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第十二章

敵との交渉役?

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 拳銃をホルスターに収めてから、僕は議員の顔を覗き込むように顔を近づけた。

「分かりましたか? 今の状況が。今、あなた達は死と隣り合わせにあるのですよ。悠長な事をやっている余裕はないのですよ」

 床にへたり込んでいる議員は、目に涙を浮かべてコクコクと頷いた。

 ちょっとやりすぎたかな?

「分かって頂けたなら、会議を再開したいのですが、いいですか?」

 もちろん、これに異論に挟む者はいなかった。

「アーニャさんも、これでいいですか?」
「ええ、いいわ。それでは町長さん。先ほどの話の続きですけど、私達がただの盗賊団と思っていた武装勢力は、ナンモ解放戦線と名乗る反帝国組織だった。それに間違えないですね?」
「ええ、そうです。しかし、実態は盗賊団と変わりありません」
「相手がただの盗賊団であるか、曲がりなりにも反帝国組織であるかで対応を変えなければなりません。カルカは反帝国側です。ロータスにカルカが味方したとなれば、ナンモ解放戦線としては手を引くかもしれません」

 そう上手くいくかな?

「町長さん。ナンモ解放戦線の首脳と会ったそうですね?」
「ええ」
「どんな感じの人でした?」
「名前はレイラ・ソコロフ。歳は六十ぐらいの落ち着いた感じの女性です。武装集団のリーダーというより、学校の先生のようなイメージの人でした」

 リーダーは女だったのか。いや、当然だ。カミラ・マイスキーと同じ監獄に入っていたのなら……

「レイラ・ソコロフは、なぜ今の時期に帝国へ戦いを挑もうなどと考えたのか? 何か聞いていますか?」
「リトル東京の事はご存知ですか?」
「知っています。というより、私は先日そこへ行ってきました」
「それなら話は早いですね。ここ数年、帝国はリトル東京との戦いで疲弊しています。皇帝を倒すなら今だと、レイラ・ソコロフは判断したようです。しかし、私はどうも信用できません。帝国は本当にそんな追いつめられているのか?」
「帝国の状況はともかく、ナンモ解放戦線はリトル東京を高く評価しているようですね。それならカルカよりも、リトル東京の名前を出した方が引いてくれるかもしれません」

 なるほど、そうなるか。

 アーニャは僕の方を向いた。

「北村君。あなたはまだ、リトル東京防衛隊に入隊したわけではないわね?」
「え? まあ、僕は今のところフリーですけど……」

 考えてみたら、この惑星に降りてから、僕はどこにも所属していないで自由に行動していたからな……

 となると、僕の立場ってどうなるのだろう?

 北村海斗と愉快な仲間たち? まあ、それも悪くはないかな……

「それではあなたを、リトル東京の代表者にするわけにはいかないわね」

 アーニャは芽衣ちゃんの方を向いた。

「な……なんでしょう? アーニャさん」
「あなたはリトル東京防衛隊の正隊員ですね?」
「そ……そうですけど……」

 アーニャは芽衣ちゃんの肩を手を置いた。

「敵との交渉、任せていいわね」
「ええ!?」

 芽衣ちゃんに任せて大丈夫かな?
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