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第十二章

死ぬよりマシだと思ってくれ

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「北村さん。これでいいのですか?」

 町の上空を飛んでいる途中、不意に芽依ちゃんが不満そうな声で言った。

「え? いいって? 何が?」
「司令官は北村さんですよ。なんで、あの人が仕切るのです?」

 ううん……そんな事言ってもなあ、僕って仕切るのは苦手だし、誰かが代わりにやってくれたらむしろにありがたいし……

「まあまあ、アーニャさんは僕らより経験も豊富だし……」
「そうですね」

 それでも、芽依ちゃん不満そうだ。

「でも……私は、北村さんの指揮下で戦いたいのです」

 そんな事言われても……

 そうしているうちに、僕らは堀を越えて町の外へ出た。

 下を見ると武装集団が町へ向かっているが、やはり統率がまるでとれていないな。これで帝国軍と戦ったら、ひとたまりもないぞ。

「北村さん。砲兵陣地が見えてきました」

 芽依ちゃんの指さす先で、五門の青銅砲が並んでいた。

「武器はどうします? 捕虜を一人捕まえるのですよね?」
「そうだった。ショットガンのカートリッジを、非致死性ゴム弾と交換しておいて。捕虜はできれば隊長がいいが、制圧した時に死なれては困るからね」
「はい」

 陣地にいる砲兵は二十人ほど。見たところ鎧など防具を着けている様子はないな。

 着けていても皮鎧程度。これなら、ゴム弾で制圧できる。

 いや、一人だけスケールアーマーを身に着け、兜を被っている者がいた。

「芽依ちゃん。スケールアーマーにゴム弾は通じるかい?」
「あんまり効果ありません」

 面倒だな。

「北村さん。あの鎧を着けた人、隊長じゃないでしょうか?」
「え?」
「ゴム弾で部下を倒した後、あの人だけ捕まえて尋問すれば……」

 なるほど……

「芽依ちゃんは右から掃討してくれ、僕は左から行く」
「はい」

 僕らは左右に分かれると、細長い砲兵陣地を挟み込むように接近。

 砲兵の一人が僕らの接近に気がついたときには、至近距離まで迫っていた。

「て……敵襲!」

 兵士が叫ぶのと、僕がトリガーを引くのとほぼ同時。無数のゴム弾が兵士たちをなぎ倒す。

 陣地の反対側では、芽依ちゃんが撃っていた。

 撃たれた兵士たちは、地面の上で苦痛にのたうち回っている。

 痛そうだな……まあ、死ぬよりはマシだと思ってくれ……

 さすがにスケールアーマーで身を固めていた兵士は無事だったが、僕に向かって銃撃をしようとし、撃つ前に芽依ちゃんに羽交い締めにされていた。
 
 羽交い締めにされた兵士は、銃を手放すと背後にいる芽依ちゃんに何か囁いた。

「北村さん。この人やはり隊長です」

 よし! 連行だ。

 と言っても、十メートル上空へ連れて行っただけだが。
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