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第十二章

レイラ・ソコロフは何処だ?

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「俺をどこに連れていく気だあ!?」

 支えのない空中でジタバタしながら、アルダーノフは叫びまくる。

「アルダーノフさん。暴れると落ちちゃいますよ。じっとしていて下さい」

 その声は、僕の横を飛行している桜色のロボットスーツから聞こえてくる。

 今、僕と芽依ちゃんのICパックの間に発生している反重力フィールドによって、アルダーノフの巨体は浮いているのだ。

 不意に前方から一羽の白い鳥が飛んできた。鳩のようだな……

 このままだと、反重力フィールドに巻き込みそうだ。

「芽依ちゃん。右に避けるよ」
「はい」
 
 鳥を避けるために、同時に右に方向を変える。鳩は無事に僕達の横を通り過ぎたのだが、少しだけタイミングがずれたようだ。

「助けてくれ! 俺は死にたくない」

 一瞬だけ反重力が弱くなり、アルダーノフが落ちそうになって悲鳴を上げた。

 すぐに反重力フィールドを復活させたけど、手下を無駄に死なせた奴の言う事か。

「アルダーノフさん。心配しないでください。私たちは武装解除した人を殺すような野蛮な事はいたしません」
「じゃあ、俺をどこに連れて行くのだ?」
「アルダーノフさんは非道い怪我をされていますので、手当して差し上げようとかと……」
「俺に怪我させたのはこいつだ! この金色の奴!」

 そう言って、アルダーノフは僕を指さす。

「人に怪我をさせておいて、恩着せがましい事を……」

 自分で『ぶちのめしてみろ』と言ったくせに……

「このまま反重力フィールドを解除して、君を十メートル下の地面に落としてもいいのだけど……」

 本当にそんな事はするつもりもないけど、僕の言った事を聞いてアルダーノフの顔は蒼白になる。

「旦那……それだけは勘弁を……」

 分かればよろしい。

 程なくして、僕達はロータスの役場に着いた。

 アルダーノフは医務室に連れて行き、治療をPちゃんに任せて、僕と芽依ちゃんは執務室へ行きミールに状況を訪ねる。
 
「デポーラの分身を作ってみたのですが……」

 ミールの指さす先に、同じ顔をした女が二人いた。

 服装はどちらも色あせたダンガリーシャツに膝に穴の開いたスキニージーンズだが、片方は床の上に正座していて片方はロープで縛られて床に転がされ、僕らに恨みがましい視線を向けている。

 縛られている方が本物で、正座している方がミールの作った分身体か。

「エラは昨日からレイラ・ソコロフのところへ行ったまま、帰ってきていないそうです」
「なんだって? それで、レイラ・ソコロフの本陣は?」
「デポーラも知らないようです」

 なんてこった。しかし、それじゃあこいつらどうやって、レイラ・ソコロフから指令を受け取るんだ?

 まあ、いい。こいつに分からなければ、アルダーノフから聞き出すまで……

 通信機でPちゃんを呼び出し、アルダーノフの治療が終わったら連れてくるように指示を出した。

「北村君」

 アーニャの方を見る。

「怪我人の治療があるというからPちゃんを行かせたけど、そんなに酷い怪我人なの?」
「そりゃあ、まあ……」

 骨の二~三本は折れていたし……やったのは僕だが……

「何か、問題でも……」

 あれ? アーニャが何か疲れたように顔を……僕は何か不味いことを言ったのか?

「レイラ・ソコロフの本陣を探すためにドローン十機を動員していたのだけど、それは全部彼女がコントロールしていたのよね」

 あ! 忘れていた。

「《水龍》に連絡して、ドローンのコントロールをロンロンに代わってもらったのだけど、ここにはロンロンからデータを受け取れる端末がないのよ。一応、通信機はあるけど映像データが受け取れないの」

 そういえば『Pちゃんがいるからいいや』と思って、荷物になりそうな端末を持ってこなかったっけ……迂闊だった……

 一応、ロボットスーツの通信機で連絡が取れるので、僕と芽衣ちゃんは送られてくる情報を確認できるが、Pちゃんみたいにプロジェクションマッピングで壁に映像を出すことができない。

 ここにいるメンバーには口頭で状況を説明するしかないが、問題はレイラ・ソコロフらしき人物を見つけた場合。顔を知っているのは町長だけなので顔を確認してもらえないな。
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