423 / 848
第十二章
轟く砲声
しおりを挟む
とりあえず、ロンロンと連絡を取ってみた。
『レイラ・ソコロフの本陣らしき陣地はまったく見あたりません』
「分かった。引き続きたのむ」
ちょうどその時、Pちゃんが、包帯だらけになったアルダーノフを車椅子に乗せて連れてきた。
「ご主人様。ヴィクトル・アルダーノフを連行しました」
イモムシ状態で床に転がっていたデポーラが、アルダーノフの姿を見て爆笑する。
「ギャハハハハ! どこのミイラ男かと思ったら、アルダーノフのオヤジかよ! いいザマだな!」
こいつら、普段から仲が悪いようだな。悪党同士仲良くできんものか……いや、されても困るが……
「へ! どこのイモムシかと思ったら、小便たれのデポーラかよ。無様だな」
「んだとう! てめえ……おい町長! アルダーノフの賞金額はいくらだ!?」
アルダーノフも賞金首だったのか。
デポーラに質問された町長は、秘書に尋ねてから答えた。
「金貨三十枚よ」
「ギャハハハハハ! だっせー! たった三十枚かよ! アタイなんか金貨百枚だぜ!」
おいおい……自分に掛けられた賞金額を自慢して、どないすんじゃ!
あ! 賞金と聞いて、ミールが目を輝かして町長にすり寄っている。
「町長さん。アルダーノフの賞金もいただけますか?」
「ええ……戦いが終わったら……」
「カイトさん。ちゃっちゃっと戦い終わらせちゃいましょう」
だから、そのためにもレイラ・ソコロフを探し出して、和平交渉を……あ! そのためにアルダーノフを連れてきたんだ。
僕はアルダーノフの傍らに寄った。
「アルダーノフ。レイラ・ソコロフの居場所はどこだ?」
「け! 誰が教えるか」
「言わないなら、魔法を使って何もかも聞き出すぞ。そうなると喋らなくて済むことまで喋る事になるが……」
「魔法だと!?」
アルダーノフはギョッとして、床に転がっているデポーラに視線を向けた。
続いて正座しているデポーラに視線を移動。
「分身魔法か?」
「知っているのか? 分身魔法で作られた分身は、術者の命令に逆らえないって」
「知っている。この前、それをされたばかりだからな」
「されたって? 誰に?」
「レイラ・ソコロフの部下に分身魔法使いがいるんだよ。そいつに俺の分身を作られてな……」
「なるほど。で、どうする? レイラ・ソコロフの居場所をこのまま黙っているなら、君の分身を作るけど」
「それだけは勘弁してくれ」
「じゃあ、話してくれるかい?」
「それが、知らないんだ」
「ミール。魔法の準備を」
「はーい!」
「待ってくれ! 俺は本当に知らないんだ。ほら、こいつ」
デポーラの分身を指さす。
「デポーラの分身からは聞いたのだろう? こいつも知らないと言っていたはずだ」
「じゃあ、レイラ・ソコロフはどうやって、攻撃の指示を出すんだ?」
「それがだな、大砲の音が聞こえたら、ロータスへ進軍しろって指示を受けていたんだが……」
大砲?
「ひょっとして、拳銃の銃声を大砲と勘違いして進撃したのか?」
「なに? あれは拳銃だったのか?」
僕は床に転がっているデポーラを指さした。
「あれは、こいつが撃った威嚇射撃だ」
「クソ! どうりで他の部隊が動かないと思ったら」
アルダーノフはデポーラを睨みつけた。
「やい! デポーラ! 紛らわしいことすんじゃねえ!」
「へん! 拳銃と大砲の違いも分からないのかよ。バーカ! バーカ!」
「なんだと、この小便たれ!」
「うっせー! ハゲオヤジ!」
「この頭は剃っているだけだ! ハゲじゃない」
「ハゲをごまかすために剃ってんだろ! バレバレ……」
ドーン!
突然の砲声が、二人の喧嘩は中断させた。
砲声? という事は、これが進撃の合図!?
「Pちゃん。ドローンの映像を出して。全体図で」
「はい。ご主人様」
Pちゃんが壁に映しだした映像には、ロータスを囲んでいた全軍が、三つの橋に向かって動き出す様子が映っていた。
『レイラ・ソコロフの本陣らしき陣地はまったく見あたりません』
「分かった。引き続きたのむ」
ちょうどその時、Pちゃんが、包帯だらけになったアルダーノフを車椅子に乗せて連れてきた。
「ご主人様。ヴィクトル・アルダーノフを連行しました」
イモムシ状態で床に転がっていたデポーラが、アルダーノフの姿を見て爆笑する。
「ギャハハハハ! どこのミイラ男かと思ったら、アルダーノフのオヤジかよ! いいザマだな!」
こいつら、普段から仲が悪いようだな。悪党同士仲良くできんものか……いや、されても困るが……
「へ! どこのイモムシかと思ったら、小便たれのデポーラかよ。無様だな」
「んだとう! てめえ……おい町長! アルダーノフの賞金額はいくらだ!?」
アルダーノフも賞金首だったのか。
デポーラに質問された町長は、秘書に尋ねてから答えた。
「金貨三十枚よ」
「ギャハハハハハ! だっせー! たった三十枚かよ! アタイなんか金貨百枚だぜ!」
おいおい……自分に掛けられた賞金額を自慢して、どないすんじゃ!
あ! 賞金と聞いて、ミールが目を輝かして町長にすり寄っている。
「町長さん。アルダーノフの賞金もいただけますか?」
「ええ……戦いが終わったら……」
「カイトさん。ちゃっちゃっと戦い終わらせちゃいましょう」
だから、そのためにもレイラ・ソコロフを探し出して、和平交渉を……あ! そのためにアルダーノフを連れてきたんだ。
僕はアルダーノフの傍らに寄った。
「アルダーノフ。レイラ・ソコロフの居場所はどこだ?」
「け! 誰が教えるか」
「言わないなら、魔法を使って何もかも聞き出すぞ。そうなると喋らなくて済むことまで喋る事になるが……」
「魔法だと!?」
アルダーノフはギョッとして、床に転がっているデポーラに視線を向けた。
続いて正座しているデポーラに視線を移動。
「分身魔法か?」
「知っているのか? 分身魔法で作られた分身は、術者の命令に逆らえないって」
「知っている。この前、それをされたばかりだからな」
「されたって? 誰に?」
「レイラ・ソコロフの部下に分身魔法使いがいるんだよ。そいつに俺の分身を作られてな……」
「なるほど。で、どうする? レイラ・ソコロフの居場所をこのまま黙っているなら、君の分身を作るけど」
「それだけは勘弁してくれ」
「じゃあ、話してくれるかい?」
「それが、知らないんだ」
「ミール。魔法の準備を」
「はーい!」
「待ってくれ! 俺は本当に知らないんだ。ほら、こいつ」
デポーラの分身を指さす。
「デポーラの分身からは聞いたのだろう? こいつも知らないと言っていたはずだ」
「じゃあ、レイラ・ソコロフはどうやって、攻撃の指示を出すんだ?」
「それがだな、大砲の音が聞こえたら、ロータスへ進軍しろって指示を受けていたんだが……」
大砲?
「ひょっとして、拳銃の銃声を大砲と勘違いして進撃したのか?」
「なに? あれは拳銃だったのか?」
僕は床に転がっているデポーラを指さした。
「あれは、こいつが撃った威嚇射撃だ」
「クソ! どうりで他の部隊が動かないと思ったら」
アルダーノフはデポーラを睨みつけた。
「やい! デポーラ! 紛らわしいことすんじゃねえ!」
「へん! 拳銃と大砲の違いも分からないのかよ。バーカ! バーカ!」
「なんだと、この小便たれ!」
「うっせー! ハゲオヤジ!」
「この頭は剃っているだけだ! ハゲじゃない」
「ハゲをごまかすために剃ってんだろ! バレバレ……」
ドーン!
突然の砲声が、二人の喧嘩は中断させた。
砲声? という事は、これが進撃の合図!?
「Pちゃん。ドローンの映像を出して。全体図で」
「はい。ご主人様」
Pちゃんが壁に映しだした映像には、ロータスを囲んでいた全軍が、三つの橋に向かって動き出す様子が映っていた。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
キャンピングカーで異世界の旅
モルモット
ファンタジー
主人公と天女の二人がキャンピングカーで異世界を旅する物語。
紹介文
夢のキャンピングカーを手に入れた主人公でしたが 目が覚めると異世界に飛ばされていました。戻れるのでしょうか?そんなとき主人公の前に自分を天女だと名乗る使者が現れるのです。
彼女は内気な性格ですが実は神様から命を受けた刺客だったのです。

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

宮様だって戦国時代に爪痕残すでおじゃるーー嘘です、おじゃるなんて恥ずかしくて言えませんーー
羊の皮を被った仔羊
SF
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
時は1521年正月。
後奈良天皇の正室の第二皇子として逆行転生した主人公。
お荷物と化した朝廷を血統を武器に、自立した朝廷へと再建を目指す物語です。
逆行転生・戦国時代物のテンプレを踏襲しますが、知識チートの知識内容についてはいちいちせつめいはしません。
ごくごく浅い知識で書いてるので、この作品に致命的な間違いがありましたらご指摘下さい。
また、平均すると1話が1000文字程度です。何話かまとめて読んで頂くのも良いかと思います。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》
EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。
歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。
そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。
「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。
そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。
制刻を始めとする異質な隊員等。
そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。
元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。
〇案内と注意
1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。
3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。
4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。
5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

平和国家異世界へ―日本の受難―
あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。
それから数年後の2035年、8月。
日本は異世界に転移した。
帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。
総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる――
何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。
質問などは感想に書いていただけると、返信します。
毎日投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる