマボールの軌道が変わった。
プラズマボールはそのまま、開け放たれた窓の外へ出て行く。
そうか!
「芽依ちゃん。そのヨーヨーには電磁石が仕込んであるのだね」
「そうです。北村さんが使っていた電磁石弾は一回使い捨てでしたが、あれをヨーヨーに仕込めば何度でも回収して使えます。電磁石のON OFFにはBMIを使っています」
なるほど。
「ふん! 確かに私のプラズマボールは防げるようだな。だが、攻撃はどうする? 超合金なぞ、私に近づくだけで……ウギャ!」
エラが最後に言った『ウギャ!』は、芽依ちゃんが投げた赤いヨーヨーを額にぶつけられて時にあげた悲鳴。
「エラ・アレンスキーさん。ヨーヨーが金属製だなんて、いつから錯覚していました? このヨーヨーの紐は単結晶炭素繊維。ヨーヨー本体はC/Cコンポジットです。高周波磁場の影響は受けません。紐の長さも十メートルあって、あなたの高周波磁場の外側から攻撃できます」
エラは額から血を流し、恨みがましい目をこちらに向けていた。
「貴様……よくも、私の美しい顔を……」
そう言って、エラはプラズマボールを連続で放ってきた。
しかし、いくらプラズマボールを放っても、芽依ちゃんの電磁ヨーヨーに軌道を変えられて僕らには届かない。
プラズマボールの攻撃が止んだ隙に、芽依ちゃんは赤いヨーヨーを放った。狙いはエラの顔面。
エラは両腕を顔面でクロスさせてガードする。
カーン!
甲高い音を立ててヨーヨーが跳ね返った。
よく見ると、エラの腕には木製の手甲が装着されている。
「私の能力では金属しか防げないが、金属製でなくても顔さえ防御すれば私にダメージを与える事はできんぞ」
確かに、エラの胴体や四肢は皮鎧で防御されていた。固いけど軽いC/Cコンポジットのヨーヨーではダメージを与えられない。
しかし……
「ウギャア!」
手甲だけで顔を全部隠すのは不可能。手甲の隙間からはみ出している耳を、僕は拳銃で狙って非致死性ゴム弾を撃ち込んだ。
エラは左耳を押さえて床をのたうち回る。
しばらくして、むっくりと起き上がり……
「殺す……おまえ達……絶対……」
再びプラズマボールを放とうとするエラに向かって、芽依ちゃんは冷静に声をかけた。
「エラ・アレンスキーさん。その前に周囲を見て下さい。このままではあなたが焼け死にますよ」
「なに!?」
エラは周囲を見回した。
「うわあ! 燃えてる! 燃えてる!」
エラの放ったプラズマボールが、木の壁やカーペット、家具類に当たって引火していたのだ。
「芽依ちゃん。外に出よう」
「はい」
僕たちがバルコニーに飛び出すと、ミクの式神、アクロが待っていた。
「ミク! 頼んだぞ」
「任せて! お兄ちゃん」
その声は上空から聞こえてくる。見上げると金色の竜が飛んでいた。
「あちち!」
悲鳴を上げてエラがバルコニーに飛び出して来たときには、僕たちは空中に逃れていた。
町長室では、火の手がかなり回たらしく、モクモクと煙が立ち上っている。
ていうか、今まで戦っていて、よく火事にならなかったものだな……
皮鎧に引火した火を叩き消しているエラに、アクロが近寄って行った。
ヨーヨーの紐が伸びきった時、プラズマボールの軌道が変わった。
プラズマボールはそのまま、開け放たれた窓の外へ出て行く。
そうか!
「芽依ちゃん。そのヨーヨーには電磁石が仕込んであるのだね」
「そうです。北村さんが使っていた電磁石弾は一回使い捨てでしたが、あれをヨーヨーに仕込めば何度でも回収して使えます。電磁石のON OFFにはBMIを使っています」
なるほど。
「ふん! 確かに私のプラズマボールは防げるようだな。だが、攻撃はどうする? 超合金なぞ、私に近づくだけで……ウギャ!」
エラが最後に言った『ウギャ!』は、芽依ちゃんが投げた赤いヨーヨーを額にぶつけられて時にあげた悲鳴。
「エラ・アレンスキーさん。ヨーヨーが金属製だなんて、いつから錯覚していました? このヨーヨーの紐は単結晶炭素繊維。ヨーヨー本体はC/Cコンポジットです。高周波磁場の影響は受けません。紐の長さも十メートルあって、あなたの高周波磁場の外側から攻撃できます」
エラは額から血を流し、恨みがましい目をこちらに向けていた。
「貴様……よくも、私の美しい顔を……」
そう言って、エラはプラズマボールを連続で放ってきた。
しかし、いくらプラズマボールを放っても、芽依ちゃんの電磁ヨーヨーに軌道を変えられて僕らには届かない。
プラズマボールの攻撃が止んだ隙に、芽依ちゃんは赤いヨーヨーを放った。狙いはエラの顔面。
エラは両腕を顔面でクロスさせてガードする。
カーン!
甲高い音を立ててヨーヨーが跳ね返った。
よく見ると、エラの腕には木製の手甲が装着されている。
「私の能力では金属しか防げないが、金属製でなくても顔さえ防御すれば私にダメージを与える事はできんぞ」
確かに、エラの胴体や四肢は皮鎧で防御されていた。固いけど軽いC/Cコンポジットのヨーヨーではダメージを与えられない。
しかし……
「ウギャア!」
手甲だけで顔を全部隠すのは不可能。手甲の隙間からはみ出している耳を、僕は拳銃で狙って非致死性ゴム弾を撃ち込んだ。
エラは左耳を押さえて床をのたうち回る。
しばらくして、むっくりと起き上がり……
「殺す……おまえ達……絶対……」
再びプラズマボールを放とうとするエラに向かって、芽依ちゃんは冷静に声をかけた。
「エラ・アレンスキーさん。その前に周囲を見て下さい。このままではあなたが焼け死にますよ」
「なに!?」
エラは周囲を見回した。
「うわあ! 燃えてる! 燃えてる!」
エラの放ったプラズマボールが、木の壁やカーペット、家具類に当たって引火していたのだ。
「芽依ちゃん。外に出よう」
「はい」
僕たちがバルコニーに飛び出すと、ミクの式神、アクロが待っていた。
「ミク! 頼んだぞ」
「任せて! お兄ちゃん」
その声は上空から聞こえてくる。見上げると金色の竜が飛んでいた。
「あちち!」
悲鳴を上げてエラがバルコニーに飛び出して来たときには、僕たちは空中に逃れていた。
町長室では、火の手がかなり回たらしく、モクモクと煙が立ち上っている。
ていうか、今まで戦っていて、よく火事にならなかったものだな……
皮鎧に引火した火を叩き消しているエラに、アクロが近寄って行った。
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