428 / 848
第十二章
フッ化重水素レーザー
しおりを挟む
通信が入ったのは運河を越えた時……
ミクからだった。
『お兄ちゃん。町役場に着いたよ』
「様子は?」
『玄関前で二人の人が血を流して倒れている。あれ、警備員の人だよ』
もう、中に入られてしまったか。
『中から誰か出てきた……きゃ!』
「ミク! どうした?」
『あいつ……レーザー撃ってきた』
レーザー? なぜそんな物? いや、ナージャはリトル東京に行ってきたという。そこで供与されたのかもしれない。
とにかく、入手ルートはこの際どうでもいい。敵がレーザーを持っているなら対策を立てないと……
「ミク。大丈夫か?」
『オボロの角を一本やられちゃった。再生に少し時間がかかるけど、あたしは無事だよ』
「レーザーはオボロの結界で防げないのか?」
『無理! 結界は可視光線通しちゃうから』
「よし。僕がいいというまで、建物の陰に隠れていろ」
『分かった』
レイホーを呼び出した。
『おにいさん。どうしたね?』
「レイホー。役場に攻め込んだ敵がレーザーを持っている。役所周辺に攪乱幕を張れないか?」
『二分待って。二分後に攪乱幕を入れたロケット魚雷を発射するね』
「頼む」
レイホーとの通信を切ったとき、爆音が轟いた。
町の南と北で爆煙が上がっている。
今、二つの橋を爆破したのだ。
「北村さん」
横から芽依ちゃんの声。
「ミクちゃんから、敵の使ったレーザー銃の映像が送られてきたのですが……」
芽衣ちゃんは、ミクから送られて来た映像を僕のバイザーに転送した。
この銃は?
「フッ化重水素レーザーです。迂闊に攻撃すると、役所一帯がフッ化水素で汚染されます」
厄介だな。
「芽依ちゃん。銃器は使用禁止。レーザー攪乱幕が張れたら、奴の背後に降りて銃撃できないように、狙撃手の腕を押さえてくれ。骨をへし折ってもいいから、レーザー銃を無傷で取り上げるんだ。僕は正面に回って奴を牽制するから、その間にやってくれ」
「北村さん。正面に回るのは危険です。正面には私が回りますから……」
「いや……それは……」
「北村さんが、負傷したら作戦全体に支障が出ます」
ううん、危険な事は男のやる事なんて言ったら、また『ええかっこしい』と言われるな……
「分かった。おさえ役は僕がやる。芽依ちゃんはくれぐれも危険のないように」
「はい」
レイホーからの通信が入ったのはその時。
『お兄さん。今、ロケット魚雷発射したね』
「ありがとう。レイホー」
『大盤振る舞いの四発撃ったね。役所上空で爆発したら、三十秒後に突入してね。レーザー攪乱効果は十分ぐらい続くから、それまでに片づけるね』
話を聞いている間にロケット魚雷が飛んできた。
役所上空で爆発。
程なくして役所一帯がキラキラと輝く金属箔で覆われる。
「芽依ちゃん、行くよ」
「はい」
僕達は、濃密な金属箔漂う空域へ飛び込んでいった。
ミクからだった。
『お兄ちゃん。町役場に着いたよ』
「様子は?」
『玄関前で二人の人が血を流して倒れている。あれ、警備員の人だよ』
もう、中に入られてしまったか。
『中から誰か出てきた……きゃ!』
「ミク! どうした?」
『あいつ……レーザー撃ってきた』
レーザー? なぜそんな物? いや、ナージャはリトル東京に行ってきたという。そこで供与されたのかもしれない。
とにかく、入手ルートはこの際どうでもいい。敵がレーザーを持っているなら対策を立てないと……
「ミク。大丈夫か?」
『オボロの角を一本やられちゃった。再生に少し時間がかかるけど、あたしは無事だよ』
「レーザーはオボロの結界で防げないのか?」
『無理! 結界は可視光線通しちゃうから』
「よし。僕がいいというまで、建物の陰に隠れていろ」
『分かった』
レイホーを呼び出した。
『おにいさん。どうしたね?』
「レイホー。役場に攻め込んだ敵がレーザーを持っている。役所周辺に攪乱幕を張れないか?」
『二分待って。二分後に攪乱幕を入れたロケット魚雷を発射するね』
「頼む」
レイホーとの通信を切ったとき、爆音が轟いた。
町の南と北で爆煙が上がっている。
今、二つの橋を爆破したのだ。
「北村さん」
横から芽依ちゃんの声。
「ミクちゃんから、敵の使ったレーザー銃の映像が送られてきたのですが……」
芽衣ちゃんは、ミクから送られて来た映像を僕のバイザーに転送した。
この銃は?
「フッ化重水素レーザーです。迂闊に攻撃すると、役所一帯がフッ化水素で汚染されます」
厄介だな。
「芽依ちゃん。銃器は使用禁止。レーザー攪乱幕が張れたら、奴の背後に降りて銃撃できないように、狙撃手の腕を押さえてくれ。骨をへし折ってもいいから、レーザー銃を無傷で取り上げるんだ。僕は正面に回って奴を牽制するから、その間にやってくれ」
「北村さん。正面に回るのは危険です。正面には私が回りますから……」
「いや……それは……」
「北村さんが、負傷したら作戦全体に支障が出ます」
ううん、危険な事は男のやる事なんて言ったら、また『ええかっこしい』と言われるな……
「分かった。おさえ役は僕がやる。芽依ちゃんはくれぐれも危険のないように」
「はい」
レイホーからの通信が入ったのはその時。
『お兄さん。今、ロケット魚雷発射したね』
「ありがとう。レイホー」
『大盤振る舞いの四発撃ったね。役所上空で爆発したら、三十秒後に突入してね。レーザー攪乱効果は十分ぐらい続くから、それまでに片づけるね』
話を聞いている間にロケット魚雷が飛んできた。
役所上空で爆発。
程なくして役所一帯がキラキラと輝く金属箔で覆われる。
「芽依ちゃん、行くよ」
「はい」
僕達は、濃密な金属箔漂う空域へ飛び込んでいった。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
光のもとで1
葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。
小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。
自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。
そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。
初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする――
(全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます)
10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。
マスターブルー~完全版~
しんたろう
SF
この作品はエースコンバットシリーズをベースに作った作品です。
お試し小説投稿で人気のあった作品のリメイク版です。
ウスティオ内戦を時代背景に弟はジャーナリストと教育者として、
兄は軍人として、政府軍で父を墜とした黄色の13を追う兄。そしてウスティオ
の内戦を機にウスティオの独立とベルカ侵攻軍とジャーナリストとして、
反政府軍として戦う事を誓う弟。内戦により国境を分けた兄弟の生き方と
空の戦闘機乗り達の人間模様を描く。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

平和国家異世界へ―日本の受難―
あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。
それから数年後の2035年、8月。
日本は異世界に転移した。
帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。
総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる――
何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。
質問などは感想に書いていただけると、返信します。
毎日投稿します。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる